19話『 闇世界への誘い 』
「は?セツナのせい?何を言って...?」
「あれ?何も答えないねえ?そりゃあそうか!事実だからね!」
「っ...!」
セツナが否定しないという事は事実なのだろう。だが一体何が何だかわからないライゼはセツナに呼びかけるが下を向いたまま全くと言っていいほど何も答えない。
「おいセツナ!」
「あのヒョウカだっけ?あの竜鬼の 竜天魔装が暴走した時思い出したんじゃないか?自分が同じようなことになったあの事をねえ」
セツナはヒョウカが暴走した時からなんだか様子がおかしかった。それは自分が同じような状態で街を一つ破壊して前の師匠を死なせたためだったのかとライゼは初めて知った。
それと同時にセツナのことを何も知らない自分に腹が立った。
「あの日、あの街は普通だった。君が来るまではね...」
「やめて」
「何の拍子かは知らないけど、 竜天魔装が暴走した、あのヒョウカとかいう女の時みたいにね」
あの時は凄まじいほどの凍てつく冷気が当たりに吹き荒び、ヒョウカも我を失いとにかく周りにいるものを全て破壊し尽くさんという勢いで襲いかかって来ていた。だがあの時は直前にセツナとの戦いがあり消耗していたこともあり何とかなった。
「いやあ逃げるのが大変だったよ。周りの全ての建物も人間も全て滅ぼす勢いでねえ!そこで止めたのが君の師匠ってわけだ」
「やめて...」
「でも健闘虚しく死んでしまった!惨めだねえ!弟子の暴走一つ止められないなんてねえ!」
「うるさい!!黙れ!!」
どんな罵倒ですら気にしていなかったセツナが声を荒げる。それを聞いてシュンギルは「少しは僕に興味を持ってくれたかーい?」とヘラヘラしながら言っている。
「そういえばセツナ最初に会った時に 竜天魔装を使いたがらなかったな。 竜天魔装を使えばもしかしたらあのヒョウカみたいなことになるかもしれないって恐れて...」
「おやおやそんなことがあったんですか。これは美しい心の闇が見れそうですねえ。というわけでこちらに来ませんか?」
突然の提案にシュンギルも驚いた顔になる。もちろんライゼも突然何を言っているのかとへントールの方を見る。
「一体何を言い出すんだい?ヘントール
「あなた達竜鬼はどちらかというと魔物側じゃないですか」
「私は...」
「冗談じゃない。この悪魔教のシュンギルは君を叩き潰さないと気が済まないんだよねぇ!前までは人間側だったから化け物の君が邪魔だったけど、今はもう違う」
「セツナ!こんな奴らに惑わされるな」
そのライゼの言葉にも何も言わなかった。やはりあの時の事が忘れられないでいるのだろう。
「私は...私は...」
その時ラグナが勢いよく割って入って来て攻撃をしかけて来た。その攻撃にセツナもヘントールも咄嗟に鉤爪の一撃を避ける。
「竜鬼!お前やはりこいつらと!!」
「違っ!!」
どうやらセツナをへントール達の仲間か何かだと勘違いしているようで、すごい形相で睨んでいる。
「お前達全員この手でぶっ潰す!絶対に!」
「あらあら、面倒なのが割り込んできましたねえ。退散するとしましょう」
「待て!」
セツナが追おうとするがラグナが「まずはお前から!」ここで!」と言いながら立ち塞がる。
「セツナ!」
「ぐぐっ!」
「ダメだ...あいつから攻撃を受けていてそれどころじゃない...だがあのヘントールって奴も追わないといけないし...ああしょうがない!!」
ライゼはセツナが心配で色々と聞きたい事は山ほどあるが今はそれどころじゃない。あいつを逃して終えば大変なことになるだろう。ライゼはヘントール達を追う事にした。
「お前を先に潰してそれからあいつらだ!」
「くっ!!」
鉤爪で何度の攻撃をしてくるのを剣で防ぐが何度も来る攻撃に防戦一方を強いられてしまう。
「くっ!」
「魔物は全て排除するのみ!」
防戦一方のセツナはなんとか突破口を開こうと隙を窺うが鉤爪による攻撃の速度が速くなかなか攻撃する隙を生み出す事ができない。
竜天魔装を使えば攻め入る事はできるが、シュンギルにあんな事を言われてしまえば発動するのをためらってしまう。
「魔物のくせに人間の世界に入ってるんじゃねえ!この化け物が!!」
「っ!!」
その言葉に少し動揺してセツナは一撃を喰らってしまう。体に爪痕がついてそこから血が流れてくる。
「ぐっ...」
「化け物のくせに俺たちと同じ血が出るのか...?」
「うるさい...!あんたに何が...!」
「裏切り者の化け物如きが口答えするなあ!!」
セツナの剣とラグナの鉤爪が鈍い鋼の音を立ててぶつかり合う。
「はーっ!」
「っぐっ!!」
「さあ!償え!!魔物と共に死という名の懺悔をしろ!!」
「うるさい!!」
セツナも攻撃を仕掛けるが後ろに下がりながら攻撃を避けていく。
「何があなたをそこまで駆り立てるの?」
「妹のために...絶対魔物を潰す!全て!街を...妹を奪ったた原因の魔物を全て...!」
「そんな...!」
「あの時 魔軍侵攻さえなければ...あんな事には...!」
*
「俺たちだってあんなやつの力なんぞ借りなくても...!」
そう言いながら魔物を倒しながらアーレット達は木々の間を抜けて歩いていた。すると向こうに白い何かが見えてくる。それはホワイトウルフだ。1匹だけで他に魔物の気配はない。それを見たアーレットは少し嬉しそうに笑う。
「アーレットあれって...」
「ああ、さっきあいつが倒したのと同じホワイトウルフだ」
「まさか挑むんですか?」
「さっきは少し油断したがの役立たずのセツナが倒せるようなやつを俺たちが倒せるわけないだろう?」
「それは...」
「行くぞ!!」
そう言ってアーレットはホワイトウルフに向かう。まずはケーリッヒが魔法で炎の玉を何個も繰り出し牽制する。そしてレレナが周りを走り回り攻撃を避けながら隙を見て拳を足めがけてお見舞いする。レレナの攻撃で体制を崩したホワイトウルフにアーレットがトドメと言わんばかりに剣で一撃を加えた。
「どうだ?」
「グオオオオオオオオ!!」
「全然効いてないわよ!」
効いているホワイトウルフは雄叫びを上げながらレレナに鋭い爪で攻撃を仕掛ける。それを腕を使って軽減しようとするが大きく吹き飛ばされてしまう。
「レレナ!」
「グオオオオオオオオ!」
続いてアーレットに攻撃を仕掛け、剣で弾き返そうとするがその重い一撃を簡単に弾くことができなかった。
「ぐぐぐ...」
「アーレットさん!」
ケーリッヒそう言って今度は氷の氷柱を放つが左右にひょいひょいと避けられあっという間に距離をつめられる。
「あ...あ...」
そう言いながら杖を構えながら戦意喪失するケーリッヒだったが突然ホワイトウルフは悲鳴をあげて倒れた。そこには魔の翼のリビアとガウスの姿があった。
「なんでこんな雑魚如き倒せねーんだ使えねー奴らだ。チッ、あの雑魚そうな竜鬼のガキですらホワイトウルフ3匹倒せるってのによ」
「おいおいガウス、人に文句言うならお前が働けよ」
「うっせーよリビア。お前も働け」
「えー面倒なんだもん。そもそもお前がいれば全員倒せるっていうのにさ」
「こんな雑魚相手にしたって面白くねーよ」
セツナの話が出たアーレットはぐぐ、と歯を食いしばった。
「セツナでも勝てるだと...?ふざけやがって...!なんであんな役立たずが倒せて俺たちが倒せないんだ...!」
「きっとあいつ何か卑怯な手を使ってるに違いないわ!」
「ああ、きっとそうだ!そうに違いない!」
「お前ら本当にそんなバカな事言ってんのか?」
その会話に割って入ってきたのはリビアだ。
「少し見てたがあいつはかなり実力があるぞ」
「リビアてめえ魔物討伐サボってそんなことしてたのか!」
「まあまあそれはともかく、あのセツナって竜鬼がお前達より強くなったって考えないのか?」
「それは...」
「雑魚らしい考えだ」
アーレットは認めたくなかった。自分より下だったセツナが上にいることなどあり得ない、いやあり得てはならないのだ。
「く...そんなはずはあり得ない!!」
そんな話をするアーレット達を向こうから不気味な笑みを浮かべて見ている者がいた。
「ゲゲ...獲物、見ツケタ!!」




