夏といえばバカンスだよね。
……暑い。
暑い暑い!暑過ぎるよほんと。
夏ってのは、本当に暑い。
この世界にも、前世と同じように四季が存在する。春は暖かいし、夏は暑い。秋は涼しくて、冬は寒い。日本では当たり前だった四季が、ここにもある。
そして現在は、夏だ。僕は、そんなに夏が好きでは無い。暑いし。トレーニング中に、何度もぶっ倒れた事があるからだ。筋肉の事になると、歯止めが効かなくなる僕には、夏の気温は合っていないのだ。
ということで、憂鬱な夏が来た訳だが、こちらの世界にも夏には長期休みがある。僕の通っている学園では二ヶ月ほどの休みが設けられており、皆その間に、実家に帰ったり夏のバカンスを満喫したりするのだ。
王女誘拐事件の一件で、またもや王様からご褒美をいただけることになり、夏なのもあって、リゾート地に案内してもらう事になったのだ。そのリゾート地が水の都ルプーという、年中夏の国らしい。せっかくの長期休みなので、パァーッと遊んできなさいと提案してくれたのだ。もちろん、お金は国持ち。
というわけで、僕とマイナ、そしてベリーも同行する事になった。レイヴィアスも誘ったんだけど、
「バカンスだぁ? 俺は行かねえぞ、トレーニングがあるからな!」
と断られてしまった。レイヴィアスも筋トレに目覚めたのだろうか。なので、僕たちは三人で、水の都ルプーに向かう事になった。
フロンタル王国から、馬車と船を乗り継いで半日ほどかかり、周りが海で囲われている島国だ。ルプーの海は、海底が透けて見えるほど透き通っており、まさに絶景だ。
到着した僕達は船を降り、国王が予約しておいてくれたホテルに着いた。このホテルがまた、城かと思うほどの大きく、部屋はなんとスイートルーム。めちゃくちゃ広い。とても三人じゃ使い切れない広さだ。
「やっと着きましたわね、水の都ルプー! ここには、様々な娯楽や出店などがいっぱいありますの。いくら過ごしても飽きませんわよ!」
テンション上がりまくりのベリー。元々アクティブだから、こういう場所が好きなんだろうな。
「でもこの部屋、私達で使うには広すぎないかしら?」
全くその通りだよ、マイナ君。気合い入れすぎだよ、国王様。
「この部屋だけでも、様々な娯楽が楽しめる様になってますの。ボードゲームに、室内で出来るスポーツも楽しめるんですわよ! 後でやりましょう!」
ベリーが指差した先には、見覚えのある細長い台に、しゃもじみたいな形をした板が置いてある。この世界にも、卓球ってあるんだ……。旅館とかに置いてあるイメージだけど、まさか部屋の中に置いてあるとはね……。
「荷物も置けた事ですし、早速遊びに行きましょう! わたくしが案内しますわ!」
ベリーに連れられるまま、ホテルを後にした。
街の方に出ると、大勢の観光客で賑わっていた。リゾート地というだけあって、栄えている。すると突如、目の前に馬車が止まった。扉が開き、男の人が降りてくる。
「ようこそ、おいで下さいました。私は、ルプー観光案内をしております、ガイドと申します。よろしくお願い致します。」
案内人まで付けてくれるなんて太っ腹だな、あの人。
「馬車にお乗り下さい。これから、我が国自慢のルプーランドにご案内致します。」
僕達は馬車に乗り込み、10分ほど揺られた。そこには、屋外プールや観覧車などのアトラクションがあった。一種のアミューズメントパークのようだ。
「ここでは、様々なアトラクションやプールをお楽しみ頂けます。さらに、ルプーランド名物のジェットスライドコースターも御座います。夕方頃にお迎えに上がりますので、それまで目一杯お楽しみ下さいませ。」
そう言ってガイドさんは去った後、早速ベリーが、
「それでは皆さま! わたくしに着いてきてくださいましー! まずは、プールですわよ〜!」
「ちょっとちょっと! 着替えないと入れないわよ。」
「そうでしたわね! 楽しみすぎて、先走ってしまいましたわ〜!」
いつにも増してテンション高い。確かにこう言うとこ来ると、テンション上がるよね。
「それでは、マスル様。わたくしたちは着替えて参ります! 男性の更衣室はあちらですので、マスル様も着替えて下さいまし!」
「うん、わかった〜。」
各々、更衣室に入っていった。
女子更衣室にて。
「さあて、着替えますわよ〜! よいっしょ、よいっしょっと」
どんどん服を脱いでいくベリー。上着を脱ぐと、立派な胸部がマイナの目に映る。
「(嘘!? ベリーってこんなに大きかったの!? 制服の上から見ても、それなりに大きいとは思っていたけれど、まさかこれ程とは……。それに比べて私は……。)」
マイナは、自分の控えめな胸部を見て、ため息を吐く。
「あら、どうしましたの? ため息なんて吐いて。」
マイナは、ベリーの揺れる胸部を見つめながら、
「な、なんでも無いわ……。似合ってるわね、その水着。」
ベリーは嬉しそうに、
「そうでしょう! わたくしのサイズに合う可愛い水着がありませんでしたので、特注オーダーメイドにしましたの〜!」
「グゥッ!」
再び、マイナは心の中で血反吐を吐いた。
それにしても、二人とも遅いなぁ〜。女の子は着替えに時間がかかると聞くけど、男は楽でよかった。下履くだけだし。今日は肌を露出するから、僕のマッスルスタイルをお披露目できる!
日常生活では、身体が大きすぎると不便だから普通の見た目にしてるけど、今日は違う。出せるとこはぜんぶ出して、皆んなにこの美しい筋肉達を見せびらかさないと!
……とはいえ、『ノーマルビルダー』でも三メートルはあるので、それより少し身長を落とした『マッスルスタイルスモールビルダー』で今日は楽しむとしよう。ポージングを決めながら待っていると、
「マスル様ぁ〜! お待たせ致しましたぁ〜!」
ベリー達が更衣室から出てきたようだ。ベリー達が出て来るなり、周りの男達が
「「オオオオー!!!!」」
と歓声を上げながら、腰を引っ込めていた。中には鼻血を出すものまでいた。確かに二人とも凄い美人だし、注目されるのも無理はないね。
「おかえり、そんな待ってないよ。」
「よかったですわ〜。ところでマスル様! どうです、わたくしの姿!」
ヤケに胸を張ってドヤ顔をしてくるベリー。
「うんうん、似合ってるよ。」
すると頬赤らめて、
「そう言って頂けて嬉しいですわ〜!」
ベリーと話していると、マイナが僕の前に立って目を塞いできた。
「ちょ、マイナ! 何するのさ!」
「見過ぎよ……。貴方には目に毒だわ。」
なんだか怒った様子で、マイナが呟いている。見るだけで毒になる事なんてないでしょうに。
「私は……どうかしら……。」
「この手を退けてくれないと見れないよ!」
そう言うと、パッと視界が開けた。マイナは恥ずかしいのか、モジモジしながらこちらをチラチラしている。
「マイナも似合ってるね。」
「そ、そう? なら良いのだけど!」
あれ、またなんか怒らせたかな? 何はともあれ、夏を満喫している僕達だった。




