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13・火山のあるなし

 鼻をグズグズいわせながらパンを食べた。炭水化物は大切だね本当に。塩と水さえあれば人間しばらくは生きていけるとか言うけど、美味しいものを食べる楽しみがないと日常に張りがない。


 三つあったロールパンを食べ切り、一息吐く。ここ最近の粗食のせいか胃が縮んだらしい、前まではロールパンなら五つは食べないと満足できなかったのが三つでもう満腹だ。


 ズビッと鼻をすする。鼻水垂れてきた。



「ティッシュ、ティッシュ……ってああ、ないんやな」



 ハンカチで鼻をかむのは鼻紙がないから出来た習慣だったと思う。日本には昔から何種類もの紙があって、鼻紙から塵紙まで(あまり変わらん)紙に関して豊かだったのだ。日本最高、日本大好き。外国に行った人間は皆言うじゃないか、日本大好き! と。私も同じ気持ちだ、今すぐ日本に帰りたい。


 ホームシックというよりカルチャーショックだ。呼び出したのが神であれ悪魔であれ人間であれ、私のこの二週間足らずの苦労と疲労を倍にして返してやる。現代日本人のヘナチョコ拳なめんな――こんなんでも殴られりゃ痛い。はずだ。


 汚れれた袖で顔を拭うのに抵抗感がなくなったことに衝撃を覚えながら涙を拭い、パンの入っていたバスケットと空になったコップをどうすれば良いのか分からなかったからとりあえずそのまま置いといて部屋を出た。食べ終わったら来るようにって言ってたもんね。



「すみません」



 控え目にノックして扉を開ければやぱりおっちゃんとおばちゃんがいて、焼き窯から出されたパンをおばちゃんがトレーに並べてた。



「食べ終わったのね。ヨシキ、上がっても良いかしら?」


「ああ、あとは俺がしておこう」



 おばちゃんがまたついてらっしゃいと先導するのについて外に出た。おばちゃんちの裏に井戸があって、おばちゃんは滑らかな動作で桶に一杯水を汲むとエプロンからはみ出てた布を浸して絞った。



「拭きなさい、埃っぽいでしょ?」



 拭くより風呂に入りたいとは言えないな、これ。てか、おばちゃん臭い。何臭いかっていえば汗臭い。長いこと風呂に入ってないんじゃないかってくらい臭い。抱きついてママの匂いだ! とか言いたくない程に臭い。大事なことなので何度も言います。おばちゃんが臭い。


 もしかして入浴の文化がないのか? ないんだろうな、だって見るからにヨーロッパじゃないかここ。日本は火山が多いから温泉も多くて入浴文化が広まってたけど、火山の少ない欧州では『入浴? 何それ美味しいの?』だったからな。かの太陽王と言われたルイ十四世が初めて風呂に入ったのは七歳の時だぞ、そりゃ汚いわ。香水の文化が発展するのも分かるってもんだ。



「有難うございます……」



 今度はカルチャーショックもあるけど刺激臭で涙が出そうなんだけど、私はどうしたら良い。


 文化の基準がまだ分からない今、入浴を勧めるのは憚られる。だけど私はこの刺激臭に慣れられるとは思えない。人と会うたびにこの刺激臭も嗅がなきゃいけないのかと思うと、鼻の痛み以外でも涙が出そうだ。


 おばちゃんは何を勘違いしたのだろうか、私を抱きしめて背中をさすり始めた。さすらなくて良いんで、とりあえず離れて欲しい。

まったく感動的じゃないシーン。僕の書くギャグはこんな感じ。ギャグと言って良いのかさえ不安。

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