王女様を探せ!
翌朝、まさかの王女誘拐という事態に国中が大騒ぎだった。僕たちが助けて未遂に終わった昨晩に、また誘拐されたんだろう。
そう考えていると、噂を聞きつけたマイナがやってきた。
「マスル、話は聞いた?」
「うん、カタボリックの仕業だね。」
しかし、ここまで執拗に王女様を狙う意味がわからない。誘拐する目的は何なんだ?
「この一件にカタボリックが関わっている以上、彼女の身の安全が保証されないわ。早く見つけてあげないと、取り返しのつかない事になりかねないわ。」
新聞の記事によると、今朝早くに王城を出たベリー王女と執事のスーピアの行方が分からないらしい。
ベリー王女だけでなく、ただの執事まで攫われた……?
現場には馬車が残されていて、争った形跡はあるものの、血痕などは見つかっていない。しかし、王女様だけが目的なのであれば、執事まで攫うだろうか?
何か引っかかる。昨晩、執事さんに感じた妙な感覚。嫌な予感が当たってなければいいんだけど。思考を巡らせていると、騎士団に声をかけられた。
「マスル殿、マイナ殿、ご同行願います。」
おいおい、なんで騎士団が僕たちのとこに? 半ば強制的に王城まで連行された。案内された部屋には、険しい表情をした王様がいた。
「よくぞ来てくれた……。まあ座りたまえ。」
どこか落ち着きのない感じ、可愛い娘が攫われたとなると、冷静ではいられないのだろう。
「昨晩、其方らが誘拐犯から娘を助けてくれたと聞いている。そして、今朝の誘拐について其方らに聞きたいことがあるのだ。」
「死体を確認したところ、先の魔人の身体に刻まれていた紋章と同じ模様が彫られていた。何か関連がある物と見ている。この紋章に見覚えはあるか?」
王様は、僕たちに紋章の絵を見せた。間違いない、カタボリックのものだ。
「何か心当たりはないか? 教えてくれないか!」
僕とマイナは、カタボリックについて情報を出した。
「この紋章は、悪の組織カタボリックのものです。」
「カタボリック? 聞いたことがないな。」
「カタボリックは、世界各地に拠点を構え、魔人を産み出す研究や、非道な殺戮を行なってる組織です。恐らく、王女様もカタボリックによって攫われたのだと思います。」
「なんと……なんてことだ……。」
そこまで話すと扉が開き、1人の女性が部屋に入ってきた。
「失礼致します。王城にこんなものが……ってマスル!?」
僕の顔を見るなり、驚く女性。どこかで見た事が……って!
「オリス姉さん!?」
「どうして貴方がこんなところに?」
それはこっちのセリフだよ!
「オリス姉さんこそ、なんで王城なんかに。」
「私は今、王国騎士団の魔術師なのよ! いえ、そんなことより陛下、こんなものが。」
オリス姉さんが手紙を机に広げる。そこにはこう書かれていた。
(親愛なる国王陛下。お嬢様は、我々カタボリックが捕らえております。心苦しいですが、カタボリック様の贄として、役に立って頂きます。カタボリック様の血肉として、天へ召されるのですから、お嬢様も光栄に感じることでしょう。探しても無駄です。もし見つけられたとしても、我らには到底及ばない。今までお世話になりました。
スーピア)
やはり、執事が黒幕か。
「なんて事だ! あのスーピアがカタボリックの者だったとは!」
「誘拐された周辺で魔力探知を行いましたが、何一つ引っ掛かりませんでした……。申し訳ございません。」
「どうすれば良いのだ……。わしはこのまま、愛する娘が殺されるのを指を咥えて待っていろとでも言うのか!」
王様の気持ちを考えると悔やまれない。でも、嘆いていても状況は変わらない。
「ご安心下さい。」
「安心などしていられるものか!」
「大丈夫です、。僕たちが必ず助け出して見せます。」
「え? でも……。王国中に魔力探知をかけて、見つからなかったのよ!? どうやって。」
「考えがあるんだ。国王様、必ずベリー王女をここへ連れて帰って見せます。」
「すまない、今頼れるのは其方らだけだ。」
……とは言ったものの、どうしようか。見ていられなくて、つい名乗り出てしまった。魔力探知で引っ掛からないと言う事は、王国をすでに出ているか、何かしらの対策をしているはず。
まさか、あの機械で魔力を吸収して、探知から逃れているとか?
警察犬とかいたら、匂いで捜索できるんだろうけど…。
ん?
犬?
そうだ!
「失礼ですが、ベリー王女の私物を一つお借りしてもよろしでしょうか?」
こうして王女様の探索を始めた僕たちは、さっき借りた王女の私物を、ある男の元へ届けにきた。
「マスル。王女の私物をもらって、どうするつもり?」
「ちょっとね、あてがあるのさ。」
「あてってなに? ていうか、どこに向かっているの?」
「それはねー……お、今日もやってるねー。」
森の中に凄まじい爆音が響く。こんな昼間っからエンジンを吹かしてる奴らは、アイツらしかいない。
「おーい! みんなー!」
エンジンを吹かすのを一斉にやめ、僕に視線が集まる。すると男達が一斉に飛び掛かってきた。
思わずマイナが剣を構える。
「「「ボスー!!」」」
舎弟達が集まってきた。この人たちは、以前、僕が懲らしめた暴走族達だ。
「マスル、この獣人達は?」
「ちょっとね……最近仲良くなったんだ。そうだ、みんな。レイヴィアス知らない?」
「ああ、総長なら奥で筋トレしてまさぁ! 案内するッス!」
奥へ案内されると、そこで熱心に筋トレに励むレイヴィアスがいた。
「総長、お疲れ様デス! ボスがお見えデス!」
その言葉を聞くと、手を止めてこちらに近づいてくる。
「ヨォ、久しぶりだなぁボス。何の用だ?」
「久しぶり、レイヴィアス。これはまた随分鍛えたね。大胸筋がさらに膨らんでるよ!」
「ボスに教えてもらったプロテインってやつのおかげだ。それより何の要件だよ。」
「そうだった、実は頼み事があってね。」
「アンタの頼みなら何でも聞くぜ。」
「助かるよ。実は、僕の友達が攫われちゃったんだ。そこで君の鼻に頼ろうって訳。」
「フン。人狼族は鼻がいいなんて、どこで聞いたんだ? ボス、物はあんのか?」
用意しておいた王女様のハンカチを渡す。レイヴィアスはそれを手に取ると、念入りに嗅ぎ始めた。
「俺は、人狼族の中でも特に鼻が良くてな、どこにいても見つけられるんだ。」
そう言うと、四つん這いになり魔力を高め始める。少しの静寂な時間が流れ、レイヴィアスは、起き上がって歩き出した。
「ソイツの居場所、分かったぜ。」
「マジ? 凄いね、ほんと。」
「急ぎなんだろ? とっとと行こうぜ。オイ! ライドウルフをボスたちの分も持ってきてくれ。」
「オス!」
そう言うと、舎弟がどこかへ走っていき、眩しい光を放ちながら帰ってきた。そこには以前から気になっていた、狼くんが二匹運ばれてきた。
「コイツでいきゃあ、すぐで着く。行こうぜ。」
……って言われても、乗り方とかわかんないだけど?
「ソイツのハンドルを捻ったら動く。モタモタしてたら置いてくぜ。」
このライドウルフなる物。大型バイクと同じサイズの狼で、牙がハンドルの様に横に伸びており、夜になると目がライト代わりに光る。前足と後ろ足それぞれに、車輪の様な物が付いており、左右の足を揃えると、合体して車輪になる。まさしくバイクだ。
僕とマイナは、狼くんに跨って本格的に王女様救出作戦を開始するのだった。




