16話『 動き出した陰謀 』
「なあ、セツナ」
竜鬼達との戦いから数日後、セツナと歩いていたライゼはそう声をかけた。
「セツナあの出来事から少し様子がおかしくないか?」
「えっと...いやそんな事ないよ」
そうはいうが明らかに様子がおかしいのだ。元気がないというか、暴走したヒョウカの姿を見た時は何かのショックを受けていたような顔をしていた。
「なあセツナ...えーっとその」
「何?師匠」
「いや、なんでもない」
聞こうにもなかなか切り出すことができない。あの表情はトラウマを呼び起こされた時のようでを、なんだかセツナに嫌な事を思い出してほしくないというのもある。
それから少しの間の歩く間は無言が続き少し気まずい状況が続く。
「おいお前」
「ん?」
その時その気まずい状況を打ち破るかのように後ろから誰かが話しかけてきた。そいつはセツナと同い年ほどの10代半ば、背丈もそこまでで、短い髪に少しばかり猿のような顔と腰には短剣を刺している。
「なにか?」
「こいつが竜鬼かあ、初めて見たなあ」
そう言いながらその男はジロジロとセツナを見ていたが突然「よしっ!」というような声をあげた。
「お前をパーティに咥加えてやる!」
「はあ?」
「そうだろうそうだろう!嬉しいだろう!」
「一体何を言って...」
「まー遠慮するな!俺たちのパーティは最強...になる予定だからな!」
そうその男が勝手に決めていると、後ろから男より少し背の高いピンク髪の女が近づいてきて、男の頭に勢いよくゲンコツを喰らわせた。女もおそらくセツナと同じぐらいの歳だろう。こちらは背中に杖を刺している。
「いったあぁ!!」
「アンタ何やってんの!」
「おいナズナ!痛えじゃねえか!」
そのナズナと呼ばれたピンク髪の女は男の頬を勢いよく引っ張る。
「セリ!アンタ何人様に迷惑かけてるのよ!ごめんなさいね!こいつこう見えて変な奴だけどヤバいやつじゃないから」
「てめえ!誰が変なやつだ!」
「あ!ん!た!よ!!あんた!この竜鬼の子怖がってるじゃない!」
「お前にビビってるんだろ?暴力女だし」
そのセリの言葉にナズナはまた追加で3発ゲンコツを加えた。
「いってえなあ!」
「アンタのせいでしょ!」
この夫婦漫才みたいなくだりを延々聞かされたセツナとライゼは口をぽかんと開けながら2人を見ているだけだった。
「私はナズナ。で、こっちのめんどくさい絡みをしたのがセリ。私たちBランクの『春七草』って言うチームで組んでるの」
「そうなんだ...」
「なあ、お前の奢りでなんか食いに行こうぜ!
「コラっ!」
唐突に図々しい願いをしたセリにまたゲンコツを加える。
「ごめんねー、こいつこういうやつなの」
「お前の凶暴性の方がヤバいと思うが...」
その言葉にナズナは睨みを効かせる。それを見てセリは小さく「おー怖い怖い」と呟いた。
「おい、あいつ竜鬼と仲良くしてるぞ?」
「まじかよ...あんなやつと仲良くしてるとかあり得ないだろ」
そんな事を向こうでコソコソと話しているのが聞こえてくる。それを聞いてセツナは少し申し訳なさそうな顔になるが、セリもナズナも気にしている様子はないようだ。
「おいなんか言ってんぞ」
「あー気にしない気にしない。誰と絡むかは私たちが決めるんだから」
「ああ、そうだな。モブどもの戯言なんて俺達は興味なんてない」
「ねえ!どっか行こうよ!」
「ええと...」
誘いに困惑するセツナにライゼは「大丈夫なのか?こいつら?」と問いかける。
「あのシュンギルとかいう奴みたいな事に...」
「うん...」
「お金なら大丈夫!セリが全部出してくれるから!」
「はあ?俺が出すのかよ!!」
「当然でしょ!?あなたが変な絡みしたんだから!」
「そんなあ」
「ねね、いいでしょ?」
ナズナは半ば強引にセツナをひっぱつようにえ連れて歩き出した
「ねねあの店行こう!私ああいうの食べた事ないんだ!」
「おい!マジでいくのかよ!...ってん?」
セリは向こうで何やら怪しげな人物が人のほとんど通らない裏通りへと行くのが見えた。真っ黒なローブであからさまに怪しすぎる。
「お前らちょっと待っててくれ、すぐ戻る」
その露骨すぎるほど怪しげな人物が気になったのかセリとセツナを置いて後を追った。そして後ろから「おい!」と声をかける。そいつはこちらを向くが顔はフードで隠れていて見えなかった。
「お前、悪魔教か?」
「...」
その質問にその怪しい人物は何も答えなかった。悪魔教は最近世間を賑わせている恐ろしい集団だ。人体実験や禁じられている悪魔を造り出す事などをやっている危険な集団だ。
「ねえセリ!」
「ナズナか。おい見ろ!怪しいやつを発見したぞ!悪魔教かもしれない」
「悪魔教ってあの!?」
「捕まえればたんまり報奨金がもらえるって話だろ?」
「本当にそうなの?」
「...違う」
その怪しい人物はやっと口を開いてそう否定する。
「違うってさ」
「怪しさだけなら満点なんだけどなあ」
「アンタ怪しさだけで疑ったの!?」
「だってあんな奇妙な格好してりゃ疑いたくもなるだろ!」
「もうちゃんと謝って!」
「わかってるよ...ってお前は母親か!」
そんな話をしているとそのローブの人物は「匂う」とだけ言った。
「え?」
「魔物の匂いだ。俺の嫌いな...魔物の!」
「おい...アイツなんかヤバいぞ!」
「魔物は...ぶっ殺す!全て!!!関係するやつも!!」
そう言って怪し気な人物は腕に嵌めた3本ほどの尖った鉤爪で襲いかかってきた。それをナズナの腕に嵌めた鉄のグローブで受け止め、後ろからセリが風の魔法で攻撃を放つ。だがそれを凄まじい跳躍力で飛び上がることで避け、そのまま2人に突撃した。
「空中じゃ魔法は避けられないだろ!?」
そう言ってセリは氷のつぶてを5つほど生み出し放つが簡単に避けられ2人を勢いよく切りつけた。
「ぐっ!」
「なっ!?」
そのままもう一度攻撃を仕掛ける。ナズナが防御体制になるが、素早い動きで後ろに回り込み鉤爪を体に刺した。
「ナズナ!この!」
そう言ってセリは魔法を放とうとするがそれよりも早く動いてセリにも鉤爪で体を刺した。
「これで終わりだ!」
そう言って鉤爪を抜くと血が飛び散り血が伝う。そのままもう一度怪しい男が2人にトドメの攻撃を仕掛けようとした時鈍い音と共に何かに邪魔をされた。それはセツナの剣だった。すかさずライゼの拳も加わるが察知されたのか簡単に避けれる。
「2人とも大丈夫!?あなた何を!?」
「ちっ」
少しばかり大暴れしたからか裏路地の不審な動きに向こうからギャラリーが集まってくる。まずいと思ったのか、怪しげな男は逃げて行った。
*
街のかなり遠くから小さく消える街を見ているものがいた。ヘントールとゲゲルだ。
「腹!ヘッタ!ヘッタ!」
「ゲゲルさん落ち着いてくださいもうすぐいっぱい人間が食べられますから。我々悪魔教の教えと共に」
「我慢デキナイ!」
「あの竜鬼共は取り逃しましたがまあいいでしょう。せっかく闇が深そうな面白い人材だったのですが...おっと!準備をしておかないといけませんね。これから始まるのは魔物達の進軍、 魔軍侵攻...」




