18・香水? ムリムリ
喜びのあまりヨーデルを鼻歌で奏でながら、そこらへんに生えていた香草をお湯の中に突っ込んだ。ちゃんとツッ君に「これ大丈夫?」って聞きながら摘んだから毒にはならないはずだ。
「入浴剤は入れへん性質やけど、あん中におったらくっさいのが移るわ……マジ勘弁、それだけは勘弁」
入浴しないのが文化なんだから仕方ないんだろうけど、こっちにまで被害を及ぼさないで欲しいというのが本音だ。
『ナカコ良いにおいー!』
「え、ほうか? 良かったー」
シロちゃんが私の胸に張り付いて叫んだんだけど、ツッ君に凄い形相で引きずり降ろされて泣きだした。金ちゃんはシロちゃんに当てられて一緒に泣きだし、ミズキちゃんが『あれまあ』と宥めてるんだか放置してるんだか分らない言葉を呟いている。ひーちゃんは私の足に抱き着いて『本当に良い匂い』と笑っている。何このカオス。
話は変わるけど、良い匂いがするみたいで本当に良かった。無臭でも問題ないんだけど、良い香りがするならそっちの方が良いからね。
「あ、せやツッ君」
『何?』
私はあることを思い出した。匂い袋があれば少しくらい汗臭くなっても誤魔化せるはず。週一でしかここに来られないだろうし、この世界に四季があるのかは知らないけど今は熱い時期だ、匂い袋があったら重宝する。
「乾燥させても良い匂いのする草ってあれへん? 小さな袋に詰めて首から掛けたいんやけど」
草に関することならきぃちゃんの方が良いんだろうけど、きぃちゃんは私を怖がるばっかりで使えない。ツッ君なら自分に生えてるもののことだし詳しいに違いない。
『それならこっち』
ツッ君を先頭に森を分け入る。川の近くならまだどうにかなったけど、森の中はやっぱり怖い――初日の、八重歯が素敵な猛獣さんを思い出して体が震える。いらぬエンカウントを避けるため、大声で歌う。
「来てよパーマン、私のところへ」
助けてパーマン、ここに助けを待ってる女の子がいるから。どら焼きが大好きな某青狸でも問題ないです。
見た目だけはノリノリで獣道を進めば、急な斜面になって木が生えてない場所に出た。鬱蒼と茂る木の葉もここは開けている。
「おお……こんな場所もあるんやな」
『人には秘密。ナカコだから一緒に来た』
「有難う、私にやから教えてくれたんや?」
はしゃいで掛けっこしだすシロちゃんと金ちゃんは放置することにして、ひーちゃんとツッ君と私で草を摘むことになった。ミズキちゃんは川に置いてきた。
『この草が良い匂い』
ツッ君が摘んだ葉に顔を寄せて匂いを嗅げば、なるほど爽やかな香りがした。柑橘系の酸っぱいような甘いような香りだ。ここ一週間ちかく悪臭に囲まれて生活してたからよけいに良い匂いに感じられる。
「じゃあこれを摘んで帰ろか」
『ん……ナカコ、乾燥させる?』
ツッ君が頷き、私も摘もうとした時、ひーちゃんが首を傾げた。
「うん、帰ってから部屋に吊るそ思ってんやけど――」
『ひーちゃん、乾かせる』
話しながらもしかしてとは思ったけど、万能だねひーちゃん。燃やすことも乾燥させることもできるって便利だね。
「ならひーちゃんにお願いしょっかな」
『うん!』
袋がないからポケットに葉っぱを突っ込んで、遊んでた二匹と水遊びしてたミズキちゃんを回収してパン屋に帰った。
城門で会ったマサキさんに「良い匂いがするなぁ」と言われてガッツポーズをとったのはまあ、当然でしょ。
いつの間にやらPV十万越え……有難うございます、嬉しさのあまり泣きそうです!
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ここしばらくレポートとテストに追われていまして、更新ができなかったのです。それなのに毎日足跡があって……もう嬉しすぎる。有難うございます、これからも頑張ります!!