表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

1-6-3

 ドアが静かに閉まり、ランプの明かりと煙のかすかな匂いだけが執務室に残った。

 クララはその場に留まり、手の中の半分ほど残ったグラスを見つめる。

 一度傾け、ワインに光を当ててから、残りを灰皿にあけた。


 サイドボードからウイスキーのデカンタを取り出し、グラスに注ぐ。

 今度は飲むに値するものを。

 最初のひと口は、ゆっくりと喉を焼いた。


「いいわ、マレク。もう出てきて」


 壁に掛けられた一枚の絵──どこにでもある飾りのように見えたそれを抱えたまま、壁の一部が音もなく横に滑った。継ぎ目ひとつないその扉の奥に、細い通路が現れる。

 そこから姿を現したのは、黒い仕立てのスーツを着た、がっしりした体格のデーモン──古い石炭のような肌。長く細い角は途中で折られ、先端は不揃い…暴力の痕が生々しい。革のような小さな翼はジャケットのスリットから突き出し、ぴたりと畳まれていた。手には短機関銃を提げていたが、その握りは油断のないものだった。


「彼をどう思う?」クララはグラスから目を離さずに訊く。


「顔は知らない。ただ、あの手のタイプは見覚えがあります、ミス・クララ──ゴーストです。カルドレダムで囁かれるフィクサーの一人」


 クララはウイスキーを揺らした。

「カルドレダムのゴースト、ね。あの立ち振る舞い…確かにそう見えるわ」


「それだけじゃない」

 マレクが言った。

「奴は俺に気づいてた。壁越しに見えてたかもしれねぇ。左手は腰から離れなかった──おそらく銃の位置だ。右手はグラスを握ったまま、たとえ場が荒れても一滴もこぼす気はなかった」


「もし誰かが彼をジュゼッペに向けて動かしているなら…その誰かは、ゴーストを見つけて取引を持ちかけるほどの力を持ってるってことね」


 クララはもうひと口、ゆっくりと口に運んだ。


 口元がかすかに弧を描く。

「それに……聞こえたでしょう? 私のジュゼッペへの反感。──それとも、顔を見ればわかる?」


「いや。俺も、他の誰もそんな話は聞いたことがない。正直に言えば……耳にすべきじゃないことを聞いた気がする


「当然よ。聞かれるはずがないもの」


「私は何も聞いていません、ミス・クララ」


 クララの目がわずかに細まった。笑みは崩さないまま。

「尾行して。気をつけなさい……でなきゃ、またあの男の思うままに踊らされることになる。今日が最悪の日だったのか、それとも一番幸運な日だったのか──それを知りたいの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ