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異世界でも僕はアナボりたい!!  作者: 狐月 かぶと
第三章
19/19

長期休みの中盤ってやる事なくなるよね

 楽しいプチ旅行も終わり、実家に帰省してやる事が無くなってしまった。長期休みを半分以上何もせずに終わっちゃうのは、僕だけではないはずだ。


 あまりにも暇なので、意味もなく街ぶらする事にした。誘拐事件からは、ぱたりとトラブルもなく平穏な日々が続いている。


 平和が一番だよねー。たまには目的もなくぶらぶら過ごすのも悪くない。出店で買った昼食を公園で食べていると、やけにニコニコした女の人が話しかけてきた。


 「すいません〜、少しお時間頂けませんか?」


 「あ、はい。どうぞ。」


 そう言うと、女性は僕の隣に座った。


 「わたくし、アナボリック教のシスターをしてまして……アナボリック教をご存知ですか?」


 アナボリック教? 


 聞いた事ないな。この世界の宗教とか、興味ないから調べてなかったけど、こっちにもあるもんなんだな。


 「い、いえ。」


 そう答えると、ニコニコお姉さんがある紙を渡してきた。


 「そうですか! もし興味が湧きましたら、こちらの場所にお越しください。神はいつでも歓迎致しますわ。では失礼。」


 そう告げたニコニコお姉さんは、満足そうに去っていった。……一体なんだったんだろう? 手渡された紙を読んでみる事にした。


 なになに……? アナボリック聖堂に初めてお越し頂いた方限定で、プロテイン10キロプレゼント……? 


 じゅっ、じゅっ、10キロぉぉぉ!? 


 マジで!? 


 行くだけで!? 


 10キロもあれば、1日で28g使うとしたら、ざっと計算して、10年分もらえるって事だよね!?


 その瞬間、僕は走り出していた。考えるより先に、身体が勝手に動いていた。僕たちトレーニーにとって、プロテインとは酸素。なくてはならない存在。大量に、しかも無料でもらえるなら、喜んでどこまでも飛んでいくのだ。


 アナボリック教とか、少しひっかかる名前だけど、そんな事は関係ない。とにかく今はプロテインだ! 


 久々に本気で走って、アナボリック聖堂に向かう。聖堂はアナボルという国にあるみたいで、王国からざっと馬車で二日ほど掛かる。まあ僕の全力なら、三十秒も経たずに着いちゃうんだけどね。


 そんなこんなで即刻到着した僕は、勢いのままに聖堂に向かう。アナボルは宗教活動が活発な国で、その国民のほとんどがアナボリック教信者なのだという。そんな人気な宗教なんだな。僕は神様には興味ないから、適当に話聞いてプロテインもらって帰ろ! 


 少し歩くと聖堂が見えてきた。聖堂前で掃除をしているシスターがいたので、話しかけてみることした。


 「あのー、すいません。」


 僕が話しかけると、ビクッと肩を跳ねらせるシスターさん。


 「は、はひ!?」


「あ、ごめんなさい驚かせてしまって。」


 「い、いえ! 何か御用でしょうか……」


 「このチラシ見てきたんですけどー。」


 するとシスターさんは、顔をパァーッと輝かせて、


 「それはそれは! わざわざお越しくださりありがとう御座います! どうぞどうぞお入りください!」


 快く案内してくれた。中に入ってまず目に止まったのは、天に向かって手を掲げる女性の像があった。太陽の光に照らされる様子は、とても神々しかった。


 「これは?」


 「この方は、女神アナボリック様です。かつて、世界を滅さんとする邪神カタボリックから、この世界を救うために立ち上がった女神様です。」


 邪神カタボリックって、あのカタボリック!?


 「見事、邪神カタボリックとの戦いに勝利した女神様の功績を称え、アナボリック教とこの聖堂が建てられました。」


 ということは、僕たちが戦ってるカタボリックという組織は、その邪神を崇拝する集団ってことかな。


 「この像に祈りを捧げると、幸運が舞い降りるとも言われております。ぜひ祈りを捧げてみてはどうでしょう。」


 一種の参拝みたいな感じかな。いい機会だし、僕の筋肉のさらなる発展でも願っておきますか。シスターと一緒に、像に向かって合掌しながら目を閉じて祈りを捧げた。あれ、なんだか身体がポカポカしてきた。すごいな、異世界は。こんなシステムまで搭載してるんだ。


 よし、これぐらいでいいかな? 


 目を開けると、シスターさんがいなくなっていた。てか、ここどこ?


 さっきまで居た場所とは、全く違う空間に立っていた。像もないし……なんだここ? 


 あたふたしていると、右胸がピクピク痙攣し出した。僕の筋肉が何かを察知したようだ。


 右胸に誘われるまま進んで行くと、大きな扉が突如現れた。ドアノブも何もないので、どうやって開けるのか見当もつかない。手当り次第ペタペタ触っていると、ガチャっと大きな音を立てながら、扉が開いていく。


 先には、真っ直ぐ一本道の通路が続いていた。その左右には石像が並んでおり、どれも屈強な肉体をしている。すべて美しい筋肉が彫刻されており、思わず見惚れてしまう。


 「ん? てか、これ……。」


 石像達をよく見てみると、前世の世界で活躍していた有名ボディービルダー達だった。なんでこんな所に、前世の著名人の石像があるんだ? 


 若干の疑問を抱きつつ、さらに進むと、また扉があった。今度は普通サイズ。ぼーっと扉を眺めていると、筋肉達が目的地はこの先だと教えてくれた。一体なんの部屋なんだ? とりあえずノックしてみると、


 「……入っていいわよ。」


 中から、女の子の声がした。扉開けるとそこには、長い金髪の髪に白いワンピースを着た少女が座っていた。


 「やっと来たのね。ずっと待ってたんだから。」

 

 待ってた? 僕を?

 

 「久しぶりね、ここではマスルだったかしら。」


 どうして僕の名前を? しかも、ここではってなに?


 「君は?」


 「なに? 覚えてないの? あたしよ、あたし!」


 新手の詐欺かな……?


 「生憎、君みたいな女の子と知り合った記憶はないよ。」


 ため息をつく彼女。


 「前世で一度だけ、貴方に話しかけたわ。頭の中でね。」


 「頭の中で……って! もしかしてあの時の、謎の声!?」


 「そうよ。」


 マジかよ。あれって幻聴じゃなかったんだ。


 「まだ名乗って無かったわね。アタシの名前は、アナボリック。女神アナボリックよ。」


 アナボリックって、あの女神像? 随分見た目が違うな。こんなに小さく無かったし。


 「貴方、女神像と全然違うじゃないか、と思ったでしょ!」


 「い、いやぁそんなことないよ……。」


 「これには訳があってね。邪神との戦いで力を消耗したせいで、この姿になっちゃったのよ。ここからも、ここも自力じゃ出られないし。」


 筋肉に聞いた所、彼女がアナボリック本人で間違いないらしい。しかし、なんで女神様なんかが、前世の僕にアドバイスなんてしたんだろ?


 「貴方をここに呼んだのは他でもないわ。この世界に、再び闇が訪れようとしているからよ。」


 「闇?」


 「貴方も知っているはずよ。邪神カタボリックとそれを崇拝する組織が、活動を活発化させていることを。」


 「確かにカタボリックとは、何度か戦ったけど、あいつらの目的ってなんなの? というか、邪神は君が倒したんでしょ?」


 「いいえ、倒せてないわ。封印しただけよ。」


 「カタボリックの狙いは、邪神カタボリックの封印を解き、再び世界を闇に染める事なの。奴らは主に、女子供を生贄として生命エネルギーを搾取し、カタボリックに与え続けているわ。」


 だから、ベリーが狙われた訳か。


 「邪神カタボリックの封印は、もうすぐ解かれるわ。そうなれば、この世界は滅びる。そこで、貴方を転生させた訳。」


 なんで、そこで僕が出てくるんだよ。


 「アタシは、前世の頃から目を掛けていたのよ? 貴方のその類い稀ない潜在能力。鍛えれば、神の領域に至るって。でも貴方ストイック過ぎて、すぐ死んじゃうし。だから、この世界でやり直させたのよ。」


 「その節は、どうもありがとうございます……。」


 「その様子だと、神の領域に至ったようね。」


 「もちろん。僕のトレーニングの賜物でね!」


 「貴方なら、カタボリックを止められる。この世界を救う救世主、それが貴方よ。」


 救世主? 僕がなりたいのは、ボディービルダーなんだけどな。


 「でも、今のままでは足りないわ。更に高みを目指すのよ。アタシが補助してあげる。」


 「え、筋トレ手伝ってくれるの?」


 「ええ、これから先、さらに強大な魔の手が貴方を襲うわ。そのために、もっと力をつけるのよ!」


 女神様に手伝ってもらえるなんて、光栄だな。


 「とりあえず、これからはアタシも同行するからね!」


 「え、同行するってどうやって?」


 「簡単よ、貴方の中に入ればいいし。」


 そういうと、彼女は体を光の粒子にし、僕の体の中に入っていった。


 「(これでバッチリね! これからアタシが側でサポートしてあげるわ! 感謝なさい!)」


 「……てか、プロテインは?」


 「(貴方を誘い出す口実よ。用意してないわ。)」


 嘘でしょ……せっかくここまで来たのに……。全く神様ってのは、勝手なんだから。ということで、女神様が仲間になった。カタボリックを倒すため、更なるトレーニングに励む僕であった。

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