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雨が歩道を濡らし、街の灯りを砕けたガラスのように映し出していた。黒塗りの車が縁石にぴたりと停まっている。スモークのかかった窓、シティ・プレート。彼が乗り込むと、ドアが鈍い音を立てて閉まった。
車内は薄暗い。ピンストライプの革張りシート、古いコロンとチェリー・パイプの煙の匂いが空気に染み込んでいる。向かいの席には、ダークグレーのスーツを着た年老いたエンジェルが座っていた。翼は背中にぴたりと畳まれている。
ふたりの間にはスリムな収納が開いていた。中には銀のフラスコとクリスタルのタンブラーがふたつ。片方にはすでに酒が注がれている。だが老人はそれを差し出すことなく、ゆっくりと口をつけた。
車は静かに走り出した。
「上手くいったようだな?」と老人が言う。
男は何も答えず、ブリーフケースから一枚の書類を取り出し、差し出した。
ヒューマンの助手がそれを受け取り、素早く目を通す。そして小さく頷いた。
「やるじゃないか、ヴェイルさん。いや、今日はタッシュ氏だったか?」
老人はにやりと笑った。「名前が多すぎて覚えきれんよ。」
「意味はない」と男は静かに言った。
「残りは?」と老人。
男はもうひとつ、小さな黒いブリーフケースを渡した。
助手が開き、中を確認する。建設契約書の写し、区画整理の地図、市の内部メモ――必要なものがすべて揃っている。
ページをめくる間、老人は喉の奥で乾いた笑いを漏らした。
「信じられんな」と老人は言った。「カルダーダムの幻――〈ゴースト〉を雇うほうが、地区委員全員を買収するより楽で安いとはな。昔は票を七つ集めて、封筒を十通渡して、半年はかかったもんだ。今は、スーツの男ひとりで済む。」
助手がケースを「パチン」と閉じ、新しいブリーフケースを男に手渡した。
「報酬だ、〈ゴースト〉さん。今後とも頼むよ。」
中には札束がぎっしりと並び、帯でぴったりと括られていた。
男――〈ゴースト〉はわずかに笑った。「続けるかどうかは…状況次第だ。」
車はダウンタウンの公共駐車場付近で静かに止まった。
彼は黙って降りた。
車は何も言わずに走り去った。




