⭕ 傍観者達 5
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 高等学校
──*──*──*── 教室
──*──*──*── ホームルーム・前
厳蒔惷囹
「 で──、結局どうするんだよ? 」
厳蒔眞勇
「 うん──。
昨日、セロに相談してみたんだ 」
厳蒔惷囹
「 はぁ~~?
結局、セロフィートに頼るんだな。
この依存者め! 」
厳蒔眞勇
「 うぐぅ──。
し…仕方無いだろぉ!
セロの方がオレ達よりも神佛の事に詳しいんだからさ! 」
厳蒔惷囹
「 そうだな。
それでぇ、お前のセロフィートは何だって? 」
厳蒔眞勇
「 それなんだけどな、祈祷でも御祓いでもすれば良いってさ 」
厳蒔惷囹
「 此方に丸投げかよ 」
厳蒔眞勇
「 違うよ。
祈祷でも御祓いでも良いから、生徒の自宅で済ませた後に、これを渡す様に言われたんだ 」
厳蒔惷囹
「 便箋が3枚か? 」
厳蒔眞勇
「 うん。
セロが今回の為に態々用意してくれたんだ。
1枚は生徒に。
もう2枚は生徒の両親に1枚ずつだってさ 」
厳蒔惷囹
「 便箋の中には何が入ってるんだ? 」
厳蒔眞勇
「 より良い未来に変える為に家族3人で協力して善を積む為の方法が書かれた処方箋だってさ 」
厳蒔惷囹
「 処方箋だって?
セロフィートは神佛と意思の疎通が出来る様になったのかよ!? 」
厳蒔眞勇
「 そんな訳ないだろ。
セノコンとマオキノも協力してくれたんだ。
生徒の自宅について詳細に調査してくれてさ、それを参考にして、セロが最もらしく処方箋を書いてくれたんだ 」
厳蒔惷囹
「 成る程ねぇ、諜報活動に長けてるキノコンに生徒の自宅へ侵入させ、盗撮,盗聴させて調達した赤裸々な情報が、てんこ盛りって事かよ。
恐ろしいねぇ~~ 」
厳蒔眞勇
「 お父さんに対しては、一家の家長として,父親として,夫として,男としての自己の住位と役目についてと、それを踏まえての今だから出来る善の積み方が書いてあるみたいだよ。
お母さんに対しては、家庭を守り支える嫁として,母親として,妻として,女としての自己の住位と役目についてと、それを踏まえての今だから出来る善の積み方が書いてあるみたいだな。
生徒に対しては、一家の長女として,娘として,女としての自己の住位と役目についてと、それを踏まえての今だから出来る善の積み方が書いてある。
時代も時代だし、受け入れ難い事や耳の痛い事も書いてあるみたいだから、処方箋を読んだ後、素直に信じて実践するかは本人達次第って事になるけどな。
何事も心が基だからさ、強制的に嫌々じゃなくて、自発的に取り組まないと意味無いし、効果も出ないからさ 」
厳蒔惷囹
「 あくまでも彼方さん次第って事か。
処方箋の実践を拒否ってしなかったら── 」
厳蒔眞勇
「 生徒さんの状態は益々悪化して、狂った矢先に精神病院行き確定だろうな。
家庭も崩壊に進んで、最後は一家離散しちゃう人生が笑顔でカムカムしてるかもだな。
選択と努力次第で運命は幾らでも変えて行けるから、希望が無いって訳じゃないけど──。
一家離散して家族がバラバラになって不幸になる未来を迎えない為にも、家族3人で協力し合って善を積み累ねて行ってほしいよ。
心が伴わない偽善を積み累ねても、功徳の貯金は出来ないけどさ──、流石に其処迄は言えないよなぁ…… 」
厳蒔惷囹
「 難しい問題だな。
偽善は所詮偽善だし、何処まで行っても偽善のままで、善には変わらないからな。
佛教を噛ってすらない奴に言っても分からんだろう。
佛教を学んでいても神佛の在,力,法,教を理解してない輩が多いんだからな。
悲しいかな真理を知る為には、僕等みたいに人間を捨て、理から外れた存在にならないと知る切っ掛けを得られないってのも不憫なもんだ 」
厳蒔眞勇
「 違うぞ、シュンシュン。
セロに出逢えたから真理を知る機会に惠まれたんだからな! 」
厳蒔惷囹
「 そうだったな。
ところで、キギナが来てないみたいだが、どうしたんだ? 」
厳蒔眞勇
「 そう言えば──。
妙に静かだと思ったら、キギナが来てないのか。
サボりかな? 」
厳蒔惷囹
「 有り得るな。
キギナなら殺り兼ねないな 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュン、『 殺る 』なんて朝から物騒だろぉ~~ 」
担任教師が[ 教室 ]に入って来て、ホームルームが始まってしまった。
結局、キギナは朝のホームルームが終わっても登校して来なかった。
キギナ…………特異体質の怪異が校内に潜んでるから、巻き込まれたりしてないよな?
──*──*──*── 昼休み
3限目が終わって、昼休み時間に入る。
キギナが来てないから4段重ねの重箱弁当をシュンシュンと2人で食べる事になった。
4段重ねの重箱弁当を1段ずつ机の上に置いていると、数人の男子が近付いて来た。
厳蒔眞勇
「 うん?
どうしたんだ?
これから弁当を食べるんだけど何か用かな? 」
厳蒔惷囹
「 おい、何だ。
弁当なら分けてやらないぞ! 」
厳蒔眞勇
「 コラ、シュンシュン。
喧嘩腰は駄目だろ。
どうしたんだ? 」
オレが再度、クラスメイトの男子生徒に声を掛けると男子生徒の身体は左右にユラユラと揺れている。
いや、“ 揺らしている ” って表現をした方が良いかも知れない。
おぃおぃ、大丈夫かな?
厳蒔眞勇
「 えぇと…………体調でも悪いのかな?
[ 保健室 ]に行くか? 」
なんて少し心配してる風に声を掛けてみると、男子生徒は発狂をするや否や動物の真似を始めて動き出した。
ど…どゆことぉ!?
突然の事過ぎて思考が停止したまま追い付かない。
厳蒔眞勇
「 きゅ…急に…どうしちゃったんだよ? 」
厳蒔惷囹
「 おい、女子生徒の様子も変だぞ! 」
厳蒔眞勇
「 変って何が──? 」
女子生徒の方に目を向けると、何故か踊り始めた女子生徒が居た。
な…何で踊り出したんだぁ!?
他にも急に歌い始めた女子生徒も居て、制服を脱ぎ始める女子生徒も出て来た。
男子生徒の中には笑い茸を食べたかの様に大笑い──大爆笑を始めたり、壁に向かって殴り始めたり、蹴り始める男子生徒も出始めた。
挙げ句の果てには窓を開けた後、裸足で[ 校庭 ]へ飛び出した男子生徒まで現れた。
最悪なのは[ 教室 ]の中でズボンとパンツを下ろして小便を始める男子生徒──、教卓の上に上がってパンツを下げてから放尿を始める女子生徒まで出始めた事だ。
厳蒔眞勇
「 シュンシュン──。
このカオスな状況って全部…………神芝居なのかな? 」
厳蒔惷囹
「 そんな訳ないだろ!
これは怪異の仕業だ 」
厳蒔眞勇
「 怪異だって!?
何処に怪異が居るんだ?
姿が見えないけど── 」
厳蒔惷囹
「 首の後ろだ。
ウネウネと動いてる奴が怪異だ。
無理矢理、取ろうとすると危険なヤツだ 」
厳蒔眞勇
「 そんな──。
これってウチのクラスだけで起きてる事なのか? 」
厳蒔惷囹
「 いや、他のクラスでも── 」
生徒
「 おい、誰か止めろ──!
窓から飛び降りる気だ! 」
上の階から声が響く。
声が聞こえた矢先、上の階から生徒がバタバタと落ちて来た。
落ちて来た生徒達は誰もが両手を広げていて、笑顔だ。
まるで鳥みたいに空を翔ぼうとしてジャンプをした矢先、重力のままに落下した──って感じだ。
[ 校庭 ]には飛び出した生徒達が、走り回ったり、踊ったり、歌ったり、喧嘩を始めたり──と様々な動きをしている生徒達で溢れている。
これが全部、怪異の仕業だなんて信じられない光景だ。
厳蒔眞勇
「 シュンシュン、どうしたら良いんだ?
生徒達の首にくっついてる怪異に余計な事は出来ないんだろ。
今のオレ達に出来る事って── 」
厳蒔惷囹
「 怪異を生徒達の首に付けた犯人を探すくらいだな。
あの特異体質の怪異とは限らないぞ 」
厳蒔眞勇
「 怪異を探す──。
校内に居てくれると良いけど…… 」
厳蒔惷囹
「 既に式隸を放っている。
変化が有れば、知らせてくれるさ。
正常な生徒も居るから死乃人と式神は出せないからな 」
厳蒔眞勇
「 分かった。
魔具刀を振るう訳にもいかないな。
オレは魔法で対処するよ 」
オレはシュンシュンと共に廊下を歩いて移動する。
何処の[ 教室 ]でも大変な状況に陥っているみたいだ。
とんでもない事態だ。
厳蒔眞勇
「 これは収拾が付かなそうだな。
教師達は何で来ないんだよ? 」
厳蒔惷囹
「 [ 職員室 ]へ行ってみるか? 」
厳蒔眞勇
「 そうだな。
怪異を取り付けられてない生徒には[ 体育館 ]へ避難してもらった方が良いかな? 」
厳蒔惷囹
「 それはそれで怪異を取り付け易くなると思うがな 」
シュンシュンとオレは[ 職員室 ]へ向かう。
廊下でも生徒達が奇行を繰り返している。
生徒の首の後ろに付いてる怪異をバラ撒いた犯人は何処で見てるんだか。
──*──*──*── 職員室
校長先生と教頭先生が亡くなった後、校長代理,教頭代理の教師を立てていたみたいだけど、翌日にこんな奇妙な事件が起きるなんて誰も想像してなかっただろうな。
[ 職員室 ]に入ると教師達が床に倒れている。
何で倒れてるのか分からないけど、眠らされている訳では無くて、気を失っているみたいだ。
厳蒔眞勇
「 どうなってるんだ、これは── 」
厳蒔惷囹
「 …………意識は無いが、生きてはいるみたいだな 」
厳蒔眞勇
「 何で教師達を── 」
厳蒔惷囹
「 邪魔だからだろ 」
怪しい所が無いかと[ 職員室 ]の中を確認しながら歩いていると、壁の右側に取り付けられているスピーカーから音声が流れる。
音声は「 [ 体育館 ]へ避難してください 」と伝えている。
聞き覚えの無い男子生徒の声だ。
厳蒔眞勇
「 [ 放送室 ]に生徒が居る?
放送委員かな?
シュンシュン、[ 放送室 ]に向かうか? 」
厳蒔惷囹
「 いや、僕等も[ 体育館 ]へ行こう。
避難する生徒の中へ紛れ込んで犯人を “ バン ” するんだ! 」
厳蒔眞勇
「 分かった 」
シュンシュンとオレが[ 職員室 ]を出ると生徒達が廊下を走って[ 体育館 ]へ避難している。
1年生,2年生,3年生が入り乱れた状態で[ 体育館 ]を目指している。
オレ達も生徒達に混ざって[ 体育館 ]に走った。
◎ 訂正しました。
生徒にに対しては、─→ 生徒に対しては、
自宅へ侵入させて、─→ 自宅へ侵入させ、
[ 校庭 ]─→ [ 校庭 ]
危険な奴だ 」─→ 危険なヤツだ 」




