song6 15の夜6
「どうしてこれが家出になるんだ?」
「そうだぜ、お前の家って言うか、アパートに来てるだけだろ?」
桂と、達也はそう言った。
「そうだよ。ただ、それ、家の人に言ってきてる?」
「は?言う必要あるか?もう、中学3年で、来年には高校にもなるって年だぞ」
「だけどさ、未成年で、働いてもなければ、稼いでもないし、第一、ここにいることを大人の誰一人として知らない訳なんだよ」
ボクが返すと、
「それがどうしたって言うんだ?時間になれば帰ればいいんじゃないのか?」
達也は相変わらず短絡的で桂は思わず、それを見て、
「そう言うことなんだ・・」とボクを少しだけ感心するかのようにうなずきながら、話し始めた。
「確かにそうか、お前の言うとおりだな、ここにいたら、家出と同じか。親さん、ほとんど見たこと無いし、確か、隣の別の部屋を借りてるからか」
「そうだね。それに、母親は、夜に働きに行くからさ、今の時間仕込みに行ってるし、父親は遊びに出かけてるから」
「・・・お前さ、晩飯とかどうしてるわけ?」
達也が割り込んできた。
「母親が作り置きしてくれてるから、それを、コンロで温め直してる」
「そうか・・・」達也は何か、考え込んでる様子。
「達也、お前にその姿は似合わないよ」桂が言うと、続けてそう言った。
「分かった。お前のなんか、影があったり、妙に優しい部分って、ここなんだよな。俺たちにない部分。悪かった」
「え?」
その姿は意外で、ボクはすぐさま心の中でなぜか「謝らないでくれ」と叫んでいた」