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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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48 王子様

「やっぱりボクと大樹君の交際がショックで早退したみたいだったね」


 スミレの家を出て、俺は葵さんを停留所まで送ることにした。その道中、葵さんが言った。


「そうなのかな。ほんとに体調不良かもしれないぞ」


「そんなわけないよ……やっぱり、スミレは大樹君か」


「違うと思うけどな」


「いや、そうだよ。ボクもあきらめ時なのかもしれないな……」


「葵さん……」


 葵さんの気持ちが痛いほど分かる。思いが通じなかったとき、人は尋常じゃ無いショックを受けるのだ。


 葵さんはそのまま何も言わずに帰っていった。


◇◇◇


 翌日の土曜日。俺は珍しく街の書店に来ていた。ベアキャットのマネージャーになったものの、自分ではうまくやれているとは思っていない。あまり貢献できていない自分が歯がゆかった。だから、マネージャーをやるにあたって何か参考になる本でも無いか、探しに来たのだ。


「なになに……女子マネージャーがドラッカーを読んだら、か。参考になるかな……」


 なかなか自分の状況にぴったり当てはまる本を見つけられず、帰ろうとして書店を出たときだった。書店前の通りの奥のほうが騒がしい。ふと見ると2人組の男が男女のカップルに絡んでいた。


 とはいえ、普通は俺もこのような状況に立ち入ろうとは思わない。どのような事情か分からないからだ。俺は立ち去ろうとしたが何か気になりじっと見てしまう。


 あの絡まれている男女……と思ったが、男子のように見えるのは葵さんだ。女子の方は知らない子だな。何かトラブルだろうか……


 俺は気になって近づくと声が聞こえてきた。どうやら2人組の男たちは葵さんが連れている女子をナンパしているようだ。


「だからこんななよなよしたやつじゃなくて俺たちと遊ぼうぜ。悪いようにはしないからさ」


 男は女子に手を伸ばそうとする。


「やめろ!」


 葵さんは手でかばおうとするが、簡単にはじきとばされてしまった。葵さんがよろけるのを見て俺は慌ててそこに割り込み、男の手をつかんだ。


「なんだお前」


「暴力はいけませんね」


「大樹君!?」


 葵さんが俺に気がついた。


「チッ! 知り合いかよ。邪魔する気か!?」


「そうですね。知ってます? この近くに交番があるんですよ」


「クソッ!」


 男たちは去って行った。俺は葵さんに向き直る。


「大丈夫? 葵さん」


「う、うん……ありがとう。助かったよ」


「それはよかったけど……」


 俺は葵さんの後ろに隠れている女子を見た。背は葵さんよりかなり低い。清楚な格好をした女子。たぶん年下だな。


「もしかして葵さんの彼女?」


「そんなわけないって大樹君は知ってるはずだけど」


「そうだけど、じゃあ友達?」


「妹の結菜ゆいなだ」


「はじめまして、妹の結菜です。助けていただきありがとうございます」


 妹の結菜さんは丁寧にお礼を言った。確かに良く見ると顔つきは似ている。だが、葵さんと違って可愛らしい格好だから全くわからなかった。


「結菜ちゃんか。はじめまして、お姉さんのクラスメイトの坂崎大樹だ。大丈夫だった?」


「はい、ありがとうございます。あの……坂崎先輩はお姉ちゃんとはどういう関係ですか?」


「関係? 俺は……」


「ベアキャットのマネージャーだよ」


 葵さんがすぐに説明した。そうか、妹だからベアキャットのことは知っているのか。


「そうなんですね。いつもお姉ちゃんがお世話になっています」


「いえいえ、丁寧にどうも」


「あの……せっかくなのでお礼をさせてください。お茶でもいかがですか?」


「え? いや……」


「お姉ちゃん、いいでしょ?」


「そうだね、どこか行こうか、大樹君」


 ということで、俺と葵さんと結菜さんは書店内にあるスタバに入った。


「大樹君、改めて礼を言うよ。助かった」


「いや、マネージャーとして当たり前のことをしただけだよ」


「でも、さすがだったよ。私も女子としては力が強い方だけどね。でも、やはり男子の本気にはかなわない。それを今日は思い知らされたよ」


「そんなことは……」


「いや、やっぱり私は女子なんだよ。いくら強がってもそれは変えられないんだ」


「葵さん……」


「そうよ、お姉ちゃん。いつまでも王子様気取りは痛々しいからね」


 結菜さんが言う。


「痛々しいって……さすがに言い過ぎじゃないか?」


 俺は結菜さんに言う。


「すみません。でも妹の立場からしたら、なんか嫌で。小さい頃は私を守ってくれる強い姉が大好きでしたけど、この年になるといろいろわかってくるので……」


 そうか、もしかしたら妹の結菜さんを守るために葵さんは男子としてふるまうようになったのかもしれないな。


 でも、結菜さんは今の葵さんが好きでは無いようだ。はっきりそのような言葉を言われ、葵さんは傷ついたのではないだろうか。そう思ったが、葵さんは意外なことを言った。


「結菜、確かにそうだね……そろそろボクも王子様卒業かな」


 葵さんのその言葉に、結菜さんは怪訝な顔をした。


「……珍しいね。こういうこと言うといつもお姉ちゃん怒るのに」


「まあ、最近いろいろあったからね。結菜もこんな姉は嫌だろ?」


「お姉ちゃん……」


「だからボクもそろそろ変わらないといけない頃だと思ってるんだ」


「変わるって……」


「たとえば、彼氏を作ったり、とかね」


 つまり女子を好きになるんじゃ無くて男子を好きになるということか。


「お姉ちゃんが彼氏!? 彼女じゃ無くて?」


 結菜さんも驚いている。


「ああ。そうさ。その方が結菜も嬉しいだろ?」


「そうだけど……」


「……葵さんはそれでいいのか?」


 俺は聞かずにいられなかった。


「いいも悪いも、世の中はそういう風に出来ている。確かに昔よりはボクのような人間も生きやすくなったけどね。でも、結局は男女で交際した方がいいんだよ」


 そう言いながら葵さんは店の外の人混みをずっと眺めていた。



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