⭕ 登校日 1
──*──*──*── 水曜日
──*──*──*── 高等学校
──*──*──*── 教室
6限目、眠気を誘う退屈な授業を受けている。
キギナは堂々と爆睡しているし、シュンシュンは教科書を見ている振りをして漫画を読んでいる。
読んでる漫画は囲碁モノだ。
6限目の終了を告げるチャイムが鳴る。
先生は「 次回は小テストをする。忘れず復習しとけよ 」と言いながら[ 教室 ]から出て行った。
生徒達は絶望した面持ちで嘆いている。
厳蒔惷囹
「 やれやれ……やっと終わったか。
退屈な授業だったな 」
厳蒔眞勇
「 次回は小テストだってさ。
シュンシュン、大丈夫なのか? 」
厳蒔惷囹
「 問題ないさ。
僕の為に予習問題を作ってくれるんだろ、兄さん 」
厳蒔眞勇
「 オレの仕事を増やすなよ… 」
厳蒔惷囹
「 キギナには作るんだろ。
なら、僕にも作るのが兄の努めだ。
兄の弟妹差別は許さないぞ 」
厳蒔眞勇
「 隠れて漫画を読んでたくせに…… 」
厳蒔惷囹
「 兄さぁ~~ん、見捨てないで! 」
厳蒔眞勇
「 はぁ…………。
ちゃっかりしてるんだもんな。
分かったよ。
シュンシュンのレベルに合わせた問題集を作るから、ちゃんと予習するんだぞ 」
厳蒔惷囹
「 それでこそ、僕の兄だ!
皆にLINEして知らせないとな 」
厳蒔眞勇
「 コラぁ、シュンシュン!
“ LINEで知らせる ” って何だよ 」
厳蒔惷囹
「 囲碁漫画の回し読みだよ。
男子にも人気が有るからな 」
厳蒔眞勇
「 本当か?
オレがシュンシュン専用に作った問題集をコピーして売り捌いたりしないよな? 」
厳蒔惷囹
「 馬鹿野郎っ!
兄想いの僕が、そんな卑劣な事する訳ないだろ!
兄の信頼を裏切る様な真似を── 」
厳蒔眞勇
「 シュンシュンがキリッとした顔しても信じられないんだよな。
先生にバレて没収されない様にな? 」
厳蒔惷囹
「 だから、しないって! 」
厳蒔キギナ
「 んぅ~~~~…………。
ホームルームは終わったぁ? 」
厳蒔眞勇
「 未だだよ。
キギナ、良く寝てたな 」
厳蒔キギナ
「 だって詰まらないんだもの。
生徒が授業に興味を持てないのは教師に問題ありね! 」
厳蒔惷囹
「 爆睡しといて言える立場かよ。
次回は小テストだとよ。
赤点、取るなよ 」
厳蒔キギナ
「 失礼ねぇ!
私が赤点なんて取るわけ無いでしょ!
私にはマオ大先生が居るのよ!
でしょ、お兄ちゃん♥️ 」
厳蒔眞勇
「 問題集は作らないからな。
今回は自力で何とかしろ 」
厳蒔キギナ
「 ちょっ、マオ!
妹のピンチを見てみぬ振りする気なの?!
酷くないかしら! 」
厳蒔眞勇
「 酷いのは授業中に爆睡してたキギナだよ 」
厳蒔惷囹
「 全くだ!
居眠りなら未だ可愛いもんだが、爆睡は罪深いんだぞ 」
厳蒔キギナ
「 ハン!
真面目に授業を受けないアンタに “ だけ ” は言われたくないわね! 」
厳蒔惷囹
「 僕は授業中、寝た事なんて1度も無いんだがぁ~~ 」
厳蒔キギナ
「 むきぃぃぃぃぃいーーー!! 」
相変わらずシュンシュンとキギナは仲良く出来ないみたいだ。
クラスメイトも呆れて笑ってるよ……。
でも、そのお蔭もあってか少しずつだけど、クラスメイトの方から話し掛けてくれる様になったんだよな。
厳蒔眞勇
「 それにしても名央先生、遅いよな。
何時もなら、もうホームルームは始まってるんだけど── 」
厳蒔惷囹
「 おい、副学級委員、さっさとホームルームを始めろよ。
名央が来なくても始められるだろ 」
柯楠八惠
「 今、日直が先生を呼びに行ってるから待ってなさい 」
どうやら日直が名央先生を呼びに行ってるらしい。
暫くは部活動も中止だし、ホームルームが遅くなるくらい別にどうって事はないんだ。
──*──*──*── 15分後
厳蒔キギナ
「 ねぇ、柯楠さん。
日直、戻って来ないんだけどぉ~~ 」
柯楠八惠
「 おかしいわね。
[ 職員室 ]に行って戻って来るだけなのに…… 」
瑚鞠螢里
「 私が行って来るわ。
名央先生と日直の萩原君を呼んで来たら良いんでしょ 」
柯楠八惠
「 瑚鞠さん、有り難う。
皆は名央先生が来る迄[ 教室 ]から出ない様に! 」
副風紀委員が[ 教室 ]から出て行くと、副学級委員と風紀委員長が椅子を持って、戸に近付く。
戸の前に椅子を置くと通せんぼうするみたいに椅子に腰を下ろして座った。
厳蒔惷囹
「 此処は1階なんだから窓から外に外に出て、下駄箱の在る[ 正面玄関 ]まで行けば済む事だろ 」
厳蒔眞勇
「 身も蓋も無い事を言うんだな、シュンシュン。
先生に見付かったら[ 生活指導室 ]に連行されて教育番組を見せられながら反省文の刑かな 」
厳蒔惷囹
「 おい、嫌な事を言うなよ。
おちゃめな冗談じゃないか 」
──*──*──*── 15分後
──とは言え[ 職員室 ]へ行ったきり副風紀委員も戻って来ない。
[ 職員室 ]で何してるんだろうな?
厳蒔キギナ
「 ねぇ、柯楠さん。
日直と瑚鞠さん戻って来ないけどぉ~~。
何時まで待ってれば良いの?
もう直ぐ1時間経っちゃうけどぉ~~ 」
柯楠八惠
「 そ…そうね……。
日直も瑚鞠さんも何してるのかしら? 」
澳邉陽斗
「 俺が呼んで来る。
15分経っても戻って来なかったら── 」
厳蒔惷囹
「 その必要は無さそうだぞ、風紀委員長── 」
澳邉陽斗
「 どういう事だ? 」
厳蒔惷囹
「 ホームルームを始められるって事さ 」
シュンシュンが言うと、廊下側から戸が開けられた。
ガラッと音が鳴ると慌てた様子で担任教師が[ 教室 ]に入って来た。
担任教師は何故かジャージを着ていて汗も掻いている。
担任教師:名央先生
「 皆、遅くなって御免ね…… 」
柯楠八惠
「 先生っ!
何してたんですか?
日直と瑚鞠が呼びに行ったんですよ。
会わなかったんですか? 」
副学級委員は少し御立腹だ。
担任教師:名央先生
「 えぇっ?!
そうなの?
…………2人には会ってないわ… 」
柯楠八惠
「 先生は[ 職員室 ]に居なかったんですか? 」
担任教師:名央先生
「 先生達は[ 中庭 ]に居たの。
誰かが掘り起こした穴を埋めていて……。
ホームルームを始めましょうね 」
あ……昨日、式隸達が掘っていた穴だ。
埋めずに帰っちゃったもんな……。
手の空いた先生達が穴を埋め作業をしていたのか──。
何はともあれ、ホームルームが始まって、無事に終わった。
未だ埋めていない穴が幾つか在るから、「 呉々も生徒は[ 中庭 ]に入らない様に! 」と念押しされた。
言い付けを守れず[ 中庭 ]に入った好奇心旺盛な生徒には、“ 校内清掃員 ” に任命され、担当する掃除場所を振り分けられて、1ヵ月間昼休みに掃除する罰を受ける事になるんだとか。
結局、ホームルームは終わっても日直と副風紀委員は[ 教室 ]へ戻って来なかった。
シュンシュン,キギナ,オレは忘れ物が無いかを確認してから鞄を持つと[ 教室 ]を出た。
◎ 訂正しました。
兄想い僕が、─→ 兄想いの僕が、
日直 ─→ 日直




