✒ 七不思議の怪 4
強引Guでマイウェイなシュンシュンから真名を奪われ、強制的に式隸とされてしまった不運な怪異達は、主人となったシュンシュンに絶対服従となり、逆らえなくなる。
心とは裏腹に主人であるシュンシュンに従わざるを得ない可哀想で不憫な立場だ。
言霊で縛られ、使役された事により自由を奪われた式隸達は、移転される前の祠が設置された場所を発見してくれた。
シュンシュンは頑張って祠が設置されていた場所を探し出した式隸に対して、労いの言葉を一言だって掛けたりしない。
だから、シュンシュンの代わりにシュンシュンの主人であるオレが、心に反しながらも頑張ってくれた式隸達に、労いの言葉を掛けて、感謝を伝えた。
キギナは首を傾げて「 何でマオが其処迄するの? 」って顔をしながらオレを見て来る。
式隸達は涙を溜めた両目を潤ませながら、オレを見詰めている。
余っ程嬉しいのかな?
マオ
「 此処に祠が設置されたのか? 」
キギナ
「 やだぁ~~!
[ 中庭 ]じゃないのよぉ。
確か此処に【 奇蹟調査検証部 】の顧問先生が落下死してた場所よねぇ? 」
マオ
「 そ…そうだな…… 」
[ 中庭 ]には未だ、立ち入りを禁止を知らせるイエローテープが張られている。
マオ
「 これじゃあ、中には入れないな 」
霄囹
「 今は姿が見えないんだ。
中に入って調べても誰にも文句は言われないさ。
警察も見張ってないしな! 」
そう言うとシュンシュンは、ズカズカと歩いて[ 中庭 ]の中へ入って行く。
「 それもそうね 」なんて言いながら、キギナも[ 中庭 ]の中へ踏み入る。
1人で立ち尽くしてる訳にもいかないから、オレも[ 中庭 ]の中へ入った。
──*──*──*── 中庭
地面には見事な芝生が敷き詰められている。
とはいえ、様々な種類の雑草も生えている。
ちらほらと小さな花も咲いている。
真ん中には木も植えられていて、木陰が出来ている。
霄囹
「 此処だな。
どうやら、[ 中庭 ]の中心に設置されていた祠を移転させた後、この記念樹を植えたんだろう 」
マオ
「 記念樹?
唯の木じゃないんだ? 」
キギナ
「 この木って、金木犀じゃないかしらね 」
マオ
「 きんもくせい?? 」
キギナ
「 9月頃 ~ 10月頃に開花する常緑広葉樹だったかしら。
うっとりする様な甘い香りが特徴みたいよ。
春の沈丁花,夏の梔子に並ぶ三大香木の1つみたいね 」
マオ
「 へぇ、詳しいんだな 」
キギナ
「 兄が《 花屋 》でバイトしてんのよ。
ウンチクを垂れ流して来るから覚えちゃっただけよ。
私は花に興味無いから聞かないでよね 」
霄囹
「 死神が《 花屋 》でバイトかよ 」
マオ
「 でもさ、何で態々祠を移転させて迄、記念樹を此処に植える事にしんだろうな? 」
霄囹
「 さぁな。
此処から[ 校庭 ]の隅迄は距離が有るし、段差も有る。
運んでいる最中に足を引っ掛け、転び掛ける可能性も有る。
お粗末な引っ掛け式の鍵だから、不意に外れて中の神器が落ちた可能性も否定は出来ないな 」
マオ
「 不慮の事故か。
原因は何であれ、割れたのに知らん顔して放置は良くないよな。
“ 珍しい丸い石 ” って思っていたから、そのまま知らん顔した線もあるよな 」
キギナ
「 私達が昔の犯人探しをしても仕方無いわよね。
で──、此処まで来たけど、どうするのよ? 」
霄囹
「 記念樹を浮かせて掘り起こすのさ 」
マオ
「 掘り起こす?!
何で其処迄するんだ? 」
霄囹
「 あのなぁ、祠ってのは抑、移転させないんだ。
その地の守護神様を祭祀してるからな。
余程の事でも無い限りは移転させないのさ。
それを知ってか知らずか、守護神様を祭祀してる祠を移転させた馬鹿な罰当たり者が居た。
祠を移転させただけじゃなく、態々穴を掘り記念樹を植えたって事はだぞ、ヤバいもんが “ 埋められてる ” ってな相場が決まってるんだよ! 」
マオ
「 唯単に記念樹を[中庭 ]の真ん中に植えたかっただけかも知れないぞ 」
キギナ
「 掘っちゃえば良いのよ。
ヤバいのが埋まってればラッキーだし、埋まってなければ安心するじゃない?
サクッと穴開けちゃいましょ 」
マオ
「 だけどさ、こんな昼間から記念樹を浮かせるなんて出来ないぞ 」
霄囹
「 そんなの教師が帰った後に決まってるだろ。
陰陽術で記念樹を浮かせれるから良いとして、穴を掘るのは式隸の役目だ。
僕等は見てるだけで良いのさ 」
マオ
「 そっか。
また夜の《 学校 》に忍び込むんだな…… 」
霄囹
「 良いだろ別に。
転移陣を使うんだ、移動は楽だろ。
ほんの数時間の拘束だと思えよ。
このまま転移陣を発動させるから、帰るぞ 」
キギナ
「 賛成ぇ~~ 」
シュンシュンは陰陽術で転移陣を発動してくれる。
闇呪術で消してる姿は見えないけど、陰陽術で発動した転移陣は、人間にも見えちゃうんだよな。
目撃されたら騒ぎになるけど、人気が無いみたいで良かった。




