11・怖い顔という民族性
泣きわめいて寝たその二日後。つまり私がここに来てから二週間に二日足りない日数が過ぎたあと、私は布団の上で横になっていた。
目覚めてからエレメンジャーが私の頭の横で丸くなって眠っているのを確認して安心する。エレメンジャーはもう私の正義の味方みたいなものだ。目を細めながら五人をそれぞれ見つつ、私はここに至る経緯を思い出していた。
必死で歩いてやっと着いたのは村や街と言うより城下町といった感じだった。城の周りには堀が張り巡らされ、石造りの城壁は高い。どこからどう見てもヨーロッパ風のそれに嫌な気がする。住んでる人間も皆ヨーロッパ風なんじゃなかろうか? 厚い胸板、濃い体毛、肉食文化で腸短い。
「嫌な想像や……」
その想像が当たってないことを願いたい。何故にそんな圧迫感のある奴らと生活しなくちゃいけないんだ。学校にいる英会話の先生のミスター・スミスは彫が深すぎて目が落ちくぼんで見えるから凄く怖かった。明るい室内、ミスター・スミスの目元だけ暗いもんだから皆怖がってた。まるで自然のサングラスを掛けてるよう、と誰だかが言ったのに頷いたもんだ。
ところで、私は怪しさ満点なんじゃなかろうか? 技術レベルがどこまでの者なのかは知らないけど、全く同じノートを量産できまた紙も一枚一枚が極薄い製紙、文字の滲みが全くない出版、プラスチック製のペットボトル、振るだけで芯が出てくるシャープペン――オーパーツになる可能性が大きい。疑われる要因は極力減らしたいからな。
山の上から斜め下方に城を見ながら考えた。これは隠しておくべきかもしれない、と。
「きいちゃん!」
『ひぅっ!――な、何……?』
いつまで経っても慣れてくれないきいちゃんがビクビクと肩を震わせた。
「この私の荷物、雨風を凌げる場所で保管したいんやけど。きいちゃん、頼める?」
ツッ君に言ったら土の中で保管されそうだ。でもきいちゃんなら、鳥の巣じゃなくなった木の洞とかに隠せるんじゃないかな。
『わ、分った』
『金ちゃんは金ちゃんはー?』
「金ちゃんには何もないで」
『シロちゃんも何かするのー』
「何もせんとってくれ」
ツッ君が悔しそうだとかひーちゃんがどうでも良さそうだとかミズキちゃんが『あらあら』とか言ってるのは横に置いといて、きいちゃんにはここで私の荷物番になってもらうことにした。恥ずかしがりのきいちゃんだ、私と同行するよりはここで木の中に隠れながら荷物の見張りをしてる方が良いだろう。
「またねきいちゃん」
『またねー』
さっそく葉っぱの服もどきで体を隠すきいちゃんに手を振って別れる。きいちゃんには申し訳ないけど面倒事が減って良かったとしか思えない。
三十分ほど歩いて門にたどり着けば、私の悲惨な姿を見た衛兵さんが保護してくれた。どうやら衛兵さんはエレメンジャーが見えないらしく騒ぐエレメンジャーに気付く様子もなく私を抱え、仲間だろう中年に見張り番の仕事を全部押し付けると実家だというパン屋に連れてった。
怪我をしてるわけじゃないから手当などはなく、でも濡れタオルで顔や腕を拭いてもらった。コーカソイド系の体格だったけど、慣れれば気にならなくなる――と思いたい。
第一異世界人発見、やっと生死をかけた? 旅が終わりました。さて、衛兵さんの名前決めてない。どうしよう。誰か名前を考えてくれないでしょうか。
少なくとも今のうちに決めておかなきゃいけない名前↓
衛兵1号
衛兵2号
パン屋の奥さん
パン屋の旦那さん
ご近所の兄ちゃん
誰か名前を考えてくれないかな。