4話『 絶望を呼ぶ厄災 ”大蜘蛛ヴェノジリア“ 』
「厄災...ヴェノジリア」
ライゼはその目の前の蜘蛛の魔物にそう呟いたz厄災は魔物の中でも人類に脅威と見なされた最強の魔物だ。厄災は5匹いて、こいつはその中の1匹で『大蜘蛛ヴェノリジア』だ。かなり凶暴で人間を次々と皆殺しにしていったのだという。
「ょ!...しょ!...師匠!!」
セツナの呼びかけに呆然としていたライゼはハッとして「走れ!!」と大きく叫んだ。
「え?」
「いいから!!」
「早く!!!」
その言葉にわけもわからないままセツナは走り出す。かなりの威圧感を発しているのだがまだ未熟なセツナにはわかっていないようだ。
「まずい...あんなの相手にできるわけがばい!早く逃げ...っ!!」
体に何かが直撃し激痛が走る。ヴェノジリアの方を見ると黒い尖った石のようなものを形成し始めおそらくあれを飛ばしているのだろう。その飛ばした石はライゼの体を貫通しそこから大量に血が流れてくる。
「クソ...!」
「っ!よくも師匠を!」
「ダメだセツナ!!」
セツナは前に出て剣を抜いてその攻撃を仕掛けるが、かなり硬い皮膚のようで全くと言っていいほど効いていない。セツナの渾身の剣は弾かれて前足で肩のところを貫かれた。そこから大量に血が噴き出てくる。
「ぐっ!」
負けじとセツナは剣で足を攻撃するが、何度やっても鉄でできているのかのように固い皮膚には同じことだった。ヴェノジリアはもう一方の足で腹部を突き刺さした。
「あああああああああああ!!!」
攻撃を受けたセツナは悲鳴をあげながら膝をつく。このままでは全滅してしまうと思ったライゼはセツナに逃げろと伝える。
「でも師匠は??」
「俺は大丈夫だ」
「でも...」
もちろんこんなバケモノを相手に大丈夫なわけもなく戦えばおそらく死ぬだとうというのは察していた。
「いいから早く!」
「...っ!」
そのライゼの言葉に何も言わず走り出す。ライゼはすでにヴェノジリアから受けた重症を負わせる攻撃で意識が飛びそうだがなんとか攻撃を加える。ライゼの攻撃すらその装甲には効かず大きな足で壁に勢いよく叩きつけられてしなった。
「っがあっ!!!」
フラフラしながらも何とか立ち上がりヴェノジリアを見る。
「ギュオオオオオオオオオ!」
「もうダメか...!」
またその鋭い足で攻撃を仕掛けてくるのを見てライゼがそう思った時、何かがヴェノジリアに向かって飛びかかってきた。それはさっき逃したはずのセツナだった。
「セツナ!?どうして戻ってきた!!」
「もう失うたくないから!」
戻ってきたセツナはそう言って攻撃を仕掛けるがやはりというべきか固い装甲のような皮膚にはまるで効いていない。
「っ...!」
何とかまた立ち上がり攻撃を仕掛けるが、何度やってもその硬い体に傷一つすらつけることができない。
「ギュオッ!」
ヴェノジリアは口から細い針を何十本も吐きセツナは剣でそれを防ぐが数があまりにも多く防ぎ切れず何個か体に当たってしまう。
「くっ...!」
その針には毒が塗ってありその毒によって視界すらぼやけてくる。セツナに気が向いているのをいいことにライゼの拳が勢いよく炸裂する。だが何度やっても同じことだ。そして数本ほどの足がライゼの脇腹めがけて襲いかかってきた。
「ぐああああああああ!!」
悲鳴を上げるライゼ。脇腹に突き刺さった場所からは血が流れていく。そして先ほどより勢いよく顔を殴りつけるやはりというべきかなんともないヴェノジリアは何本かの足でライゼの体を貫いた。
「っぐはっ!!!」
「師匠!!よくも師匠を!」
「ダメ...だ!」
セツナは体を無理矢理動かしライゼの忠告など耳に入らず一撃が加える。だがさほど効いていないようだ。ヴェノジリアは防いだ足とは別の足でセツナに一撃を加える。だが何度やっても攻撃が通用すらしない。
「っ!!」
何度か攻撃をするが怯む様子すらなく何本かの足でセツナとライゼを同時に床に叩きつけた。そしてその足で何度かセツナの体を突き刺す。
「し...しょ...」
倒れている2人を見てライゼを選び腹に足を突き刺して持ち上げる。突き刺している足や床に血が流れてくる。体に突き刺さった足は背中まで貫通しそこから今までとは比べ物にならないぐらいの血が流れてくる。
「うぐあっ...」
その足を引き抜くと血溜まりができるほどの量で急所を外しているようでまだ息はある。トドメと言わんばかりにもう一度鋭く尖った足を振り上げてセツナに向かって降ろそうとする。
「この!!」
「師匠!!」
ライゼが割って入り頭の上で金属のグローにをはめた両腕で鋭い足を攻撃を受け止める。だがそう長くは持たず押し負けそうになる。
「し...しょ!!っ...このままじゃ...!師匠が!!!
セツナは剣を握りしめる。またあの時のようになるのか?いや、目の前でまた失うのならばいっそのこともうなってしまったほうがいいのかもしれない。体から吹き出している血を手につけてその血を剣に拭った。
「セ...ツナ?」
その瞬間セツナの頭にツノと背中には竜の翼が生えてきた。そして腕や顔には竜のような鱗に覆われる。そして手にはオレンジ色の竜の顔を模した紋章が浮き出てくる。
「これは...竜天魔装」
ライぜはその姿にそう呟いた。




