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1-2-2

 ゴーストは片手でジョウロを傾けた。慎重に、ゆっくりと。水は静かに花々の根元へと染み込んでいく。通りすがりの何人かが足を止め、花の並びを一瞥した。どれも地元の顔なじみばかり。


 背後では、街の息遣いが低く続いていた。配達トラックのがたつく音。数ブロック先から届く路面電車のきしみ。


 ——そして、誰かが立ち止まった。


 ただの通行人ではない。足を止めた。


 その男はデーモンだった。肩幅の広い、日焼けした粘土のような赤銅色の肌。厚手のコートは使い込まれ、翼を想定した仕立てになっていた。羽は見えなかったが、あのカットは“ある者”のものだった。


 コートの裾の下では、細く鋭い尻尾が気怠げに揺れていた。猫のように、落ち着きがない。


 髪は粗く、黒く、ちょうど耳の上の角の根元を隠す程度に垂れている。角は太く、間隔も広い。伸ばせば牛のように巻くだろう。


 帽子は被っていなかった。選択肢がないわけではない。今では様々な角に合わせた帽子が仕立てられている。長くカールしたもの、螺旋状のもの、額から生える突起、こめかみに沿った稜角、あるいはネフィリムたちが好む鹿冠のような分岐角にさえも。それに、彼のような低く広がった根付き角用の帽子も存在する。


 だが、彼は被らなかった。


 デーモンは花の前に立ち、コートのポケットに両手を突っ込んだまま、何も触れず、ただ——見ていた。


「俺には、全部同じに見える。」

 その声は、石炭灰のように乾いていた。


 ゴーストはプランターから目を離さなかった。

「ええ、そう見えるのが普通です。」


 沈黙。


「で、どれが蘭なんだ、ゴーストさんよ?」


 声の調子は軽く装っていたが、空気がわずかに締まる。笑みは気だるく、表情は変わらない。


 ゴーストは体を起こし、ジョウロを静かに置いた。

「どうやら、俺のことを調べてきたようですね。」

 声は静かだった。

「でも、俺はこういう形で依頼を受けていないんですよ。」


「ジュゼッペ・ペルラ。」


 デーモンは光沢のある写真を一瞬だけ見せると、手品師のようにそれをゴーストのシャツのポケットへ滑り込ませた。


「ヤツはJ区画の《コート・ダジュール》にいる。地元じゃちょっとしたホットスポットだ。」


 ゴーストは写真を確認しようともしなかった。

「仕事の話なら——」


 デーモンは話を遮った。

「ヤツが誰と話すか、そして何を話しているか。調べろ。」


 ゴーストは息をひとつ、静かに吐いた。

「わざわざ俺を追ってきたなら、せめて条件の一つくらい提示しては?」


 デーモンのまぶたは動かない。

「これは依頼じゃない、ゴーストさん。お願いしてるんだ。丁寧にな。」


 その笑みが、わずかに薄くなる。


「もし断ったら?」


「断らないさ。」


 デーモンはゆっくりと、コートのポケットに手を入れた。脅しではない動き。そして、小さなフォルダーを取り出す。開きはしなかった。ただ、掌に軽く打ちつけるようにして持っていた。


 そして、何気ない口調で言う。


「お前は“ゴースト”だけじゃないだろ?」


 沈黙。


「——アレン・バーンハート。」

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