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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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50 想い

 その日の放課後のレッスン。今ではベアキャットが練習を行う部室の横の空き教室でミーアキャットが練習を行っている。ときどき、椿が練習を見に行っていた。


 練習が終わると一年生達は挨拶して帰っていったが、宮川紅葉だけは部室に残っていた。


「葵先輩、一緒に帰りませんか?」


 早速誘っているようだ。


「ボクと? いいよ。今日もスミレと帰るけど、一緒に帰るかい?」


「はい!」


 3人で帰るのか。葵さん、スミレ、宮川さんは一緒に帰っていく。みんな帰って教室は俺だけになり、机を片付け、校舎を出ようとしたところで葵さんからメッセージが来た。


葵『カラオケで歌の練習をするから付き合ってくれないか』


 カラオケ? みんなでボーカルの練習か。今日の練習では問題なかったけど、どうしたんだろう。俺は少し不安になり、練習に付き合うことにした。


 新市街アーケードのカラオケボックスの前に行くと葵さんが一人で立っていた。


「スミレと宮川さんは?」


「もう帰ったよ」


「え? じゃあ、俺たち二人だけか?」


「そうだけど、だめだったかい?」


「だめじゃないけど……」


「じゃあ、行こう」


 葵さんは俺の手を取った。


「わ、わかった」


 俺も引っ張られるまま、地下のカラオケボックスに降りていく。2人用の狭い部屋に入った。


「早速歌うから聞いていてくれ」


 葵さんは今回のベアキャットの曲『君のままで』を歌い出す。やはり、上手い。まったく問題なかった。


「どうだった?」


「すごく良かったと思うよ。練習する必要が無いぐらいだよ」


「そうか……じゃあ、練習はこのぐらいにしようかな」


「葵さん?」


「大樹君……」


 そう言って、葵さんは俺のすぐ横に移動してきた。


「え?」


「この間の実験ではドキドキしなかったからね。だからほんとに男子を好きになれないのか、試したいんだ」


「そ、そうか。で、どうしたいんだ?」


「キス、してみようか」


「は? 冗談だよね」


「冗談を言っているように見えるかい?」


「い、いや……」


「キスをしたらさすがにドキドキすると思うんだ。だろ?」


「そうだけど」


「じゃあ、しようか」


 そう言って葵さんは目をつぶって顔を接近させてくる。これは……でも、するわけにはいかないな。


「葵さん、だめだよ、スミレのことはどうするんだ?」


「スミレ……」


 葵さんは目を開けた。


「葵さんは今でもスミレが好きだろ」


「それは……でも、もうあきらめないと。そしてボクは男子を好きになるんだ」


「そう自分に言い聞かせているだけだろ。それが葵さんの本当の願いとは思えない。だから、葵さんとはキスできない」


「……そうか。まあ、そうだよね。ハハハ」


 そう言って葵さんは少し俺から離れた。


「……結局、ボクも大樹君もスミレを忘れられない」


「そういうことだよ」


「でも、ボクはもう望みは無さそうだからなあ」


「俺よりはあると思うけど」


「いや、無いさ。確かにボクは今でもスミレのことが好きだ。でも、手が届かない存在だと分かってる。だから、あきらめたいのさ。そのためならなんだってする」


「だから、男を好きになろうとしたのか」


「そういうことだよ。実験したいのは確かだったけど、うまくいくのなら君と特別な関係になりたかった。そうすればスミレのことも忘れられるんじゃないかと思ったんだ」


「それは違うよ。そういう関係になっても結局は忘れられないだろうな」


「そういうものかね」


「そういうものだよ」


 俺は椿とは特別な関係になり、美桜や友梨香ともデートしたりした。でも、今でもスミレを好きな気持ちは変わっていないのだから。


「じゃあ、どうしたらいいんだろうね」


「そうだな……いっそのこと告白したらどうかな?」


「告白? もうしたって言ったと思うけど。そしてそれは冗談としてしか受け止められなかったんだ。スミレには女子と付き合うという発想は無いんだよ」


「そうかもしれない。でも、スミレは葵さんが女子を好きなこと知ってたぞ」


「え、そうなのかい?」


「ああ。だから……今、葵さんが本気なことを伝えれば、スミレも考え直すかも知れない」


「ふむ、告白か……でも、だめだな」


 葵さんは少し考え込んて言った。


「え、なんでだよ」


「スミレに本気で告白して振られれば、どうしても気まずくなる。そうなるとベアキャットにも迷惑を掛けてしまう」


「でも、スミレと葵さんはあんなに仲がいいじゃないか。そんなに気まずくなるかな」


「なるよ。それは君が一番よく分かってるだろ?」


 ……確かにそうだ。俺はスミレと仲がいい幼馴染みだった。だけど、俺の告白以降はきまずくなり疎遠になってしまったのだ。今ではスミレと普通に話しているから忘れかけていたあの感覚。あれを葵さんが味わったら、確かに今までのままではいられないか。


「いいんだよ、もう。ボクはやっぱり変わらないといけない」


「葵さん……」


「王子様の魔法もそろそろ時間切れさ」


「そんなことは――」


「おっと、こんなことを話しているとカラオケの方も時間切れになってしまう。さあ、歌おうか」


 そこからは葵さんはエビ中の曲を歌いまくっていた。


◇◇◇


 翌日、火曜の朝練。葵さんはいつもと変わらずに練習をしている。スミレも同じだ。葵さんはやはり自分の気持ちにフタをするようだ。


 朝練が終わったとき、一年生の宮川紅葉が部室に入ってきた。


「おはようございます。スミレ先輩、葵先輩」


「おはよう、紅葉ちゃん」

「おはよう、紅葉君」


 葵さんは君付けで宮川さんを呼んでるのか。


「あの……葵先輩。今日の昼休み、部室に来てくれませんか?」


「部室に? いいけど、どうして?」


「お話があります」


「話か。ボクで良ければ聞くよ」


「ありがとうございます! では、失礼します」


 宮川さんは去って行った。


「話って何だろうね?」


 スミレが聞く。


「さあ……スミレのことかもな」


 葵さんが言った。


「え? なんで私?」


「だって、紅葉君はスミレに憧れてるんだろ? だからスミレと似たような髪型してるんだし」


「そうみたいだけど、だからって私のことを葵に聞くの?」


「一応、親友だからね」


「まあ、そうだけど……そういうことなら直接聞いて欲しかったけどなあ」


「ハハ、確かにそうだね」


 葵さんは宮川さんの想いには全く気がついていないようだ。


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