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2話『 白き猛獣 ホワイトウルフ 』

セツナは冒険者が集う会場に入ってすぐ近くにある依頼の書かれた紙が貼ってありボードへと向かう。今日もたくさんの紙が貼られていて自分が受けれそうなものを探す。


「おいあいつ...」

「パーティから追い出されたらしいぞ?」

「まじかよダッセェな。なんであんなのが冒険者やってんだか...」


後ろからはクスクスと笑い声が聞こえてくる。だがそんな声すら無視してセツナは依頼を探す。


「おい」


突然後ろから声をかけてくる者がいた。それはなんだかいかにも悪そうな感じの男達だった。明らかにセツナに面倒な絡みをしてくるだろうというのはすぐにわかった。


「なにか?」

「お前みたいなのが何でここにいるんだ?遊び場じゃねえんだぞ?」

「あなたには関係ないでしょ」


絡んでくる男達を冷たくあしらうと突然そのうちの1人がこんな事を言い出した。


「そうだ?一つ勝負をしないか?」

「勝負?」


セツナは「馬鹿馬鹿しい」と言って聞く耳を持とうとしない。だが男達は勝手に話を続ける。


「ここから少し行ったところに洞窟があって、ホワイトウルフという魔物が住み着いてるんだ。それを討伐してきたら、君の勝ちだ」

「ホワイトウルフを..?」


ホワイトウルフといえば先ほどライゼが戦っていた大きな狼の魔物だ。到底セツナが倒せるような相手ではないのだが、もちろんセツナもそれはわかっている。


「勝手にやってれば?」

「お?逃げるのか?」そうかーお前がそうならお前の師匠も同じぐらい腰抜けだったのかねえ」



その言葉にピクッと反応して立ち止まる。それを見て男達はニヤリと不気味に笑っていた。


「なんであなたが師匠を?」

「師匠?セツナにも師匠がいたのか?」

「そんな事いいじゃないかーそ・こ・で・だ。ホワイトウルフを倒すってのはどうだ?まさかできないなんて言わないよなあ?」

「わかった!受けてやるわ」


そう啖呵を切って集会所を出る。うまく口車に乗せることができた男達はニヤニヤと笑いながらセツナを見送った。


「計画通りだ。あとはあいつがボコボコになって帰ってくれば...」

「ああ。あんなやつが勝てる相手じゃないからな。それで心を折れてやめればあの人の計画通りに...」


見送りながらもそんな話をしていた。




「ここね」


セツナがホワイトウルフを探してたった一人でやってきた場所は、ゴツゴツした岩場だ。茶色い景色に岩ばかりの場所で風景としては最悪だが魔物の住み着く場所としては良質だろう。


「さて、ホワイトウルフはどこに...」

「グルルルオォ!」


ホワイトウルフは探す必要もなくすぐ近くにいた。鋭い牙に白い毛並み、体はかなり大きく全長数メートルはあるだろうか。


「出たわね...」


そういながらセツナは両手の剣で何度か攻撃をするが、なかなかダメージを与えられない。ホワイトウルフの鋭い常による一撃を防御するが、その攻撃はかなりものでセツナは吹き飛ばされてしまう。


「っ!」


頭から血を流しながらももう一度攻撃をするが簡単に避けられ体当たりを喰らう。そしてすぐさま爪で体を切り裂かれた。

体から血を流しながらなんとか戦おうとする。こんなやつ1人で...そう思いながらも戦おうとするがもうフラフラで視界もぼやけている。


「このままじゃ...」

「グルルルルオオォ!」

「師匠をバカにしたあいつらを見返さないと...私が師匠と同じぐらい強くなって早くAランクに...!」


そういうもののもうフラフラとしていて戦いすらままならない状態だ。だがなんとか正気を保ちながらホワイトウルフをに立ち向かう。セツナは強ならなければならない。もうあんなことにならないように。


「はーっ!!」


そう言って剣を向けるが簡単に足で振り払われ地面に叩きつけられる。口から血を流しながら立ちあがろうとするがもう立つことすらできない。


「くっ...ごめん師匠...」


そう言いながらホワイトウルフが襲いかかってきたその時だった。ライゼの拳が勢いよく放たれた。


「あなたは!」

「この野郎!!」


そう言ってライゼは拳をもう一度振り上げる。そしてセツナに「来い!!」と叫び一緒に戦う事を促す。その言葉に勢いよく飛び上がり剣で一撃を加える。ライゼの補助もあり、ホワイトウルフは倒れて動かなくなった。


「ふう、決まったな」

「なんで!?私が倒そうとしたのにっ!」



そう言うセツナにライゼは「あのままだと君は死んでいたよ」と冷静に言う。


「私が倒さないと...意味がないのにっ!」

「ここで君が死んだら誰が師匠をバカにしたあいつらを見返すんだ!?」

「っ!?」


その言葉にハッとして目を逸らす。何も言い返せないセツナは黙ったままそこから少しの間何も言わなかった。少ししてこんな質問を投げかける。


「どうして...どうしてそこまでしてくれるんですか?」

「なんだろう...すごい気になるんだ、君のこと。言葉では表しにくいけどこう...ね」

「そう...なんですか」

「どう?一緒に来ない?」

「...わかりました」


了承したセツナにライゼは少し嬉しそうな顔になってそうか、とだけ言った。


「そうだ、いちいち敬語使うのもあれだし普通に喋ってくれ」

「わかりま...じゃなくて、わかった」

「さ、あいつらにホワイトウルフを倒したって報告を...」


そう言うライゼにセツナは「その必要はない」とだけ言った。


「私が1人で倒したわけじゃないから...」

「まあそうだな」

「でもありがとう。守ってくれて師匠」

「し、師匠?」

「今日から師匠!


その「師匠」という言葉にまんざらでもないライゼに、セツナは少し早足で少し先を行った。




「どうだったあ?」


集会場に戻るとホワイトウルフ討伐の勝負を仕掛けた男達がニヤニヤとしながらセツナにそう問いかける。そしてセツナがダメだったと言うと「やっぱりかあ」と言って笑い出した。だがその反応にすら気にする様子はない。


「いつかは倒すから」

「はあ?お前がか?」

「もちろん」


その言葉に男達は大笑いした。だがライゼがそばにいるセツナにはそんな程度では全く動じない。


「お前みたいなのが勝てるとでも思っているのか?」

「勝手に言ってれば?こんなところでそんなこと言ってる暇があったら依頼の一つでも受けた方がいいと思うけど


そう言ってセツナは集会場を出る。バカにしたつもりが全く効いていなかったセツナを見て男達は少し恨めしそうな顔をしていた。


「っ...調子に乗りやがって...今に見てろよ?」




とある洞窟の奥で何かが蠢いていた。暗がりに赤い眼が何個も光っている。そこにいたはずの魔物の姿は確認できずその蠢く赤い眼の魔物の前には魔物が山積みになっていてその魔物がバリバリと魔物を平らげていく。そして「ギュオオオオオオオオ」というおぞましい雄叫びをあげた。

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