✒ 傍観者達 6
──*──*──*── 体育館
[ 体育館 ]には未だ無事な生徒達が続々と集まっている。
シュンシュンとオレのクラスメイト達も[ 体育館 ]に避難していた。
厳蒔眞勇
「 無事な生徒達を[ 体育館 ]に集めて何する気なんだろうな。
助ける──とは思えないけど…… 」
厳蒔惷囹
「 犯人が姿を現したら、死乃人に生徒達を守らせてやる。
マオは魔法をブチ込んで殺れ!
生徒達は[ 体育館 ]の隅に集めてやるから、思いっ切りな! 」
厳蒔眞勇
「 分かった 」
暫くすると、[ 体育館 ]のスライドドアが自然に閉まる。
館内に「 キィィィィィン── 」とマイクの電源が入った音が響く。
壇上に誰かが立っている。
制服を着ている男子生徒だ。
見覚えの無い男子生徒は講演台に置いてあるマイクを使い、何かを喋り始めた。
生憎と何語を喋っているのか分からない。
厳蒔眞勇
「 シュンシュン、あれって日本語じゃ無いよな?
何処の言葉だろうな? 」
厳蒔惷囹
「 …………異形の言葉か怪異の言葉じゃないのか?
異形にも怪異にも特殊な言葉が多いからな。
何を言ってるのか僕にも分からん 」
喋り終えた男子生徒が徐に両手を「 バッ 」と広げると[ 体育館 ]の天井からミノムシ程の大きさの “ 何か ” が大量に落ちて来た。
女子生徒達から悲鳴が上がる。
シュンシュンが闇呪術で陰陽陣を出すと死乃人が出て来た。
[ 体育館 ]の床から召喚された死乃人達が、落ちて来る大量のミノムシっぽい “ 何か ” を払い退けては生徒達を守ってくれる。
オレはアミュレットの力を借りて、セロが得意な雷魔法を両手に纏わせる。
そのまま壇上に居る男子生徒へ向けて雷魔法を放つ。
講演台のマイクが音を拾い、男子生徒が舌打ちをした音が聞こえた。
オレの背後から声が聞こえる。
シュンシュンの声だ。
オレが講演台から離れると背後から式神が現れる。
右側の式神は男子生徒へ目掛けて、口から強力な光線を放つ。
左側の式神は男子生徒へ目掛けて、強力な連続蹴りを繰り出している。
何時もよりも殺気立っているのか、長年蓄積されたシュンシュンへの恨みつらみを一気に放出しているかの様に見えて、物凄くおっかない。
厳蒔惷囹
「 マオ──、奴を逃がすなよ!
氷漬けにして捕らえろ! 」
シュンシュンに言われて氷魔法を使う。
天井からと壇上からと氷魔法の鋭い氷先が男子生徒へ伸びる。
壇上も講演台もメチャクチャだ。
殺気立って興奮している式神達は、御構い無しに男子生徒へ無慈悲な攻撃を続けている。
シュンシュンに止める気配はない。
このまま攻撃を続けたら死んじゃわないか??
厳蒔惷囹
「 怒鬼,絶鬼──、来い! 」
シュンシュンが新たな式神を召喚すると、殺気立っていた式神が消える。
全身が燃える様に赤い物騒極まりない鬼と全身が真っ黒で白い毛を生やした貫禄の有る鬼だ。
≪ 日本国 ≫では御目に掛かる事の無い容姿をしているって事は、≪ 和圀 ≫に居る時にでも使役した妖怪なんだろう。
≪ 和圀 ≫に存在している怪異の類いってのは、マジでヤバいレベルなんだと改めて知った。
さっきの2体の式神よりも危険度が高いんじゃないのか??
鬼の容姿をしてるから余計にそう見えるだけかも知れない??
どちらの式神も鋭いトゲトゲの出ている鉄棒を持っている。
殺傷力が高そうな凶器だ。
厳蒔惷囹
「 おい、死にたくなければミノムシみたいなヤツを消せぇ!
生徒の首から離れさせろ! 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュン── 」
男子生徒
「 クックックッ──。
残念だがね、それは出来ない。
アレは蛭蛄と言って── 」
男子生徒の説明は以下だ。
生徒達の首に引っ付いているミノムシ程の “ 何か ” の名前は、“ 蛭蛄 ” と言って、人間に寄生し、異常行動をさせる生物らしい。
とんでもない生物だ。
下から細い管を脊髄へ伸ばして身体を操り、上から細い管を脳へ伸ばして脳ミソをチューチューと吸い、栄養分にして生きるんだとか。
無理矢理に引っこ抜こうとすると、細い管から毒を脳内へ注入し、寄生した人間をゾンビ寄りの死人へ変貌させてしまう。
変貌すると狂暴化して、人間を襲う様になり、人間を喰らうと孵化するんだとか。
だから、蛭蛄を無理矢理に引っこ抜くと大惨事が起き兼ねないから、現状はそのままにしとくしかない。
校内にバラ撒かれていていっぱいいるみたいだ。
因みにシュンシュンとオレは異形だから蛭蛄の寄生対象には入らないみたいで、被害を受けないみたいだ。
男子生徒が此処の《 高等学校 》を選んだ理由は特に無いらしい。
別に学校や生徒に対して恨みとかは無く、クジを作って選んだら、偶々この《 高等学校 》だっただけなんだとか。
人間側からすれば、頗る迷惑極まりない話だ。
因みに身体の持ち主である男子生徒は既に死んでいて、肉体を器として使っているだけらしい。
実はこの身体の持ち主──男子生徒の名前は枦芭渉と言って、1週間以上休学中だった、学級委員長である事が判明した。
因み序でに朝から姿を見ていない副学級委員の身体も既に、コイツの仲間が器として使っているらしい。
コイツ等は異形の一種で、魂の抜けた人間の身体に潜り込んで生きる種族らしい。
例の特異体質の怪異を生み出したのもコイツ等の仕業らしい。
怪異は操れないが、暴走した依り代に異形や怪異を喰わせては、数を増やしていたらしい。
特異体質の怪異は影の中に潜んでいて、【 プール集団溺死事件 】も【 屋上の集団首吊り自殺事件】も生徒達の上半身と下半身が壁に同化していた奇妙な【 集団壁同化事件 】も全てが、コイツ等のが関与していて、コイツ等が犯人だと判明した。
《 高等学校 》で好き勝手してくれた犯人は判明したけど──、残念な事に唯一特異体質の怪異の姿を見る事が出来るキギナが不在の状態だ。
肝心な時にキギナが居ないなんて、最悪過ぎる。
この場で男子生徒の身体を拷問して痛め付けても、息の根を止めて殺しても、身体を器として使っているコイツ等はダメージを負わない。
今のシュンシュンとオレには、コイツ等を倒す事は出来なくて──、コイツ等を捕らえる事しか出来ない。
《 高等学校 》の敷地内には、セロが古代魔法で結界を張ってくれているから、心配する必要は無いんだけど──、コイツ等が影の中に潜ませている特異体質の怪異が、《 高等学校 》から出て四方八方へ散らばってしまったら──って考えるとゾッとする。
コイツ等は、ある日を境に《 高等学校 》から出られなくなった事を不思議がっている。
オレがセロに泣き付いて、古代魔法で結界を張ってくれている事を態々教える必要は無いよな。
どうやら影の中を移動する特異体質の怪異も結界の外へは出られないみたいだから、古代魔法は凄いな。
男子生徒の身体から両腕と両足が無くなっていて、動けない状態になっていた。
両腕と両足は鬼の口の中に入っていて、式神の2体は今も口をクチャクチャとさせている。
まるでガムを噛んでるみたいだ。
男子生徒
「 《 高校 》の敷地内から出られなくなったのは大きな誤算だ──。
だが、この《 高校 》の生徒も教師も── 」
厳蒔惷囹
「 黙れ。
勝手に喋べるな 」
男子生徒
「 おぉ、怖い怖い──。
クックックッ── 」
厳蒔惷囹
「( チッ、完全に舐められてるな──。
どんなに強力な式神を出しても、制限されてる僕の法力では── )」
厳蒔眞勇
「 シュンシュン? 」
どうしたんだろう。
シュンシュンの様子が少し変だ。
何時もの生意気な余裕さが感じられない?
今のオレ達には出来る事が限られている。
これじゃあ、見てるだけで何もしない傍観者と同じじゃないか──。
何か──、何とか出来ないのかな?
キギナ──、何で今日に限って休んでるんだよぉ!!
オレは心の中で、天を仰ぐ。
セロ──、オレ達はどうしたら良いんだ?
◎ 訂正しました。
日本国語 ─→ 日本語
ミノムシっぽい “ 何 ” を ─→ ミノムシっぽい “ 何か ” を
鬼神 ─→ 鬼
使役 ─→ 使役
ミノムシみたいな奴を消せぇ! ─→ ミノムシみたいなヤツを消せぇ!




