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1話『 嫌われ者の少女と透明人間 』


「ふわーあ...よくねたあ!!」 


ライゼはいつものようにベッドから起き上がり、伸びをした。歳は40ほどで口や顎に髭を蓄えたいかにもおっさんと言う感じだ。

ライゼは魔物を倒すのをなりわいとする冒険者という仕事をしている。その冒険者にもDからSまでランクがあり、Aランクの冒険者で腕はかなりのものでそこそこ有名なほどだった。


「さて行くか!」


そう言って外に出たライゼは冒険者の集まる集会場というところに向かった。その向かう途中、肩がぶつかり「あっ!」という声が出る。


「すみません!!」

「...?」


そのぶつかった男は何だか不思議そうな顔をしている。聞こえてなかったのか?聞こえる声で発したはずだが...などと考えていたがまた歩き出す

しばらく歩くと木でできた大きな建物が見えてきた。ここが冒険者の集まる集会場でここで依頼を受けたり報酬をもらったりする。


「さて」


そう言いながら中に入り、右側に見えるボードに目をやる。ここに貼ってある紙を受け付けに渡せばそこに書かれた依頼が受けられる。



「これにするか」


紙を1枚取り、受け付けに持っていきそれを出す。だが受け付けのお姉さんは不思議そうな顔をしてそれを手に取り元の場所に戻そうとする。


「何でここのあるのかしら?」


そう受け付けのお姉さんが不思議そうな顔をしながら紙を元の場所に戻しに行った。ライゼは「ちょっと!」と言うが全く相手にすらされない。


「なんだ..?」


不思議そうに紙をもう一度カウンターに出して「これ受けたいんですが」と言ったが結果は同じだった。ライぜh諦めて集会場を出た。


「一体何が...?」


集会場をでてため息をつきながらそう言いながら近くの白い石でできた丸い噴水に腰掛けた。噴水から水が勢いよく吹き出していて水しぶきがこちらにも降りかかってくる。


「はー、一体何がどうなってるんだ?本当に意味が...ん?」


ふと水に映った自分を見ると違和感の正体がわかった。そこには水に映ってはいないのだ。体を触ると確かにそこには自分の体や手がある。それはまるで透明人間というやつのようだった。


「だからみんな気づいてなかったのか」


そう言うが今の笑える状況ではなくため息をついた。透明ならこれでは依頼も受けられないのでお金を稼げない。透明なのでくすねることは簡単だろうが、それは人としてよくないので絶対にやらないと誓った。


「おせーぞ!」

「はい!」

「ん?なんだ??」


向こうからそんな声が聞こえてくる。そこに見えたのは男女が誰かを囲っているのが見えた。3人いて1人は金髪の男。1人はローブの魔導士風の男、1人はピンク髪のちゃらちゃらした女だ。


「本当使えねーなお前は!」


そう言って金髪の男が怒鳴る。その怒鳴っている相手は竜鬼(ドルム)だ。竜鬼(ドルム)という種族は八重歯や鋭い特徴的で、竜の血を持つ変わった種族だ。ここ種族は悪魔の使いだとか不幸を呼ぶだとかと言われて色々いる種族の中でも特に嫌われている。


「ねえアーレットォ、いつまでセツナを入れとくの?」


そう口を開いたのはピンク髪のちゃらちゃらした女。セツナというのは竜鬼(ドルム)の少女の名前だろう。その言葉にアーレットと呼ばれた金髪の男は不気味に笑みを浮かべる。


「そんなこと言ってやるなレレナこいつもここを追い出されたらいく場所が無くなるだろうからなあ?」

「ええ。こんな奴入れてやってるんだから感謝してほしいものよね!」


竜鬼(ドルム)は嫌われ者である以上、パーティに入れたいと思うことなどないだろう。だからいくら酷い扱いを受けても抜けようともしないのだろう。


「なんてやつらだ...!」

「まあいいでしょう。彼でまだ遊ぶことはできますし」

「遊ぶ..?あいつら何を言って...」

「そうねえ」

「よし、行くぞ」


そう言ってアーレット達が魔物にいる森へと出発した。最近竜鬼(ドルム)をパーティに入れてはひどい扱いをするものが増えていると言うのを思い出したライゼはついていくことにした。






アーレット達についていくと、草が絨毯のように生い茂る広めの草原に着いた。そこで複数の狼の魔物と遭遇する。


「よしいけセツナ」

「わかってる」


そのアーレットの言葉とともにセツナが率先して戦う。だが他の者たちは少し遠くで応援しているばかりだ。


「おい早く倒さないと負けちゃうぞ??」

「ほらほらあなた弱いんだからもっと頑張らないとダメよ!」

「ギャハハハハほーんと弱っちいんだなあ」

「だからこうやって鍛えてあげてるんでしょう?」


その光景はどう見ても鍛えているという風には見えなかった。むしろセツナは複数の魔物に苦戦していて、アーレット達はその光景をまるで見せ物のように楽しんでいるようだ。

本来この魔物は数が多く複数で戦うはずなのだがずっと見ていてもセツナという竜鬼(ドルム)1人だけで他は何もしようともなかった。


「ほら、次行くぞ!もっとお前を鍛えてやらないとなあ」

「...うん」


そう言ってフラフラとするセツナはもう戦える状況ではない。また同じ魔物を見つけると竜鬼(ドルム)の少女1人に任せて他の者達は見物をしている。


「あいつら1人で戦わせてなんて奴らだ!」


戦っていた竜鬼(ドルム)の少女はボロボロになりながらもなんとか倒したがその場に倒れてしまった。それを見てアーレットは「もういいや」とだけ言った。


「もういいや。お前で遊ぶのは飽きた」

「は?」

「お前はクビだ」

「は?それって...?」

「頭悪すぎて理解すらできない?」



クビ。その言葉に何もいえなかった。セツナはパーティから追い出される。だが他に行くところなど...。


「待って!でも...」

「そりゃあ竜鬼(ドルム)なんて嫌われ者、普通は入れたがらないわよねえ?だから何をされてもここにいるわけで」


竜鬼(ドルム)などという嫌われ者を入れるのはよほどの変わり者かこいつらように酷い扱いで弄ぶかのどちらかだ。竜鬼(ドルム)も入れてくれるだけでありがたいので何も言ない。


「...ひどい」


「グオオオオオオオオオ!!」


その時、唸り声と共にそこに白い大きなオオカミが現れる。それはホワイトウルフというCランクが複数人でも勝てるかわからないという魔物だ。


「ホワイトウルフ!?なんでこんなところに!!」

「どうするんですか!?」

「...っ!!ケーリッヒ!スタンだ!


スタンは一定時間対象者を動けなくする魔法だが、おそらくホワイトウルフに使っても数秒と持たないだろう。


「なるほど、そういう事ですか」


アーレットの意図を汲みケーリッヒはスタンを使う。だがそれはホワイトウルフではなくセツナだった。セツナはその場に動けず膝をついてしまう。


「っ!?なにを!?」


「お前の最後の使命だ。囮になれ。まあ運が良かったら生きてるかもな!じゃーなー!」


ホワイトウルフは動けないセツナに近づいていく。もうダメだ...そう思った時ライゼの一撃がホワイトウルフに直撃した。


「このクソ!」


そう言ってライゼは拳で何発か攻撃をする。ホワイトウルフは勢いよく襲いかかってくるが、それを避けてもう一発お見舞いすとホワイトウルフはその場に倒れて動かなくなった。


「これでよし」


そう言ってライゼは透明なのでどうせ見えないだろうしと、何も言わずに去ろうとした。


「あのっ!」

「え?」


それは確かにライゼに言っていた。こちらをじーっと見る目は人間より少し違うような気がする。


「俺が見えるのか?」

「見える...?」

「ええと....透明人間ってやつで...その、あー説明が難しいな!」


そう言ってライゼは頭を掻く。


「えっと... 竜鬼(ドルム)は特殊なのでそういうのが見えるというか...」

「そうなんだ」

えっと、助けてくれてありがとうございました。それじゃあ」


そう言って向こうへと行こうとするのを見て、咄嗟にライゼは「ねえ!!」と声をかけた。


「はい?まだ何か」

「一緒にパーティを組もうよ」

「はい?」


その言葉にセツナは困惑する。またあのような事になってしまう竜鬼(ドルム)をこのまま1人にしておくわけにもいかない


「わかりました。私はセツナって言います」

「俺はライぜっていうんだ。絶対君をを強くする!

「ああ別に敬語とか言わないから」

「わかった、これからよろしく」

「うんよろしく」


こうして2人はチームを組むことになった。

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