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クララの目が細くなる──猫が、獲物に飛びかかる価値があるかどうか測る時の目つきだ。
アレンはその視線の重みを感じた。量り、値踏みし、ほとんどはねつけるような視線。
「ジュゼッペの名を出すなんて、自分がどんな面倒に足を突っ込もうとしてるか、わかってるみたいね」
アレンはグラスを持ち上げ、ワインを舌の上で転がす。味わっているわけじゃない。ただ、沈黙を張りつめた弦みたいに伸ばすために、ほんの一拍、目を閉じた。
そして目を開けたとき、その視線はクララから外れなかった。
「もちろんさ──ベンジャミン・ロバーツ・マッケニー」
彼女の顔に、マッチの火花みたいな一瞬の変化が走った。確かにあったかどうかも怪しいほどの一瞬。
「ジュゼッペ・ペルラはサーペントの幹部だ。ベン・マッケニー──『サーペントの舌』。」
彼女の手が止まる。煙草が宙で静止する。
「たった一晩で、彼と話したいだなんて。誰かを知ってて、それでもやるつもりだなんて、あんた頭は切れるけど……死に急ぎね、マーサーさん」
「三晩だ」アレンが言った。「外で張ってた一晩を入れれば、四晩だ」
ギシ、と椅子が鳴る。クララが背を預ける音が静寂を切り裂く。煙が口の端からこぼれ、ゆっくりと形を変えながら意味を持たせる。
「それで?」
「この店のことなら、ヴィックよりも知ってる」アレンの声は低く、彼女を身を乗り出させる。
「奴はこの街区を仕切ってるんじゃない──ただの高いオモチャを持った坊やだ。だが、あんたは……動くものすべてを掌握してる。締め上げがきつすぎて、女たちがあんたのためなら血を流すくらいに。そのネフィリムもそうだ──あんたが一番囲ってる宝物。ジュゼッペが来る時にしか、天国から降ろさない」
アレンはその言葉を宙に吊るし、彼女の瞳に割れ目が入らないかを探った。
「噂は聞いてた。酔っ払い同士がホラを競うみたいな話ばかりだ。でも、実物を見ちまったら……」口元に笑みがにじむ。
「珍しく、話のほうが実物を下回ってたな。ジュゼッペが夢中になるのも無理はない。ヴィックがその執着を利用するのもな」
クララがゆっくり足を組み替える──意図的で、計算された動き。
視線はアレンに据えられたまま。まるで切り札を握っていて、まだ切るタイミングを決めかねているように。煙が二人の間をリボンみたいに上がっていく。灰は長く垂れ下がり、崩れ落ちそうなほど。彼女がどう思っているかは、その淡い笑みの奥に隠されたままだ。
「それを全部知っていても」アレンが言った。「あんたの店も、そこに関わる誰も狙わない。代償は高く払える。望むのは、彼と一度、同じ席に座ることだけだ。週末までに、俺は消える」
今度は、曖昧さのない鋭い視線が返る。
「何者なの、マーサーさん? 誰の下で動いてる? あんた、自分の狙いを隠そうともしないし、命を失うことも恐れてない」
「誰の下かなんて関係ない。重要なのは俺の仕事だ。そして時間がない」
「恐れもなくここへ来るのは、いつだってサーペントの連中よ」声が少しだけ柔らかくなる。
「別のサーペントに仕えてるの?」
「いや」
クララは、じっくりと時間をかけて彼を見つめた。
ランプの光が瞳に映り込み、まるで切子細工のガラスのように硬く光った。
「じゃあ、今ここでアンタをジュゼッペに売らない理由は?」
「アンタが、あいつを嫌ってるからだ。」
その一言が、空気に落ちた。
「理由は知らない」アレンは続けた。「けど、ヴィックほど上手くは隠せてない。ヴィックは忠実な相棒を演じてるが、本心じゃジュゼッペを憎んでる。あいつは笑顔の裏で隠すのが上手いが……アンタはそうでもない。」
彼女の表情が、またわずかに揺れた。
扉がほんの少しだけ開いたような、そんな変化。
アレンは口元に薄い笑みを浮かべた。
「値をつけてくれ。金でも、アンタが喜ぶもんでもいい。それで手を打とう。」
クララの視線が、ひと呼吸長く彼に留まった。
ランプの明かりがその表情を平らにし、冷たく、わずかに警戒を帯びたものに見せる。
「ずいぶんと大きく出るわね、マーサーさん。金に困ってないなら……金以上に欲しいものを考える時間くらいは、もらうわ。」
「じゃあ――」アレンは立ち上がった。「今の状況で合意できるなら、明日また返事を聞きに来る。けど、下で待たせてもらうよ。出る前に決めてくれることを願ってね。」
その言葉に、彼女の目の奥が一瞬だけ揺れた。
それは不快か、苛立ちか。
「今夜、この場で決まるとでも? ジュゼッペがまだ店にいるのに?」
「ジュゼッペがここに顔を出すのは週に三、四回――月曜、木曜、土曜か日曜。その週末までに、彼と向かい合えると踏んでる。」
「じゃあ、どうして階下で時間を潰すの? 今夜承諾するとも、決めるとも言ってないわよ。」
「本当に分からないのか?」アレンは小首を傾け、半ば呆れた調子で言った。
「ええ、本当に。」
彼は答えを吟味するように一拍置き、肩をすくめて物足りなさそうに笑った。
「本当に、ただダンサーと酒を楽しみに来ただけだ。」
アレンは帽子のつばに指を添え、別れの挨拶のように軽く傾けてから歩き出した。
ランプの光の輪に残されたクララは、煙草をくわえたまま──燃え尽きかけの先から立ち上る煙が、途切れもせずゆるやかに昇っていく。
戸口から、アレンは最後にもう一度だけ彼女を見た。
それはまるで、ビロードと囁きでできた玉座を守る女王のようだった。
ただし、その下にもっと深い金が眠っていることには気づいていない。
それを探そうとしないのか、影に慣れすぎて見えないのか、彼には分からなかった。
いずれにせよ、彼は階下で見ているつもりだった──酒も、取引も、踊りすらも越えて、このクラブが彼女自身の想像を超えて成長していくさまを。




