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1-1-4

 駐車場を横切る途中、彼はフードトラックのそばで煙草をふかしているデーモンのカップルとすれ違った。ひとりは痩せぎすで赤い目、赤褐色の肌に、こめかみの上で螺旋状の角が無理やり削られていた。ちらりと彼を見ただけで、また煙草に視線を戻した。


 場末のセダンが端に停まっていた。塗装はくすみ、タイヤは擦り減り、ホイールキャップのひとつは欠けている。鍵はすでに中、ナンバープレートなし。


 〈ゴースト〉は車に乗り込んだ。急ぐことはない。夕方の街の交通は血液のように流れる——鈍く、濃く、生きている。


 十五分後、彼は地下のステーションに車を滑り込ませ、指定されたスペースにそっと停めた。


 助手席からチャコールグレーのウールコートを取り出して羽織る。長く、無駄のないライン。襟を立てて湿気を遮る。やわらかい帽子を脱ぎ、隣の座席に置かれていた無地のグレーのフェドーラに替えた——より暗く、より影に近い。手袋は両手とも黒い革。


 彼は車を降り、鍵をかけた。


 階段の手すりでマッチを擦るデーモンがひとり、背中を丸めて通り過ぎた。火花が一瞬、荒れた角張った顔を照らす。短く鈍い角、ひび割れた唇、すすけた作業着。コートの姿はなく、腕はむき出しで、色褪せた刺青と鳥肌に覆われていた。震える指で煙草に火をつけ、吐き出した煙を口で押さえ込むように歯を食いしばった。


 彼はちらと〈ゴースト〉に視線をよこし、歯の間からつぶやく。


「冷える夜だな?」


 〈ゴースト〉はわずかにうなずき、コートの襟を直した。


「この街に、暖かさは長続きしない。」


 デーモンは鼻から煙を吐き、乾いた笑いを漏らす。


「まるで、死体が冷えてくようなもんだな?」


 短く笑って、マッチを振り消し、煙の尾を残しながら階段を上っていった。


 〈ゴースト〉は地下鉄のホームへと降りていった。襟を高く立て、ブリーフケースを手に。傍目にはただの中堅の会社員に見えただろう——疲れきって、書類に押し潰され、税金か締切にでも苛立っているような。


 向かいのホームには、スーツ姿のエンジェルたちが集まっていた。手に帽子を持つ者、深くかぶる者。翼はコートの下でぴたりと折りたたまれ、背中はラインを崩さぬよう広めに仕立てられていた。羽は一枚も見えない——それでも、あの下に翼があることは誰の目にも明らかだった。


 ヒューマンも何人か、タイル張りの壁にだらりともたれている。そのうちのひとりは立ったまま居眠りしていた。頭を後ろに傾け、微かないびきがちらつく照明の下で響いていた。他の者たちは線路をただ眺め、ポケットに手を突っ込み、座る価値もない仕事でしわくちゃになったコートを着ていた。


 一人のデーモンが離れた場所に立っていた。背が高く、完璧に着こなし、片手に開いた本を持っている。額から伸びる長く磨かれた角は、美しく曲線を描いていた。


 誰もがただ、列車が来るのを待っていた。


 列車に乗り込むと、〈ゴースト〉は窓際の席に座った。ブリーフケースを開き、折りたたまれた新聞を取り出して見出しに目を通す——重要なことは何もない。音だけの雑音。読む目的は「ニュース」ではなかった。


 次の駅で、ひとりの若いネフィリムが静かに乗ってきた。


 彼は背が高く、物静かで、蛇のような尾を足元に巻きつけて他人に触れぬよう気を配っていた。首と肘のあたりに鱗が輝き、ちらつく照明の下で虹のような光を反射していた。鹿のような角が、頭の両側からゆるやかに伸びている。


 珍しい光景だった——公共交通機関に乗るネフィリム。


 誰も見ていないようで、誰かは見ていた。


 三駅後、〈ゴースト〉はトラムに乗り換えた。小さく、古びて、外縁区でしか走っていないような車両。


 路線の半ば、彼は降りた——ニッケル製の煙草スタンドと、まだ酸っぱいピクルスと灰色のコーヒーを売っている屋台のある、広い角。


 彼は閉まった仕立屋と、ギャングの落書きと色褪せた縄張りペイントで覆われた階段の間の狭い路地へと入った。


 壁にはチラシが何層にも剥がれかけていた——ひとつは救いを約束し、ひとつは安酒を宣伝し、もうひとつにはこうあった。


「綺麗な住人限定。煙草禁止。騒音禁止。角も禁止。」


 その下、半分破れた広告に映っていたのは、シルクの首輪をつけた、目が光るネフィリムだった。虹色に輝く鱗が首と胸元を飾り、ステンドグラスのように繊細で美しい。白く滑らかな翼が背後にふわりと広がり、長い羽根が自由に伸びていた。彼女は顔を少し傾けて、香水のボトルをまるで体の一部のように抱えていた。


 路地を抜けると、静かな長い通りに出た。古びた家々と傾いた木々が並んでいる。どこかの門の向こうで犬が吠えた。


 彼はブロックの端まで歩き、角を曲がった。


 一軒の平屋が通りの果てにうずくまっていた。錆びたフェンス、剥がれた塗装、鉄格子の窓。


 ポストにはこう書かれていた。


 DOUGLAS F. MERCER (ダグラス・F・マーサー)


 彼は鍵を差し込み、


 ドアを開けて、


 中へと姿を消した。

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