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クララは傷跡を隠そうともしなかった。
背中の開いたドレスは、優雅さのためでも、虚栄のためでもない。
女には、勲章のように身につけるべきものがある。
肩甲骨を縦に走る二本の深い線は、刺青でも事故でもなかった。
そこにはかつて翼があった。焼き切られ、引き剥がされた。
人々がどんな噂をしていようと、誰も本人には訊かない。
長いマッチで煙草に火をつけ、化粧部屋の鏡のそばに立つ。
視線の先では、女たちが支度の仕上げにかかっていた。
ヒューマンの娘たちは、先のきらめく偽物のエンジェルの翼を、裸の背中にきつく固定していた。
デーモンの娘たちはもっと手間がかかる。
革の翼を羽根飾りの袖の下に隠さなければならない。
今夜、フロアに出る本物のエンジェルは二人だけだ。
スパンコール、ベルベットの手袋、ガーターの鈴。いつもの鎧だ。
空気は香水の匂いで濃く満ちていた。
それは汗も、緊張も、恐怖も覆い隠す。
クララはこの店のすべてを回す女だった。
マネージャーでもあり、教師でもあり、時には用心棒。
この場所の心臓そのものだ。
《コート・ダジュール》はまだ開店前だったが、店はすでにざわめいていた。
ダンスフロアは磨き上げられ、完璧な光沢を放っている。
テーブルは琥珀色の灯りに艶めき、二階のメザニン——本当の商売が行われる場所——には新しいクロスと冷えたグラスが並んでいた。
隅の蓄音機からは、ショーの前の静かな予熱のように、かすかな音楽が流れていた。
二度ノックがあり、ジョリーが入ってきた。
店の使い走りの一人だ。
「ミス・クララ」
唇紅の跡がついたクリップボードを抱えている。
「二人欠勤です。タリアは肋骨を打って、ピアはまた吐いてます」
クララは横に煙を吐いた。
「ピアに言っときな。妊娠してたら、そのガキを売ってでも代わりを雇うって」
ジョリーは瞬きひとつしない。
「はい、ミス」
「ヴィータをタリアの穴に入れな。それと三回目のショーではリアをフロアから外す。客が見てると調子に乗るし、今夜は拾い集める気分じゃない」
「はい、ミス」
彼が踵を返しかけたとき、クララは目で止めた。
「それとジョリー……シャンパンをもう一度確かめな。まだぬるかったら、あんたの舌を引っこ抜いて氷で冷やすよ」
彼は黙って出て行った。
クララは再び鏡へ向き直る。
ドレスのラインを整え、灰色が混じり始めた髪を撫でつけた。
老いてはいたが、敬意を払われる種類の老いだ。
このカルドレダムの一角で、いまだに「ミス」と呼ばれる数少ないエンジェルの一人。
二度目のノック。
今度はマレクだった。
広い肩と樽のような胸、潰れた鼻に、濡れた砂利のような声を持つフロア係。
「新顔が一人、列に並んでます」
クララは視線を上げない。
「グループかい?」
「一人です。
まるで昔から通ってるみたいな口ぶりで」
クララは白鳥型の灰皿に灰を落とした。
化粧部屋の奥に並ぶ化粧台のひとつ。粉や口紅、香水で散らかっている。
「名前は?」
「誰かがダグラス・マーサーって呼んでるのを聞きました。政府筋らしい……外交官か何かと」
そこで初めて彼女は顔を上げた。
外交官は一人で来ない。
ここには来ない。
そして、常連のように話すなら、誰かに仕込まれているはずだ。
「見張っときな。近づきすぎず、目だけだ」
少し間を置いて付け加える。
「それと、私が二階から見下ろせる席に通しな。フロアがよく見える場所だ」
マレクはうなずき、部屋を出て行った。




