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07・魚にはもう飽きた

 魚を食べ飽きてきた二日目の昼。三食ずっと魚というのは空腹のままよりはマシだけど辛いものがある。瑞々しい果物が食べたい。ちょっとくらい酸っぱくても良い、果物が食べたい。



「赤い林檎に唇寄せて」



 林檎の気持ちは分からなくて良いから林檎が欲しい。



『ナカコ、林檎欲しいの?』


『今は林檎ないよ』


「ちくそー、分かってんよ」



 歩き疲れたのか白いのと赤いのは私の肩に乗ってる。二人ずついたのが、今では一人ずつしかいない。



『なら木に聞けば良いのよー』


『果樹のいる場所を教えてくれるかもしれないわよー』



 私と一緒に下流に流れてる水色さんが立ち泳ぎしながら言った。


 木に聞けば良いと言われても、見えないものにどう聞けば良いのやらさっぱりだ。



「どうやって聞けばエエかな」


『?』


『どういうこと?』



 あそこにいるじゃん、と不思議そうな顔をされた。いや、見えないからどうすれば良いのか分からないのよ。



『望めば良いのよー』


『私たちの時と同じようにねー』



 水色さんが説明してくれた。分かりやすい。願えば良いのか。


 果物が食べたい果物が食べたい果物が食べたい。



『果物……ない』


『果樹……いない』



 気づけば、緑色の子が木の枝に腰掛けてた。恥ずかしがりなのか葉っぱで身を隠してる。可愛いじゃないか!



「果物はないんやな?」


『うん』


『ごめんなさい……』


「あ、いや、泣かんといて! 教えてくれただけで有り難いんやから」



 うるうると目を潤ませる緑の子を慌てて宥める。と。



『なーかしたなーかした』


『せーんせに言ったーろ』


『わーるいんだわーるいんだ』


『せーんせに言ったーろ』



 水色にもらった魚を捌くためにポケットに突っ込んでた鋏から懐かしい歌が聞こえてきた。取り出してみれば黄色の子が二人、鋏にしがみついてる。



『ナカコ、木を泣かしたー!』


『ナカコってば悪い子っ! メッ!!』



 飛び上がって頭を殴られた。理不尽! さして痛くはなかったけど、そこ小さい体からは信じられないほど強い力だった。



「えっと……?」



 風、火、水、木とくればあとは金と土だけだ。鋏にしがみついてたということは金だろうか。



『ナカコ悪くないの、木が一人で泣いたの』


『シューンとしてポカポカして泣いたの』



 やっぱり白いのの説明はさっぱり分からん。擁護してくれてることは分かるけど。


 黄色いのは何かを考えついたように鋏から離れ、跳ねながら木に近寄り葉っぱの中に飛び込んだ。そして緑のを引っ張り地面に降り立つ。



『友達ー』


「ほうかー、仲良きことは素晴らしきかな」



 可愛い。黄色の影に緑がもじもじと隠れようとしてるのを見て癒される。



『一緒! いじめちゃメッ』



 黄色が緑を抱きしめる。苛めてないのに。



「これからよろしく」


『よろしくー』



 返事をしてくれたのは黄色いので、緑のはササッと隠れて返事してくれなかった。ちょっと傷つく。



『ナカコ、お昼食べないのー?』


「食べるで?」



 水色が聞いてきたのに頭を振って答える。ああ――果物が食べたい。

ユニーク1000越え、PV5000越え有難うございます!

ケタ見間違えてないよね、と何度も確認しました。驚いた……!

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