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Dragon App -ドラゴンアプリ-  作者: 坂条 伸
第一章 始まり
11/19

第11話 ギルド②

『実績が解除されました。報酬が与えられます』



 予想はしていたが、冊子を読んだことが実績になったのだろう。取り敢えずスマホを出してアプリを確認してみる。



Magicマジック Catalogカタログ



「カタログ……、マジか」


「どうしたの? また例のアレ?」


「はい、今回のアプリはかなりヤバい感じです」


「えー、今までも充分にヤバかったでしょ」


 アプリを確認してみると予想以上にヤバい代物だった。制限はあるようだが元の世界の様々な商品が得られるようだ。購入にはポイントが必要なようで、必要ポイントはかなり高額な仕様だが、ポイントは魔物の討伐で得られるらしく、かなり有用なアプリだった。


「魔物を倒して得たポイントで、俺がいた世界の商品を購入できるみたいです」


「は?」


「魔物を倒して得たポイントで、俺がいたせ——」

「いやいや、それは分かったから。ねえ、それって異世界からこちらに物を移動させられるってこと?」


 アルマさんにしては興奮のあまり、声が少し大きくなっていた。それに煽られたのか、仔猫ルーナを頭の上に乗せた山猫ミュールが立ち上がってアルマさんの周りをウロウロしだす。俺がアルマさんと猫たちを宥めていると、クレアさんが作業スペースからこちらへ戻ってきた。


「お待たせ致しました。アルマ様、何かありましたか?」


「え? ああいや、大丈夫。それより査定はどうだったの?」


「あ、はい。ダイアウルフリーダーが金貨十七枚と銀貨五枚。ダイアウルフ八頭のうち、損傷の大きな二頭が一頭につき金貨十一枚と銀貨五枚で、合計が金貨二十三枚。それ以外の五頭が一頭につき金貨十二枚で、合計が金貨六十枚。最後にゴブリンの異常種が金貨一枚と銀貨七枚。全部で金貨百二枚と銀貨二枚です。ギルドが預かることも出来ますが、どうされますか?」


 冊子にも書いてあったが、ギルドで得た金銭のみギルドに預けることが可能だ。預けた金額はカードに表記されるが、同時にすべての個人情報が暗号化されて併記されているので偽造も難しく、ギルドであればどこでもお金を下ろせるようになっていた。

 お金については事前にアルマさんと話し合っていた通り、金貨二枚と銀貨二枚だけ受け取ることにした。


「分かりました。それでは金貨百枚をギルドでお預かりします。本日はありがとうございました」


「ありがとうクレア。またね」


「ありがとうございました」


 登録と買取が終わりギルドを後にする。興奮を隠しきれていないアルマさんに、クレアさんは終始首を傾げでいた。

 アルマさんは余程に〈Magicマジック Catalogカタログ〉について話したいらしく、帰りの家路を急ぐことになった。


    ◇


 家へ着くなり飛び付くようにして、アルマさんからアプリについて聞かれた。元々距離の近いスキンシップ多めの人だが、今回はいつにも増してグイグイとくる。正直言って、アルマさんの色々なところが当たるので困ってしまう。年齢が精通前に戻った影響なのか、男性として当たっているのが嬉しいというよりは、羞恥と胸の高鳴りがおさまらなかった。

  


「異世界の商品には食べ物は含まれてるの? 植物や種は? 本は? 教えてススム!」


「お、おちついて下さい。あ、アルマさん。」


 思考が乱れて落ち着かない。混乱した結果、嘘のように目を回してしまった。


「ああ! ススム、大丈夫! ど、どうしたの——」


 限界に達した俺は、完全にのぼせてしまい立っていられなくなる。薄れゆく意識のなか、ふと思った。


 これ竜とか関係ないな、と……。


    ◇◆◇


「じゃあ、料理も植物も本もあるけど、法外なぐらい必要ポイントが高いのね?」


「……はい。アプリを手に入れてから魔物を倒していないので、倒したときに手に入る正確なポイント数はわかりませんが、どの商品もとても高いです」


 結局、倒れたあと意識を取り戻したら、ソファで横になっていてアルマさんに膝枕をされていた。そして何故か山猫ミュールが真横にいて、頭の上にのっている仔猫ルーナに上から見つめられてもいた。

 現在は、起き上がろうとしてアルマさんに止められ、謝られた上で膝枕のまま会話を続けているところだ。


「植物や本は何となく分かりますけど、料理はこの世界のものも美味しいですよね。まだ三食しか食べてない上、全部アルマさんの手料理ですけど」


「ん、ありがと。……じゃなくて、すいーつっていう奴よ。ぷりんとか、しゅーくりーむとか、そふとくりーむとか、文献に山ほど書いてあるけど再現できてないの」


「え? そうなんですか? シュークリームやソフトクリームはともかく、プリンとか結構簡単ですよ?」


「残っている文献を読むと、今までの転移者に料理できる人が皆無だったみたい。だからこそ、『あれが食べたい』『あれが懐かしい』っていう嘆きが文献にたくさん残ってるのよ」


 過去の転移者たちも悲喜交々だったみたいだ。

 そこでアルマさんの歓喜の言葉が響いた。


「ん? というかススム、もしかしてぷりん作れるの?!」


「え、ええ、作り方は知ってますし、アプリの〈Magicマジック Convectionコンベクション〉があるので蒸すこともできますので作れますよ。あとは、冷たいお菓子(スイーツ)になるので、料理を冷やすような魔導具か何かありませんか?」


 アルマさんの家には空調やコンロや温水シャワー、果てはウォシュレットすら魔導具として存在していたが、冷蔵庫の類いは見当たらなかった。

 一瞬アルマさんに喜びの表情が垣間見えたが、「冷やす魔導具」と言われて途端に難しい顔になった。


「なるほど。……冷やす魔導具か。うーんそうだね、そもそも魔導具って()()が込められた道具のことを言うんだけど——」


「魔術? 魔法とは違うんですか?」



—————————

▼《Tips》



〈転移者〉

 歴史上に名前が残っているだけでも、五名の存在が確認されている。

 彼らは総じて強力な異能チートを所持していたようだが、異能チートの数は例外なく一つだけだった。

 転移者が獲得する〝異能チート〟とは、神などの上位者に与えられたもの(チート)ではなく、世界を()()()()()()()()が故に獲得した成果物チートである。

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