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1-1-3

 

 雨が歩道を濡らし、街の灯りを砕けたガラスのように映し出していた。黒塗りの車が縁石にぴたりと停まっている。スモークのかかった窓、シティ・プレート。彼が乗り込むと、ドアが鈍い音を立てて閉まった。


 車内は薄暗い。ピンストライプの革張りシート、古いコロンとチェリー・パイプの煙の匂いが空気に染み込んでいる。向かいの席には、ダークグレーのスーツを着た年老いたエンジェルが座っていた。翼は背中にぴたりと畳まれている。


 ふたりの間にはスリムな収納が開いていた。中には銀のフラスコとクリスタルのタンブラーがふたつ。片方にはすでに酒が注がれている。だが老人はそれを差し出すことなく、ゆっくりと口をつけた。


 車は静かに走り出した。


「上手くいったようだな?」と老人が言う。


 男は何も答えず、ブリーフケースから一枚の書類を取り出し、差し出した。


 ヒューマンの助手がそれを受け取り、素早く目を通す。そして小さく頷いた。


「やるじゃないか、ヴェイルさん。いや、今日はタッシュ氏だったか?」


 老人はにやりと笑った。「名前が多すぎて覚えきれんよ。」


「意味はない」と男は静かに言った。


「残りは?」と老人。


 男はもうひとつ、小さな黒いブリーフケースを渡した。


 助手が開き、中を確認する。建設契約書の写し、区画整理の地図、市の内部メモ――必要なものがすべて揃っている。


 ページをめくる間、老人は喉の奥で乾いた笑いを漏らした。


「信じられんな」と老人は言った。「カルダーダムの幻――〈ゴースト〉を雇うほうが、地区委員全員を買収するより楽で安いとはな。昔は票を七つ集めて、封筒を十通渡して、半年はかかったもんだ。今は、スーツの男ひとりで済む。」


 助手がケースを「パチン」と閉じ、新しいブリーフケースを男に手渡した。


「報酬だ、〈ゴースト〉さん。今後とも頼むよ。」


 中には札束がぎっしりと並び、帯でぴったりと括られていた。


 男――〈ゴースト〉はわずかに笑った。「続けるかどうかは…状況次第だ。」


 車はダウンタウンの公共駐車場付近で静かに止まった。


 彼は黙って降りた。


 車は何も言わずに走り去った。

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