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1-1-1

 市議会のデスクにしては、あまりにも静かすぎた。


 ラジオからジャズも流れてこない。タイプライターの音もない。ただ、ティヴン議員のこめかみを伝う汗のしずくと、古い葉巻のこもった臭いだけが部屋に残っていた。


 ティヴンはひとり、椅子に沈んでいた。


 よれたスーツ。震える手。まるで祈るように握られた拳銃。


 背中のエンジェルの翼は、しぼんで、羽根が乱れたまま垂れ下がっている。まるで、どこにも休めない腕のように。ただの飾り。……この部屋の他のすべてと同じく、役に立たない。


 額は汗で濡れ、息は短く鋭い。まるで、ひと呼吸ごとに命を借りているようだった。


 床には紙が散らばっている。まるで羽根の抜け殻のように。


 デスクの引き出しは開けっ放しで、中身は無造作に放り出されていた。彼は何かを探していた。


 ——逃げ道か。

 ——それとも、引き金を引かずに済む理由か。


 ブザーが鳴った。


 ビクリと身体が跳ね、拳銃が机にぶつかってカチンと音を立てた。


 ティヴンは慌ててボタンを押す。


 スピーカーからは、落ち着いた冷たい女の声が流れた。


「議員、レオン・トゥシュ氏がお見えです。予定されていた面会です」


「……なに? だ、誰だ?」彼はどもった。「そんな予定、入れてたか?」


「先週、ご自身で承認されました。ゾーニング小委員会の後です。G地区、外縁区画の開発についての件です」


 ティヴンの動きが止まった。そして、唾を飲み込む。


「……あのロビイストか?」


 声を低くして問う。「種族は? デーモンか? エンジェルか?」


「ヒューマンです」


 沈黙。


 そして――


「……通せ。待て、お前も来い。いっしょに入れ」


「かしこまりました」


 ティヴンは椅子を立った。震えながら、別の引き出しを開ける。何もない。息が荒くなり、独り言が漏れる。


 書類が飛び散る。ファイルが床に落ちる。


 何も、見つからなかった。


 気がつけば、彼は再び椅子に座っていた。


 拳銃が手にあることに、しばらく気づかなかった。


 ひとつ、嗚咽が漏れた。大きくはないが、深い音だった。


 銃口を口元に運ぶ。


 ——そのとき、ノックが響いた。


 息を呑んだ。拳銃を机に落とし、慌てて書類の山の下に押し込む。袖で顔をぬぐい、ネクタイを直そうとしたが、うまくいかなかった。


「入れ」


 ドアが開く。


 ダークグリーンのスーツを着た女性のエンジェルが一歩踏み入れた。翼は高く、均整が取れており、糊の効いたリネンのように端正だ。彼女は一言も発せず、ただ静かにドアを押さえていた。


 そして、彼が入ってきた。



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