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3話『 洞窟に潜む怪しげな影 』


「行くぞセツナ」

「うん」


そう言ってセツナは両手に剣を、ライゼは拳に鉄のグローブをはめる。そして少し見合った後お互いに勢いよく駆け出してお互いに剣と拳をぶつけ合った。


「はっ!」

「いいぞ!!」


激しい金属音がしてセツナが剣を振る。ライゼはそれを簡単に避けて片方の剣を拳で弾き飛ばした。負けじとセツナももう一方の剣を両手で握って勢いよく振り下ろす。


「甘いな!」


そう言ってライゼはまたもう一本の剣もそのセツナの剣を横に避け目の前にまで拳を突き上げた。その衝撃でセツナは尻餅をついてしまう。



「やっぱり師匠はすごいや。全然勝てる気がしない」

「こうやって剣を弾くことができるんだ。まあ使える相手は限られるけどな」

「師匠はすごいなあ。Aランクだもんね」

「セツナもそのうち強くなるさ」


模擬練習を終えた2人は草原に腰をかける。気持ち良い風が2人に吹きつけてくる。


「なあ、セツナ」

「なに?」

「死んだ師匠ってのは...?」


ライゼはそう話を切り出した。それに対してセツナは「それは...」と少し口籠る。


「いや答えたくなければいいんだ」

「いや、大丈夫」


少し間を空けてセツナは昔何があったのかをその昔、セツナには師匠がいた。


「おいおい竜鬼(ドルム)だぜえ?」

「本当だ、何でこんなところにいるかなあ?存在が邪魔なんだよ!」

「ああ」


まだ幼いセツナにそう言いながら男達が詰め寄ってくる。その時声をかけてきたのが師匠、エノンだった。


「おいおい、弱いものいじめかあ?情けない」

「なんだあ?お前ら」


そう言って威圧する男達に屈することなくエノンは余裕そうな顔をする。それを見て男達は舌打ちをして去っていった。

エノンは優しく接し、セツナに戦い方を教えてくれるし食事も作ってくれる。今までとは違う対応でセツナも気を許していた。



「セツナはどんな人になりたい?」

「とっても強い人!この差別がなくせるぐらいの!」


エノンの質問にセツナは元気よく答える。それに対して「きっと君ならできるよ」と笑顔でセツナの頭を撫でた。こんな生活がずっと続くと思っていた。


「師匠!エノン師匠!!」


ある時、街に何かが襲撃し街が崩壊した。それを見たものはほとんど死に絶え、正体何だったかすらわかっていない。周りには完全に破壊され燃え上がるかつては街だったであろう瓦礫の山の姿。セツナはは目の前で血まみれで倒れている師匠の姿を見ながらその名前を叫ぶ。


「私のせいだ...私の...」


セツナは自分がもっと強ければ...もっと自分の事を...そう思いながら拳を握りしめた。




「そんな事が...」


その話を聞いたライゼはそれだけを言う。


「だから強くならないといけないの」

「そうか、なら協力をしないとな!セツナのために!」

「ありがとう師匠」

「さて、依頼を受けるか!」

「ねえ、その前にアプル買おうよ師匠」


セツナはそう言ってアプルを指差す。店に立っていた昨日助けた果物屋の男は何も言わずに茶色い袋を出しアプルを黙々と入れる。そして個数通りのセツナにお金を提示してそれを受け取った。


「あれ?」


セツナは一つアプルが多いことに気づく。それを言うと果物屋の男は「間違えたかなあー」と何だかわざとらしく言う。


「まあいい早く持ってけ。竜鬼(ドルム)と会話してると変に思われる」


そうは言うが明らかに前と態度が違う。前ほどの嫌悪感がないのだ。


「もしかしたら簡単に願いが叶うかもな」

「うん!」


アプルを受けとり去ろうとする2人に果物屋は「本当に、ありがとうな」と漏らした。そんな話をしつつ集会場に着き中に入る。


「さて、どの依頼にしようか?」

「うーん」


ライゼとセツナは2人で相談しながら集会場のボードを眺めていた。そこには薬などに使われる野草を探すものからスライムなどのオーソドックスな魔物を倒すもの、ドラゴン退治なんてものもある。


「うーん」


セツナは迷いながらボードを眺めている。基本的に依頼は簡単そうなのを選び基本的にセツナにやらせライゼは手出しをしないようにしていた。何かがあればセツナを助け、その依頼は失敗扱いとする。


「おいおい、竜鬼(ドルム)が依頼受けてるぞ?どうせ無理だって」

「ああ、冒険者なんて向いてねーんだっていい加減気づけよ」


そんな言葉を無視してまた依頼を探す。セツナが受けれそうなものは一つしかなく、洞窟での魔物退治だ。その受け付けに出し了承をもらうと紙を持って集会場を出た。





その洞窟は街から少し行ったところにあった。中は薄暗く不気味な感じだ。ライトという小さい灯りを照らす魔法をセツナが使い中を進む。


「おかしいな」


しばらく進んでいると、そう言いながら辺りの異様な光景を見ていた。そこにいるはずの魔物がいないのだ。普段ならコウモリや蛇の魔物などがいるはずなのだが、全く気配すらしない。ここまでいないのは異様なぐらいだ。


「どうする?戻るか?」

「うーん」

「この感じでは目的の魔物もいないな」

「じゃあ戻ろ」

「そうだな」


ライゼ達は引き返すことにして入り口に戻った。


「何だよこれ!」


その光景にライゼは絶句した。入り口は崩れて入り口が塞がっていた。明らかに何かの手によって崩された形跡がある。


「おい!何だこれ!」

「通れない!」

「一体何で...!」

「どうしよう師匠!?」

「奥にもう一つ出口があったはずだ。そっちに行こう」

「そんなのがあったんだ」

「一部しか知らないけどな」



しょうがなくそのもうひとつの出口をしばらく進むがやはりというべきか魔物の姿は一切いない。少し慎重になりながらも進む。途中で日差しが入る少し大きめな部屋を見つけた。


「天井が空いているのか」


そこは天井が円形に空いていてそこから日差しが出ていた。だが空でも飛べないとポッカリと空いている天井からは脱出することは不可能だろう。


「あっ」


しょうがなく先を進んでいる途中でセツナの魔力がなくなり明かりが消えてしまう。なんとか暗闇に目を慣らしてきたのでそのまま進んだ。


「グオオオオオオオオオ!!」


その時、おぞましい雄叫びが聞こえた。雄叫びを聞いた瞬間、セツナ等はゾクっと嫌な気配を感じ、頭に危険信号のようなものが鳴り響いた気がする。「ここから早く離れろ」と。


「何これ!」

「おいセツナ!やばいぞ!」

「え?」


すごく嫌な感じを感じとって早く逃げよと促す。だがそのけたたましい声が叫ばれるたびにそれはどんどんとおおきくなる。


それと同時に向こうから何かの足音が聞こえてくる。その音はかなり早くどんどんと近づいていく。おそらく速さ的に逃げ切れないと判断したライゼは近くの岩場に隠れて様子を伺うことにした。しばらくしてその姿が現れる。


「うそ...なんで??」


その姿を見てライゼはそう言った。そこにはライゼ達の数倍の大きな蜘蛛がいた。その蜘蛛にライゼは「厄災...ヴェノジリア」とだけ呟いた。





「今頃困ってるだろうなあ」

「ああ」


集会場で男達はそう話し合っていた。この男達はセツナにホワイトウルフを倒すように仕向けたした男達だ。


「今頃入り口が塞がれて脱出できないのだろう」

「いい気味だ」

「でもあの人の『あいつを冒険者辞めさせろってどういうことなんだろうなあ?」

竜鬼(ドルム)自体はバカにしてやりたいがあの人はなんていうかこう、そういう感じじゃなかたんだよな?」

「まあいい。炎の魔法で入り口の岩を塞いだんだ、もう脱出は無理だろう...」

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