song1 15の夜
Song1 15の夜
昭和50年後期。時代は、荒れていたように思えた。
「ガシャーン」
この音が鳴り、当たり前のように授業が中断しても、それが日常だった。しかも、それは些細なこと。
もうある意味「慣れっこだった」
今、零和の時代にあっては、考えられないような、英語や数学の教師であっても、片手に「竹刀」。
ただ、それは、威圧的に感じられる生徒と、そうではなく、逆に安心感を覚える生徒、両極端でもあった。
その竹刀はまるで、魔法のステッキのようでもあった。
暴力的に使われることなど、ほぼ無い。授業において、黒板に字を指すときに使われることの方がよっぽど多かった。
それなら、なぜ、「竹刀」でないと行けないのか。指示棒でもいいでは無いのか?当時、レーザーポインターなどはないが、伸縮式の指示棒はあった。しかしながら、竹刀は、体を支える役目、つまり、杖代わりにもなっていた。それに、眠そうな生徒がいるときには、竹刀で、床に音をたてるときにも、便利だからだった。
それで、誰かの頭をたたいたり、腹をたたいたりなどとすることは、ボクらの前では見せたりはしなかったが、そう受け取らない生徒もいた。
先輩や、先輩の影響を受けていた一部生徒たち。
授業を抜け出して、ガラスを割ったり、他校ともめ事を起こしたり、教師と言い争ったり。
部活でも先輩がいて、部室に呼ばれると、今でこそ、警察沙汰になったり、犯罪行為と見なされたりするようなことが。この時代、横行していた。
それをボクらは、
「みんな当たり前に過ごしてきたから」
と、ある意味、何の疑問も、あるいは、ちょっと我慢すればと、時間が解決するという強引な論理で、解決しようとしていた。
それも、これも、たぶん、自分たちが、一番上になれば、何もかもが変わるのだろう。そう願い、希望的観測でものを見ていた。
1つ上の先輩たちの卒業式は、荒れるだろうと思っていた。ところが、意外にも、言っては何だが、平和だった。
「迷惑をかけました」と、先生たちに言っていたのを覚えている。
いや、確かにそうではあるが、こっちにもそれは言ってほしいと、在校生のボクらはそう思っていた。ただ、あなた方が出て行くことが、一番の贈りものだと、思ってはいた。
そして4月。
新しい先生が入ってきて、先生たちも新体制。
何かが変わった。それは明らかに、ボクらの代から、この学校を変えようという雰囲気が伝わってきた。
それはまるで
「変えるなら全て、一気に」
そんなものが伝わってきた。
今までよかったものが全てダメになった。当然納得がいかなかった。中には暴れようとする子がいたが、それでは先輩たちと同じだと、まずは諭した。ところが、
新任の教師が、
「お前、あとで、職員室に来い」
その生徒を職員室に呼び出した。周りの仲間はざわついた。「え?待って、何で?」
「あたりまえだ。反抗したからだよ」
ボクの中で、何かが音を立て始めた、
「プツ、プツ」
去年まで、先生、いや、教師たちが持っていた「竹刀」
それが、とても不快なものに、思えてきた。