✒ 登校日 2
──*──*──*── 1階・廊下
厳蒔キギナ
「 結局、日直と瑚鞠さんは何処に行ったのかしらね? 」
厳蒔惷囹
「 どうでも良いだろ。
それよりもだ、マオとキギナが体験した怪奇の謎を解明するぞ 」
厳蒔眞勇
「 階段が終わらない怪奇だな。
3階と4階の間でしか起きないのかな? 」
厳蒔惷囹
「 それを今から検証するんだ 」
厳蒔眞勇
「 今から? 」
厳蒔惷囹
「 当たり前だろ。
とは言え、教師が居るから見付かると面倒だ。
姿を消して検証するぞ 」
厳蒔キギナ
「 そうなるわよねぇ? 」
シュンシュンは陰陽術を使って、オレの姿を消してくれる。
キギナは死神の能力で姿を見えなくしたみたいだ。
──*──*──*──階段
厳蒔キギナ
「 やっぱり怪異の仕業かしらね 」
厳蒔惷囹
「 いや、違うみたいだな。
式隸を尋問したが、そんな能力を持つ怪異は居ないとさ 」
厳蒔眞勇
「 拷問しといて “ じんもん ” って言ってないよな? 」
厳蒔惷囹
「 おい、マオ。
僕を何だと思ってるんだ!
財布を “ しんゆう ” と読んでも、拷問を “ じんもん ” と読む訳ないだろ 」
厳蒔眞勇
「 そうかな?
シュンシュンなら言いそうだけどな 」
厳蒔惷囹
「 酷い奴だな。
抑だぞ、拷問なんて生温い事するかよ 」
厳蒔眞勇
「 どっちが酷いんだか…… 」
厳蒔キギナ
「 普通に4階へ着いちゃったわね 」
厳蒔眞勇
「 本当だな。
1階へ下りたら、今度は別の階段でも試してみよう 」
厳蒔惷囹
「 校内の地図なら式隸にパクらせといたのが有るから使おう 」
厳蒔眞勇
「 パクらせた?
式隸に泥棒さたのか? 」
厳蒔惷囹
「 安心しろよ。
使うのはコピーした地図だ。
コピーするのに地図は必要だろ。
一時的に拝借しただけさ 」
厳蒔眞勇
「 紛らわしい言葉の使い方しない! 」
厳蒔惷囹
「 “ 拝借 ” も “ パクる ” も同じ意味だろ。
“ 拝借 ” って言葉は、盗みを肯定,正当化したい馬鹿が使いたがる言葉だぞ。
僕は盗みを肯定も正当化もしない正直者って事さ! 」
厳蒔眞勇
「 セロにも言っとくな~~ 」
厳蒔惷囹
「 セロフィートにチクるなよ!
MBKを没収されたらどうするんだ! 」
厳蒔眞勇
「 ………………はぁ…… 」
シュンシュンが出してくれた校内の地図を広げる。
1階から4階へ上がり、4階から1階へ下りた階段には❌を付ける。
検証の結果、何処の階段を使って4階へ上がり、1階へ下りても階段ばかりが続く怪奇は発生しなかった。
厳蒔眞勇
「 どういうこっちゃだ?
何で今回は階段ばかりにならないんだ?? 」
厳蒔キギナ
「 今は放課後よ。
この前も放課後だったわ。
…………事件が起きないと発生しないとか? 」
厳蒔惷囹
「 なら、事件を起こして試してみるか 」
厳蒔眞勇
「 何で事件を起こす前提で話すんだよ。
オレ達が事件を起こしたら駄目だろ。
オレ達は依頼を解決する立場だからな 」
厳蒔惷囹
「 分かってるさ。
故意に事件を起こしたりしやしないって── 」
厳蒔キギナ
「 ねぇ、見てみなさいよ。
教師達が総出で[ 中庭 ]の穴を埋めてるわよ。
結構深く掘ってたから、穴を埋めるのも一苦労ね 」
厳蒔眞勇
「 本当だな。
皆、ジャージに着替えてるな 」
厳蒔惷囹
「 結局、警察は来なかったんだな。
折角、ブツと写真をプレゼントしてやったのに、とんだ怠慢だな! 」
厳蒔眞勇
「 ははは……。
警察も忙しいからな 」
厳蒔キギナ
「 なんてたって “ 犯罪都市 ” の米●町だものね。
他所でも事件が起きるんだもの。
手が回らないんでしょ~~ 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュン、どうする?
階段の怪奇は後回しにして、他の怪奇の調査をするか? 」
厳蒔惷囹
「 そうだな。
[ プール ]と[ 屋上 ]どっちを調べたい? 」
厳蒔キギナ
「 どっちも怪異の仕業なんでしょ。
式隸は犯人の怪異を目撃してないの? 」
厳蒔眞勇
「 残念ながら、してないんだ。
でも怪異の仕業なのは確かみたいかな 」
厳蒔キギナ
「 ふぅん?
惷囹の闇呪術で炙り出せないの?
こういう時にこそ、闇呪術を活かしなさいよ。
使えないわねぇ 」
厳蒔惷囹
「 お前が言うなよ。
それより、お前が見たって言う碧い蝶はどうなんだよ。
今でも碧い蝶に付き纏われてる生徒は居るのか? 」
厳蒔キギナ
「 そう言えば──、今日は未だ見てないわね。
何処か他所へ飛んでったのかしら? 」
厳蒔惷囹
「 お前、いい加減だぞ。
家族に相談してないのかよ 」
厳蒔キギナ
「 はぁ?
何で相談しないといけないのよぉ 」
厳蒔眞勇
「 キギナには碧い蝶に見えるけど、家族にも同じ蝶で見えるとは限らないんだよな? 」
厳蒔キギナ
「 そうよ!
相談するだけ無駄なのよ 」
厳蒔惷囹
「 人生の先輩に聞くんだぞ。
無駄では無いだろ。
影の中に潜む “ 何か ” の事も有るし、謎を謎のままにするなよ。
マオと僕には見えない存在なんだからな! 」
厳蒔キギナ
「 そんな事、言われてもね── 」
シュンシュンとキギナが言い合いを始めると何処からか悲鳴が聞こえた。
1人の悲鳴じゃなくて数人の声が重なった悲鳴だ。
何だろうな?
厳蒔眞勇
「 どうしたんだろう? 」
厳蒔キギナ
「 事件かしら? 」
厳蒔惷囹
「 [ 校庭 ]の調査をさせていた式隸からだ。
──何も無かった筈の壁から突如、人間の身体が現れたらしい。
壁と一体化しているみたいだ 」
厳蒔キギナ
「 何よ、その怪事件!
直ぐに行きましょ! 」
厳蒔眞勇
「 めっちゃ嬉しそうだな…… 」
厳蒔キギナ
「 だってぇ、今度こそ “七不思議の怪 ” かも知れないじゃないのよ! 」
厳蒔惷囹
「 どうやら、壁と一体化してるのは生徒らしいぞ。
未だ生きてるみたいだ。
悲鳴の主は壁と一体化してる生徒らしい 」
厳蒔眞勇
「 急ごう!
今なら助け出せるかも知れないし 」
厳蒔惷囹
「 行ってやるか。
式隸に案内させるから付いて来いよ 」
厳蒔厳蒔
「有り難う」
キギナとオレはシュンシュンの案内── 正確には式隸だけど ──で、1階の廊下を走り出した。
下駄箱の在る[ 正面玄関 ]を目指して走るけど、何時まで経っても[ 正面玄関 ]に着かない。
もしかして、キギナとオレが体験したいつぞやの “ ループ階段 ” と同じ怪奇現象か!?
厳蒔キギナ
「 嘘でしょう?!
階段じゃなくて、今度は廊下なのぉ~~ 」
厳蒔眞勇
「 これって “ ループ廊下 ” ってヤツかな。
一体どういう仕組みでこんな事になるんだよ? 」
厳蒔キギナ
「 惷囹っ!
アンタの闇呪術で何とかしなさいよぉ!
これ以上、無駄に走りたくないのよ 」
厳蒔眞勇
「 こんな時にキノコンが居てくれたらな…… 」
厳蒔惷囹
「 ──そういう事か。
成る程ねぇ…… 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュン?
急にどうしたんだよ 」
厳蒔惷囹
「 確かに、この現象は怪奇だ 」
厳蒔キギナ
「 一寸ぉ、1人で納得してないで説明しなさいよぉ! 」
厳蒔惷囹
「 この怪奇現象は暫くすれば元の廊下に戻るさ。
下手に動かない方が良いぞ。
階段の怪奇現象と異なるからなぁ。
今から結界を張るから出るなよ。
後、はぐれた時用に持っとけ 」
簡単に結界を張ったシュンシュンは、黄色系の紐が複雑に編み込まれた1本の紐を陰陽陣から出す。
キギナとオレの右手首に紐を巻き付けてくれた。
厳蒔眞勇
「 シュンシュン、この紐は? 」
厳蒔惷囹
「 迷った時に出口を教えて案内してくれる紐だ。
貸し出し料金、70万な 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュン、こんな時に商売するなってば 」
厳蒔惷囹
「 買うと100万するんだぞ!
良心的な僕に感謝しろ。
それが無いと “ ループ現象 ” から脱出する事は出来ないんだぞ 」
厳蒔キギナ
「 どういう事よ 」
厳蒔惷囹
「 この怪奇現象を起こしてる犯人は怪異だが、普通の怪異じゃないって事さ。
様々な怪異や異形を取り込み吸収して誕生した特異体質の怪異だ 」
厳蒔眞勇
「 特異体質?? 」
厳蒔惷囹
「 あぁ──。
この怪奇現象を起こしてる犯人は、制御が効かなくなり暴走した寄り代が、術師を呑み込み喰らった事で、自由に動き回れる肉体を得る事が出来た。
その暴走した寄り代は怪異や異形を取り込み吸収した事で、肉体だけでなく知能も手に入れた。
知能が有るんだから自我も芽生えているだろうな 」
厳蒔眞勇
「 それが特異体質の怪異…… 」
厳蒔惷囹
「 そうさ。
厄介な事にコイツは何故か、死神のキギナにしか見えない存在って事だ 」
厳蒔眞勇
「 えっ?
シュンシュンとオレには見えないのか? 」
厳蒔惷囹
「 あぁ、見えないねぇ。
だから、コイツに関しては姿を見る事が出来るキギナが頼りとなる 」
厳蒔キギナ
「 一寸待ちなさいよ!
何で “ 私にしか見えない ” って分かるのよ?
おかしいでしょ! 」
厳蒔惷囹
「 僕に聞くな。
特異体質の怪異の仕組みなんて知るか。
捕まえて研究だの実験だのしないと真相は分からん。
これは永年培って来た陰陽師としての勘だ 」
厳蒔眞勇
「 大人しく待っとけば本当に元に戻るのか? 」
厳蒔惷囹
「 あぁ、これは特異体質の怪異が移動した後に起こる現象だからな。
一時的なものだ 」
厳蒔眞勇
「 “ ループ階段 ” の時は4階に上がる事で戻れたんだよな。
[ 教室 ]に戻ろうとすれば戻れるんじゃないのか? 」
厳蒔惷囹
「 素人は安易に動き回るもんじゃない。
結界の中で待ってれば良いのさ 」
そう言うとシュンシュンは、使役している式隸と会話を始めた。
ブツブツと呟きながら、細かく指示を出しているみたいだ。
早く元の廊下に戻って、悲鳴の聞こえた場所に向かわないとだ!




