──*──*──*── 放課後
ホームルームが終わると副学級委員が近付いて来た。
厳蒔眞勇
「 えぇと……それで副学級委員の話って何かな? 」
厳蒔惷囹
「 毛嫌って避けてる【 奇蹟調査検証部 】の部員に態々何の用件だ? 」
厳蒔キギナ
「 正直に洗いざらい吐いちゃいなさいよぉ~~ 」
厳蒔眞勇
「 キギナは黙ってろな? 」
厳蒔キギナ
「 マオってば酷いわぁ~~ 」
柯楠八惠
「 …………【 奇蹟調査検証部 】の部員が何で “ 七不思議の怪 ” なんかを調べてるの? 」
厳蒔眞勇
「 …………な…七不思議の怪?
何の事かな?? 」
柯楠八惠
「 惚けないで……。
【 オカ研 】に入部するつもりで居たでしょ。
オカルトに興味が有るの? 」
厳蒔眞勇
「 えぇとぉ~~………… 」
厳蒔惷囹
「 別に隠す必要も無いだろ。
僕は陰陽師で兄のマオは退魔師なんだ。
未成年だから未だたまごだがな。
そんな訳で、家系上オカルトとは何かと縁が有るって訳さ 」
柯楠八惠
「 陰陽師と退魔師?
そんなのが本当に居るの? 」
厳蒔惷囹
「 居るさ。
偽物の多い業界だがな 」
柯楠八惠
「 偽物って── 」
厳蒔眞勇
「 えぇと……宗教や信仰心を悪用して金儲けをする罰当たりな人間が居るだろ。
オカルト業界にも悪用して、楽に金儲けをする悪人が多いって事だよ。
オカルト業界はボロい商売だからさ 」
柯楠八惠
「 ボロい商売?? 」
厳蒔キギナ
「 報酬額が高くて稼ぎ易いって事よ。
宗教や信仰心を悪用して安全に金儲けしてる組織ぐるみの宗教団体とは違って、陰陽師と退魔師は個人営業なの。
何時も死と背中合わせな危険の伴う職業なのよ。
身体を張って命懸けで金を稼がないといけないの。
人間の常識が通じない怪異の類い,異形の類いを相手にするから、高額な報酬額を要求する事が出来るのよ 」
柯楠八惠
「 く…詳しいのね…… 」
厳蒔キギナ
「 まぁね!
似非が蔓延って、カモが食い付くのを待ってるから、インチキ野郎には重々気を付けなさいよ 」
厳蒔眞勇
「 ははは……。
一般人には本物と偽物の見分けは付かないけどな……。
そんな事が聞きたい事なのか? 」
柯楠八惠
「 違うわ……。
ねぇ……アンタ達にとっての奇跡って何なの? 」
厳蒔眞勇
「 奇蹟ってのは、神佛の力が能いた結果──かな 」
柯楠八惠
「 しんぶつ??
何それ? 」
厳蒔眞勇
「 神と佛と書いて、“ 神佛 ” って読むんだ。
神は諸天善神を指していて、佛は諸佛諸菩薩を指しているんだ。
御天道様,天,天主,主宰者,久遠実成って、色んな呼称をされてるよ。
神,佛は尊称だったかな 」
厳蒔惷囹
「 壮大な話になるが──、神佛ってのは、宇宙全体を動かし、支配している大いなるエネルギーの根源だ。
全ての生きとし生ける生物は、神佛の慈悲に依って生かされている。
あらゆる事物,現象は神佛からの “ 知らせ ” だ。
現状に起きる事象を通して、先の知り得ない未来を更により良き未来へ変える為、未来の自分の為に、今の自分に出来る最善の積み方を神佛に質問し、教えてもらえた処方箋の通りに実践し、断の裏の心掛けで菩薩行を続け、善を積み累ねて功徳の貯金をするのさ。
来世へ生まれ変わる自分の為に、現世で功徳を貯め、より良よく惠めぐまれた環境に生まれ変われる様ようにな。
来世あのよに産うまれた瞬間の宿命は、現世今世このよで何どれだけ功徳を貯金し、来世あのよへ黒字繰り越しが出来るかで変える事が出来るんだ。
神しん佛ぶつから教えられた処さょ方ほう箋せんをする為、神しん佛ぶつへ心こころを向け、神しん佛ぶつに御伺い相談し、神しん佛ぶつと同行二人で一緒に正ただしい心こころ掛がけで実践実行するのさ。
そうすれば、神しん佛ぶつの御ご意い趣しゅに適かなった善を積み累かさねる事が出来るんだ。
人間として産うまれて来これた事はま・さ・に・奇蹟スピリチュアルの結果と言っても過言じゃない。
菩ぼ薩さつ行ぎょうをし、善ぜんの功徳を貯めるチャンスを神しん佛ぶつから与えられた──って事なんだ。
とても幸運な事であって、自みずから授かった命いのちを捨て、粗末にする事こと程ほど、愚おろかで罰ばち当あたりな事は無いのさ。
自殺も人殺しも神しん佛ぶつの信頼を裏切る行為に当たるから、来世あのよへ繰り越せる功徳の貯金は残高0ゼロ若もしくはマイナスとなり、赤字繰り越しする羽目になる。
当分は善ぜんの功徳を積める人間へ生まれ変わる事は出来ないだろうな。
──以上を踏まえた上うえで、“ 八や惠えちゃん ” は僕等らに何なにを言いたいんだ? 」
柯楠八惠
「 小こ難むずかしい事を言って勧誘しようとしてるの?
私は【 奇蹟スピリチュアル調査検証部 】に入部しないんだからね!
抑そもそも顧問の先生が居いなくなったんだから、【 奇蹟スピリチュアル調査検証部 】は廃部よ、廃部! 」
厳蒔惷囹
「 何なんだよ、【 奇蹟スピリチュアル調査検証部 】をディスりに来きただけかよ 」
柯楠八惠
「 違うわ!
部活の先輩のクラスでね……問題が起きてるみたいで……悩んでるみたいなのよ…。
後輩の私じゃ先輩の話はなしを黙って聞くしか出来なくてね…… 」
厳蒔惷囹
「 聞もん法ぽうは大事だぞ。
相手の話はなしを黙って聞いてやるだけでも十じゅう分ぶんな救いになったりするからな。
話はなしを聞いていると聞く力ちからを養やしなえる様ようになるし、相手に寄り添そい親身になり、辛しん抱ぼう強づよく話はなしを聞・か・せ・て・い・た・だ・く・事で、人知れず相手の弱味をゲットする事も出来る。
聞もん法ぽうは相手の弱味を引き出す為のと・っ・て・お・き・の手法だ。
口くちを挟まず、頷うなづきながら話はなしを聞くだけで良いいんだから、楽勝だろ。
弱味は如い何か様ようにも利用が出来るからなぁ 」
厳蒔キギナ
「 惷しゅん囹れい、最低ねぇ~~ 」
厳蒔惷囹
「 褒め言葉だよ── 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュンの言う事はスルーして良いいから!
それで……部活の先輩は何なにで困ってるんだ? 」
柯楠八惠
「 クラスメイトの1人が奇妙な行動をしたり、奇き声せいを発したりしていて……授業中ちゅうに落ち着きが無いみたいで……。
授業に集中が出来なくて……学級崩壊を招き掛けているみたいなの……。
こういうのって “ オカルト ” と関係が有るんじゃないかと思って……。
スピリチュアルとは違う分野かも知れないけど……【 奇蹟スピリチュアル調査検証部 】で調査してもらえないかな……? 」
厳蒔眞勇
「 ふぅん?
奇妙な行動をしてたり,奇き声せいをして授業の妨害をする生徒か──。
シュンシュン、これって “ 七不思議の怪 ” と関係が有ると思うか? 」
厳蒔惷囹
「 先まずは騒ぎが起きた[ 教室 ]へ行って調べてみるか。
故意による人為的な仕しわ業ざなのか、目に見えない力ちからが関与して問題が起きてるのか見極める必要が有るからな 」
厳蒔眞勇
「 そうだな!
怪異の仕しわ業ざのかもしれないもんな! 」
そんな訳で[ 教室 ]を出たオレ達は、副学級委員柯楠八惠の案内で、2階に在る2年生の[ 教室 ]へ移動した。