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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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37 恩人

「……私がマスターを好きになってはダメですか?」


 友梨香さんは俺の部屋でそう言った。


「俺は……スミレのことが好きだから」


「そうですよね。わかってます。やっぱりダメですよね」


「ごめん」


「いえ……スミレは私にとっても大事な大事な友達です。だから、スミレを好きな人を奪ったりなんてやっぱりできません」


「そ、そうか」


「はい。スミレは恩人ですから」


「恩人?」


「はい。ベアキャットという居場所を作ってくれた大切な人です」


 確かにスミレはベアキャットの創設者だ。ベアキャットがどうやって出来たか、詳しいことは俺も知らない。俺がスミレに告白し振られたあと、気がついたらスミレはベアキャットの活動を葵さんと友梨香さんと始めていた。最初は3人だったベアキャットに2学期から椿と美桜が加入し、今の5人になったのだ。


「……聞かせてくれないか。なんでスミレが友梨香さんの恩人なのか」


「そうですね。マスターにはお話ししておいた方がいいでしょう」


◇◇◇


 一年生の一学期が終わる頃、私はクラスでも浮いていました。放課後に誰かと遊ぶこともなく、委員長という肩書きで、いつも敬語ばかり使っている私はクラスメイトとも距離ができてしまいました。


 そんなとき、中庭でスミレが踊っているのを見たのです。すごく楽しそうで、思わず見とれてしまいました。彼女のダンスを撮影していたのが、葵でした。2人は同じクラスでしたが、それまであまり話したことはありませんでした。


 スミレのダンスが終わると、今度は葵が踊りはじめて、その様子をスミレが撮影していました。それがなんだか楽しそうで、私はつい中庭に足を踏み入れてしまいました。そこでスミレが話していたのです。


「葵、次は二人で踊ってみない?」


「いいね。でも……それだと、撮ってくれる人がいないよ」


「そっか、それは困ったね……あ、委員長! ちょうどいいところに!」


 スミレは私に声を掛けてくれました。


「え、私、ですか?」


「お願い、撮影してくれない? 私たち、踊るから」


「わ、わかりました……」


 私は2人が踊る姿を撮影しました。そして、3人でその動画を確認して……


「うん、すごくいい!」


「確かに! 1人で踊るより、2人の方が振りが揃ってて綺麗だね!」


「私もそう思います」


「これ、文化祭に出られるかな?」


「うーん、どうだろうね……」


 文化祭でのステージは誰でも応募できますが、事前審査に通らないといけません。最近は希望者が多くて狭き門になっているという話を聞いたことがありました。それでも挑戦しようとしている2人が、まぶしく見えました。


「この曲は3人で踊る曲だしなあ」


 スミレが言いました。


「3人?」


「うん、そうなんだ。『START DASH』というラブライブの曲なんだけど、3人で踊るんだよ。見てみる?」


 スミレはスマホからアニメのライブシーンを見せてくれました。スミレと葵の2人のダンスよりも、3人の方がバランスがとれて綺麗に見えました。


「あー、3人で踊りたいなあ。誰かいないかなあ」


 そう言ってスミレは私をじっと見てきます。


「……ダンスの授業のとき、委員長、上手かったよね」


「え!? もしかして私にやらせようとしてます?」


「うん……どうかな?」


「確かに私はダンスには興味があって少し習ってましたけど……」


「そうなんだ! 私たちは素人だよ。見よう見まねでやってるから。もし、委員長が入ってくれたら助かるなあ」


 そう言って、スミレは私の手を取ってくれたのです。


「わ、私で良ければ……やってみます」


「やったー! 委員長、ううん、友梨香、よろしくね!」

「よろしく、友梨香」


「は、はい……スミレ、葵、よろしくお願いします」


 私に初めて打ち込むものができた瞬間でした。それからはダンスを覚え、3人で動画を撮りました。スミレと葵と一緒に過ごす時間は今まで経験したことが無い楽しさでしたし、自分たちで作りあげたベアキャットが評判になり、私の自信にもつながっていきました。


 やがて、椿と美桜が加入し、今では本当に大切な仲間と、かけがえのない居場所ができたのです。


◇◇◇


「そうだったんだ……」


 友梨香さんから聞いたベアキャットの始まりの話。俺の知らなかったことばかりだった。スミレがベアキャットを始めたことで孤立していた友梨香さんを救ったんだな。


「だから、スミレには恩があります。私の居場所、ベアキャットを作って、私を誘ってくれました。この恩を裏切るわけにはいきません。マスターのことを好きになるのはあきらめます」


「そ、そうか……」


「でも、キスは無理でも、それ以外にも……いろいろ教えてもらいたいです」


「う、うん。分かったよ。明日はデートもするし――」


 そこで部屋の外から妹の声が聞こえてきた。


「お兄ちゃーん! 友梨香さん、夕飯できたよー!」


「今行く!」


 瑠璃の声に促されて、リビングへ向かうと、テーブルには親子丼が3つ並んでいた。


「じゃーん! 私の得意料理、親子丼です!」


「またかよ。先週も食べたぞ」


「だって……友梨香さんには美味しいもの食べてもらいたいから得意料理で勝負したかったんだもん」


「まあいいけどな、美味いし。友梨香さん、どうぞ」


「美味しそう……いただきます」


 友梨香さんが食べるのを俺と瑠璃が見守る。瑠璃は知らないが、友梨香さんの家には専属シェフも居る。舌が肥えている友梨香さんが妹の料理はどう思うか不安だったけど……


「美味しいです!」


「ほんとに!?」


「はい。初めて食べたのに、なんだか懐かしい感じがします」


「えへへ、やった! おばあちゃん直伝なんだ~」


 瑠璃が嬉しそうに笑う。とりあえず友梨香さんが美味しく食べているようで良かった。


 食べ終わったあと、瑠璃が言った。


「じゃあ、友梨香さん、遊びましょう!」


「え、だめですよ。勉強しに来てるんですから」


「いいでしょ、お兄ちゃんなんてほっといて。どうせたいした点数取れないですし」


「そんなことないですよ。それに……私の勉強もありますから」


「え?」


 そう、友梨香さんの恋愛の勉強はまだここでは何もしていなかった。でも、そんなことは瑠璃には言えないな。


 そのとき、家のインターフォンが鳴った。


「あれ? 誰だろう。こんな時間に……」


 瑠璃がインターフォンの画面を見る。


「お兄ちゃん、知らない女の人がいるよ」


「え?」


 俺も慌てて画面をのぞき込む。そこに映っていたのは――


「……友梨香さんのお母さん!?」



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