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カルナディアの勇者ガヤオと仲間の猫獣人ネココは中ボスを倒した礼にと、ある商人の家で手厚い饗しを受けていた。
アラビアンナイト風の広い部屋のカーペット上に、ご馳走が並べられ、上座に陣取った2人の前で、かわいい踊り子たちがセクシーに舞っている。
「ガヤオさん、鼻の下が伸びてるッスよ」
「え!?」
ガヤオが慌てた。
「まったく、いやらしいッスね」
「たまにはいいだろ! いつもカルナディアの平和と他の世界まで守ってんだぞ!」
「この前、見た感じじゃ、あまり活躍はしてなかったッス」
「セブンナたちが来た時だろ?(7聖女の物語 ガヤオ&ネココ マーリン&ミュー編参照) あれは、たまたまだ!」
「怪しいッス」
「何だ、その眼は!」
2人が揉めていると、若い踊り子の1人がガヤオの隣に座り、ジュースをお酌してきた。
「さあ、どうぞ、勇者様」
「え!? あ、ありがとう」
照れたガヤオがコップを出したところで。
「わー!」
「ミョーン感覚ッスか!?」
ミョーン感覚とは、ガヤオが別世界に助っ人として呼ばれる前兆のミョーンとなる感じだ。
「最悪のタイミングだ!」
ガヤオの身体が半透明になる。
「ガヤオさん、頑張ってッス!」
「お前、すげー笑ってんじゃん!」
かわいい踊り子とネココの姿は消え、ガヤオは狭い部屋に居た。
灰色の壁に囲まれた中央には台があり、人が仰向けに寝ている。
30代前半の、彫りの深い金髪美男子だ。
両手足を金属ベルトで拘束され、動けないようだった。
彼の首の上では、天井から吊り下がった巨大な三日月刃が、振り子の如く左右に揺れ、少しずつ下りてくる。
このままでは美男子の首はいつか、切断されてしまうだろう。
「助けてくれ!」
彼が叫ぶ。
ガヤオは雷呪文を唱えた。
「ビリビリン!」
右手から出た電撃が、三日月刃を部屋の隅まで吹き飛ばす。
同時に、けたたましいブザー音が響き、部屋の照明が真っ赤に変わった。
「そこのボタンを押して!」
男の指示通り、近くのコンソールのボタンを押すと、金属ベルトが外れた。
彼が立ち上がる。
ノーマルのスペーススーツを着ていた。
「助かったよ」
男が右手を差し出す。
「おれはラーセン」
「俺はガヤオ」
「詳しい説明は後だ。奴の手下が来る」
ラーセンは大型肉食獣のようにしなやかな動きで、両開きドアの横にしゃがんだ。
ガヤオも反対側に陣取る。
ドアがスッと開き、黒いスペーススーツの男2人が入ってきた。
ラーセンは素早いアッパーで、手前の男をダウンさせる。
ガヤオもスモールシールドで、もう1人の頭を叩いて気絶させた。
ラーセンが、倒した男からレーザーガンを奪う。
彼の後に続いて、ガヤオも廊下に出た。
通路も灰色で、左右に伸びている。
ラーセンは迷わず、左に走った。