✒ あとのまつり 2
──*──*──*── 屋上
立ち入り禁止となっている筈の[ 屋上 ]には、良く知っている人物が立っていた。
[ 校庭 ]の方を見ているセロと弓弦さんの後ろ姿が視界に入る。
何故か2体のキノコンも居る。
厳蒔眞勇
「 弓弦さん! 」
弓弦
「 ──マオか?
久し振りだな。
元気そうか?
厳蒔眞勇
「 うん!
お蔭様で元気だよ。
弓弦さんも元気そうだね 」
弓弦
「 あぁ、玄武も元気にしている。
今日は珍しい格好をしているな 」
厳蒔眞勇
「 依頼を解決させる為に、この《 高等学校 》の生徒をしてて(////)」
弓弦
「 そうか。
マオは何を着ても似合うな 」
厳蒔眞勇
「 有り難う(////)」
厳蒔惷囹
「 無駄話は良い!
何で此処に弓弦が居るんだ?
玄武は来てないのか! 」
弓弦
「 玄武は宿泊している《 ホテル 》で宿泊客達を相手に囲碁の指南をしているが?
セロに呼ばれたのは私だけだ 」
厳蒔惷囹
「 やっぱり、セロフィートかよ!
おい、セロフィート!
弓弦を呼ぶつもりでいたなら、もっと早く呼べよ! 」
セロフィート
「 霄囹さんの都合等知りませんし 」
厳蒔眞勇
「 来てくれて有り難う、弓弦さん。
特異体質の怪異の相手をしてたんだけど、分裂するから全然終われなくて── 」
弓弦
「 ははは……。
私は新たに編み出した技を試してみたいと思っていた。
丁度良い機会を貰えて助かった 」
厳蒔眞勇
「 あ…うん──。
凄い威力と光景だよね…… 」
弓弦
「 どうやら法力を込め過ぎてしまった様でな──。
暫くは消えそうにないんだ 」
厳蒔惷囹
「 末恐ろしい奴め…… 」
セロフィート
「 結界の効果で外に被害は出ません。
弓弦さんの役に立てて何よりです 」
厳蒔眞勇
「 ところで……何でマオキノとセノコンも居るんだ? 」
セノコン
「 マオ様の勇姿を撮影していましたエリ 」
マオキノ
「 霄囹ちゃまのバトルシーンも確り撮影してありますエリ 」
厳蒔惷囹
「 撮影だとぉ?
どういう事だよ! 」
マオキノ
「 企業秘密ですエリ 」
セノコン
「 セロ様、キノコンを撤収させますエリ 」
セロフィート
「 宜しい。
弓弦さん、《 ホテル 》の[ 宿泊室 ]へ転移しますね 」
弓弦
「 あぁ、頼む 」
厳蒔眞勇
「 弓弦さん、もう戻っちゃうの? 」
弓弦
「 あぁ。
そろそろ、夕食の時間だからな。
今夜はバイキングでな── 」
厳蒔眞勇
「 そ、そうなんだ…… 」
弓弦
「 土産は玄武の転送陣で送るから、皆で食べてくれ 」
厳蒔眞勇
「 何時も美味しい御当地名物を有り難う 」
弓弦
「 玄武が張り切って選ぶんだ。
今回も多いかも知れないな 」
セロは古代魔法の転移魔法を発動する。
手を振ってくれている弓弦さんの姿が[ 屋上 ]から消えた。
厳蒔眞勇
「 戦力が行っちゃったな…… 」
厳蒔惷囹
「 確かに戦力なのは認めるが──。
どうするんだよ、アレは 」
厳蒔眞勇
「 『 法力を込め過ぎた 』って言ってたけど、本当に法力なのかな?
妖力の方だったりして? 」
厳蒔惷囹
「 有り得るな。
幻夢の作った呪靈を相手にお前の≪ ダンジョン ≫で修行してる時も有るみたいだからな 」
厳蒔眞勇
「 オレの≪ ダンジョン ≫なのに弓弦さんにも使われてるのぉ!?
知らなかったぁ~~ 」
セノコン
「 キノコンも弓弦様の修行相手に頼まれる時が有りますエリ。
≪ 和圀 ≫で暮らしていた時よりも、メキメキと強くなられていますエリ 」
厳蒔惷囹
「 そりゃ、覚醒したんだから強いだろうよ。
だが、本来の能力を取り戻した僕には敵わないさ! 」
厳蒔眞勇
「 そうかな?
弓弦さん、シュンシュンには絶対に手加減しないと思うんだよな 」
厳蒔惷囹
「 僕だって手加減しないぞ! 」
厳蒔眞勇
「 それよりさ、セロ──。
こんなに滅茶苦茶になっちゃったけど、どうするつもりなんだ?
古代魔法で元通りにするのか? 」
セロフィート
「 新しい《 学校 》を建てます 」
厳蒔眞勇
「 へ?
学校を建てる?
建て直すって事か? 」
セロフィート
「 一旦、更地にします。
地中に埋まっている多くの骨を掘り起こし、骨の回収から始めます。
供養をぬまま土地を売却し、《 高等学校 》の建設が始まりました。
良く有る事です。
この事も付け加えて番組を作ります 」
厳蒔眞勇
「 最もらしい理由だな。
それで祠の祟りの真実味を高めるんだな。
でもさ、本当に骨なんて出て来るのか? 」
セロフィート
「 昔は何処も戦場でした。
掘れば骨くらい出て来ます。
土に溶け込んでしまう骨も有りますけど、全ての骨が溶け込んでしまう訳ではないです。
無かった事にする為に、内密に捨てられてしまう場合も有るぐらいです 」
厳蒔眞勇
「 埋ってた骨を捨てるのか? 」
厳蒔惷囹
「 そりゃ捨てるだろ。
新しくない骨なら脆くなってる筈だから、砕いて土と混ぜて廃棄とかな。
警察なんか呼んでみろよ。
捜査が始まれば、工事は中断せざるを得ない。
時間が掛かると余計な出費が嵩むだけだからな。
信仰心の薄い建設業者ってのは、事件性を感じられない古い骨に関しては、見てみぬ振りをするもんさ。
比較的に新しい骨なら警察を呼ぶだろうがな 」
厳蒔眞勇
「 そ…そうなんだ……。
結構…罰当たりな事を平然としてるんだな 」
厳蒔惷囹
「 あのなぁ、信仰心の薄い奴は、抑 “ 罰当たり ” なんて発想をしないんだよ。
骨を見たって、ローストチキンに付いてる骨みたいな認識さ。
ゴミ箱に捨てるゴミと同等なんだ。
人間が何故、遺体を尊葬するのかすら知らないんだぞ 」
厳蒔眞勇
「 そうなんだな…。
宗教や信仰を金儲けの為に純粋な信者を利用して私腹を肥やしてる輩は “ 罰当たり ” って言葉は聞いた事は有っても、“ 罰当たり ” な事をしてる概念が欠落してるのか。
自分達が “ 神佛の信頼を裏切っていて、神佛を冒涜している ” って事にも気付けない残念な人達って事なんだな 」
厳蒔惷囹
「 そういう事さ。
自分が騙されている事実を認めれず、受け入れらず、騙され続けてカモられる人生を甘んじて謳歌してる被害者達が目覚める時が来れば良いが、“ 信じる気持ち ” ってのは時に厄介だからな。
盲信してる被害者を目覚めさせるのは至難だろうな 」
厳蒔眞勇
「 自分は “ 被害者じゃない ” って思い込んでる力が強過ぎるから、洗脳も解き難いって事? 」
厳蒔惷囹
「 洗脳じゃなくて、暗示だな。
盲信するあまり、知らず知らずに自分で自分に暗示を掛けてしまってるのさ。
暗示に掛かり易いなら催眠術にも掛かり易いんじゃないか。
催眠術を活用し、暗示を解いてやれば良いと思うねぇ。
上手くいくかは別として、盲信者から解き放てれば、“ 自分は被害者なんだ ” と自覚も出来る様になるだろう。
盲信者から晴れて卒業し、正常に戻れた被害者と共に被害者を救済する為の裁判を起こせば良いのさ。
まぁ、騙して金を集めるプロ集団を相手に素人が何処まで戦えるかは分からないけどねぇ 」
厳蒔眞勇
「 弁護士はプロだろ。
プロの弁護士を雇うんだから勝てるんじゃないか? 」
厳蒔惷囹
「 馬鹿だな。
金を溜め込んでる宗教団体だぞ。
顧問弁護団っていうプロフェッショナルな弁護士達を何十人も従えて囲ってるに決まってるだろ。
喜んで貢いでくれる盲信者が居なくならない限り、金は湯水の様にガボガボと入って来る宗教団体だぞ。
裏で何してるか分からんヤバい政治家とズブズブな友達関係を築いてる宗教団体だぞ。
素人が集まり、弁護士を雇い裁判を起こしたって、たかが知れてるのさ 」
厳蒔眞勇
「 そっか……政治家って必ず何処かの宗教団体に入団してる信者だったりするもんな。
入団してない政治家もいるだろうけど…… 」
厳蒔惷囹
「 あのなぁ、政治家が入団してる宗教団体を公にする訳ないだろ。
大っぴらにしないのは、“ ヤバい宗教団体だから ” って事を自覚してるから隠してるんだぞ。
当来佛が出生してない≪ 日本国 ≫に神佛の御意趣の的を射て、法時処才の四適に適う世直しに貢献が出来てるまともな宗教団体が存在すると思うか? 」
厳蒔眞勇
「 無いな。
神佛の説かれた正しい教えの内容を知ってるセロが総理大臣にでもならない限り無理だよな。
セロは総理大臣になったりしないだろうけど──。
でも≪ 日本国 ≫を手に入れるなら総理大臣になった方が近道だよな? 」
厳蒔惷囹
「 皇族が居るだろ。
天皇陛下を洗脳──はしないか。
天皇陛下は≪ 日本国 ≫に必要不可欠な最も尊く神聖な最高司祭って立場だろ。
天皇陛下の御先祖は、天照大神って呼称されてる神佛の方便身の直系って言われてるだろ。
神々を祀る神主として尊重されてる天皇陛下を洗脳して、≪ 日本国 ≫を牛耳ったりしたら、神佛の信頼を裏切る行為になるかもな。
──こ…これは面白い展開になりそうだなぁ、おい!!
そうは思わないか、マオ! 」
厳蒔眞勇
「 セロぉ~~。
シュンシュンがあんな事、言ってるけど良いのか? 」
セロフィート
「 ふふふ…。
言わせておきましょう。
此処には保育園から大学院へ上がれるエスカレーター式の《 学校 》を建てます。
共働き世代の両親からすれば、0歳から子供を放り込め──預けられる保育園は有り難い存在となるでしょう 」
厳蒔眞勇
「 放り込むって──。
まぁ、間違っちゃないと思うけどさ。
“ 預ける ” なんて子供を丸投げする親を正当化する為の言葉みたいなもんだしな 」
厳蒔惷囹
「 この高校の敷地内は《 高等学校 》にしては広いんだよな。
丁度良いんじゃないか? 」
セロフィート
「 教員と生徒が利用出来る専用の病院も建てます。
完成を楽しみにしていてください 」
厳蒔眞勇
「 結局はセロが得する結果になっちゃったな。
もしかして──、セロが考えた計画的な犯行だったりして? 」
セロフィート
「 マオ、酷いです。
まるでワタシを黒幕みたいな締め方をしないでください 」
セロは左右の眉毛を下げて、困った様な表情をしながらオレを見ている。
本当に困っているのか、オレには分からない。
何はともあれ、これで一件落着って事で良いのかな?




