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5 side ベアキャット

 ベアキャットのメンバーはレッスン後にばらばらに帰ってしまうことが多い。でも、今日は長峰葵ながみね あおいの提案で何か食べて行こうと言うことになり、学校近くのバスセンターのマックに5人が集まっていた。


「あー、疲れた。こういうときはポテトに限るわ」


 そう言ってポテトのLを食べているのは園田美桜そのだ みお。ロリフェイスの小悪魔だ。


「美桜、あんたが名前呼びとか言い出すから、私も名前で呼ばれちゃったじゃない」


 氷室椿ひむろ つばきが文句を言う。


「別にいいでしょ。椿もマネ君に名前で呼ばれてて照れてるみたいやったけど」


「なっ!? 照れてないし……」


「そう? なんか顔赤くなかった?」


「赤くなってなんか無いわよ」


「あれえ? もしかしてマネ君、タイプなの?」


 美桜がニヤニヤして言う。


「違うわよ! 私の彼氏知ってるでしょ?」


 椿が言った。


「あー、確かにタイプ違うわ。あっちはサッカー部のスポーツマンやもんね」


「そうよ。このあとも待ち合わせしてるんだから」


「そうなんや。ラブラブやなあ」


「そういうこと。だいたい、あのバカマネはスミレのことが好きなんでしょ? スミレはどうなのよ。付き合う気あるわけ?」


 椿の言葉にみんなが高梨たかなしスミレを見た。


「付き合う気は無いよ」


「なんで? マネ君べたぼれやったみたいだけど?」


 美桜がスミレに聞いた。


「だって……幼馴染みだし……そういう目で見れないというか、なんというか……」


「そうなんだ。それなのにマネージャーやらせるわけ?」


「気まずいままだったから前みたいな関係に戻りたくて……だから、この機会を利用させてもらったの。ベアキャットの仕事の話なら普通に話せるはずだし」


「そうやけど、マネ君にはちょっと酷やない?」


 美桜が言った。


「そうですよね。私は恋愛はよく分かりませんが、振られた人のそばにずっといるって大丈夫なんでしょうか?」


 シェイクしか頼まなかった眼鏡姿の篠原友梨香しのはらゆりかが言った。

 それを聞いて葵が言う。


「大樹君は別にスミレをあきらめてるわけじゃないからね。チャンスがあると思ってそばにいるんだ」


「へー、けなげね」


 椿が言う。


「……本人がいいならいいですけど」


 友梨香もそう言った。


「でも、ちょっとかわいそ。可能性無いんでしょ?」


 美桜がスミレに言う。


「今は無いかな。将来は分からないって話はしたけど」


「うわあ、スミレもずるいねえ」


「し、仕方ないでしょ。マネージャーやってもらいたかったんだし……」


「でも、マネ君はそんなにスミレに惚れ込んでるんやねえ。さすがベアキャットのセンター様やわ」


 美桜が言った。


「センターは関係ないでしょ」


「それだけ人を惹きつける人やってこと」


 美桜はそう言ってオレンジジュースを飲んだ。


「とりあえずみんな、大樹がマネージャーで異論は無いって事でいいよね?」


 スミレがみんなに確認する。


「ボクはもちろん」と葵。

「ウチはいいわよ」と美桜。

「まあ仕方ないわね」と椿。

「みんながいいなら問題ないです」と友梨香。


 スミレはみんなが大樹を受け入れたことにほっとして笑顔になった。


「じゃあ、LINEグループに入ってもらうから。葵の仕事は大樹に引き継いでもらって、スケジュールとかのお知らせも大樹から来るからね」


「はいはい。じゃあ、私は彼氏と待ち合わせだから」


 椿が席を立った。


「いってらっしゃーい」


 美桜が軽く言う。その言い方に何か馬鹿にされたように感じた椿は振り返って美桜に言った。


「あんたもちょっかいばっかり出してないでさっさと決まった人見つけなさいよ」


「ウチはなかなかいい出会いがないもんで。しばらくはフラフラしとく」


「……それはいいけど、彼女いる男子には手を出さないようにね。あんた、女子に評判悪いわよ」


「はいはい。出しませーん。特にサッカー部にはね」


 そう言ってウィンクする。


「ふん!」


 椿は店を出て行った。


「私も迎えが来ているのでもう帰りますけど、みなさんはまだいるんですか?」


 篠原友梨香が言う。


「もうちょっと」

「ウチも」

「ボクもそうだな」


「そうですか。では、また明日ということで」


 友梨香も帰っていった。


 3人になり、美桜がスミレに言った。


「ねえねえ、スミレはほんとにマネ君とは付き合わないわけ?」


「そう言ったでしょ」


「あんなに好かれてるのに?」


「私にはただの幼馴染みだから」


「そうなんや……だったら、私が手を出しても怒らないよね?」


「はあ?」


「あれ? やっぱり怒るの?」


「怒らないけど……冗談だよね?」


「フフ、さあねえ」


 美桜は冗談とも本気とも取れない表情だ。


「美桜、大樹のこと悲しませたらさすがに怒るよ」


「悲しませたりせんよ。むしろ、喜ばせようと思っとるけん」


「喜ばせるって……」


「スミレがいろいろ言う権利は無いって事でいい?」


「権利は無いけど……」


「じゃあ、そういうことで。明日からが楽しみ」


 そう言って美桜は帰っていった。


「……はぁ……美桜、何考えて……」


「心配かい?」


 葵が美桜に尋ねる。


「心配よ。大樹は私以外の女子に慣れてないし。美桜みたいなのが誘惑したらすぐほいほいついていっちゃいそう」


「でも、スミレは大樹君とは付き合う気は無いんだろ?」


「そうだけど……大樹が悲しむのは見たくない。美桜が大樹に何かするようなら許さないから」


「へぇ……」


 いつもと違うスミレの表情に葵は驚いていた。



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