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ニコラス・アプリアは、コート・ダジュールの金箔の扉をすり抜けた。帽子を深くかぶり、肩を丸めたいつもの猫背。
その背のエンジェルの翼は先端が褐色に染まり、ランプの光でフクロウの影を思わせた。
彼は帳簿向きの男にしか見えなかった。絹の檻ではなく。ベストとズボンは同じ濃い織物、下に格子柄のシャツ、蝶ネクタイはきちんと結ばれすぎて色気がない。遠目は清潔だが、近づけばインクの匂いと布にしみついた影。ベストに走る金の鎖がかすかに光り、靴が煙をかき分ける。
ヴィックの部下が二人、左右に付き従っていた。ひとりは重みで沈む革のケースを抱えて。ニコラスは運ばせるだけで自分は指先もかけない。
ドアのバウンサーが顎を下げた。
「こんばんは、アプリアさん」
ニコラスは乾いた笑みで応じた。癖であって、温かみではない。
近くのテーブルで、ジンに酔った常連がグラスを掲げた。
「ニコラス! 一杯やろうぜ!」
足を止めず、顎髭に光をかすめさせて顔だけわずかに向ける。
「相変わらずだな。仕事中に飲むかよ、俺が」
老人は笑い声を上げたが、ニコラスはもう進んでいた。
メインフロアは黄金の灯と香水で膨らんでいた。ニコラスはほとんど目を向けない。流れ作業のように歩を運ぶだけ。
二人を追い、狭い階段に入る。下のフロアの煙とブラスは遠のき、階段には一本の電球だけ。鉄の籠に収まり、風に揺れていた。
途中で、彼は足を止めた。
上からひとり降りてくる。肩幅の広い長身。すでに部屋の寸法を測り終えた者のような、無駄のない静けさ。スーツは地味だが仕立ては確か。灰色の中折れ帽に短く刈り込まれた黒髪。顎は四角く固く結ばれ、殴られても割れそうにない頑強さ。
ニコラスは身をずらし、狭い階段を譲った。
男は帽子のつばに指を触れた。挨拶とも言えない、右手のほんの一瞬の合図。もう片方、左手は黒い革手袋に覆われ、だらりと下げていながらも重みを帯びていた。まるで自分の役目を知っているかのように。
薄明かりの中で、二人の目が一瞬交わる。
ニコラスはボウラー帽をわずかに傾けて応えた。弱い電球がベストの鎖を照らし、ワニ革の靴が軋んだ。
ただそれだけのこと。だが残った。認識の重み。
異なる盤に座っていながら、同じゲームの使い手。
男はそのまま下りてゆき、足音は下のざわめみに溶けた。
ニコラスは無言のまま登り、出来事を心の帳簿に一行書き加える。
廊下がすでに多くを物語っていた。
クララのオフィスにはまだ誰かいた。客か依頼人か、そんなことはどうでもいい。会話の最中の部屋の空気はニコラスには分かる。
だから、ノブに触れる前から声を張った。
「ミス・クララ、いつもの件で来た」
ドアを押し開ける。作り笑いの陽気さ、わざと大きく響かせて、直前の言葉をかき消すように。
一目で絵が描けた。
クララは机に座り、手元にウイスキーのグラス、ボトルは開いたまま。
部屋の中央にはマレクが立ち、サブマシンガンを肩にだらりと下げていた。いつもの持ち場じゃない。何かがあった。ニコラスはそれを見て、胸の奥に留めただけ。詮索はしない。
「金の話になると元気ね」クララは冷ややかに言った。
「誰だってそうさ」ニコラスはにやりと笑い、ソファに腰を落とす。視線が部屋を滑る。赤ワインの跡が残るグラス。灰と混じった小さな染み。クララのグラスは琥珀色、ウイスキー。二つの酒、二つの物語。
クララは机の引き出し金庫に身をかがめ、ダイヤルを回す。
「金を受け取れ」ニコラスは後ろを振り向かずに言った。
連れてきた二人が前に出る。ひとりが空のケースを開き、もうひとりがクララの引き出しから札束を取り出して詰めていく。整然と、素早く。
クララは椅子に戻り、上から札束を一つ取り、真っ二つに割ってマレクに渡す。
「行きなさい」
「はい、ミス・クララ」マレクは振り返らずに出て行った。
「女にでも使うのか、マレク?」ニコラスは笑みを浮かべてからかった。
デーモンの唸り声が答えだった。
ニコラスはクララに目を戻す。
「俺がチェックを回すから助かってるんだぜ、ミス・クララ。ヴィックの金を抜けるのは、あんただけだ」
「気にしないわ」彼女は煙草に火をつけた。
「ヴィックは気にする。最近は……」ニコラスは言葉を宙に残した。
彼女の視線が、机の上のもうひとつのケースに流れた。重すぎるケース。
「気になるだろう?」ニコラスは滑らかに言った。「あれは他の連中の分だ」
クララの唇がわずかに曲がった。
「稼げるようになったってことね」
「この青い楽園に勝てるものはない」ニコラスは答えた。「だが確かに、稼ぎ始めてる。ヴィックの小さな縄張り争いが、ようやく形になってきたらしい」
クララは煙をゆっくり吐き出した。
「愚か者ね」
ニコラスは薄く笑った。
「貧乏な愚か者より、金持ちの愚か者のほうがマシだ」




