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異世界でも僕はアナボりたい!!  作者: 狐月 かぶと
第一章
10/19

悪の組織は姑息だねえ

 カタボリック魔人育成施設にて。


 「クソが!」


 激しく机を叩きつけ、怒りを露わにするネイザリス。


 「ありえない! プロトスルトが、いとも簡単に倒されるなんて……!! あいつは誰だ! あの力、デタラメにもほどがある!」


 「小娘は、あの男を隠れ蓑にしておったのか!」


 「派手に王都を襲撃したのに失敗したとなると、もう跡がない……。すでに、ここは割れているだろう。だとすれば、奴らが攻めてきたところをこいつで……」


 「見ていろ、筋肉ダルマ……。必ず私がこの手で……確実に殺す!」


 あの事件の一件から王都の周りには、厳重な警備が敷かれるようになり、あちこちに騎士団が派遣されていた。まあ仕方ないよなー。王族だって、この街に暮らしてるわけだし。


 でも、なんだろう。前世は警察が治安を維持していた訳だが、警官や騎士をみると、なんだか逃げ出したくなるような後ろめたい気持ちになるのは何故だろうか。まあ、そんなどうでもいい事はともかく、今日も平和な日々が約束されている。


 そんな中、僕とマイナは例の研究施設を突き止め、突撃する手筈を整えていた。


 「私が囚われていた施設が割れたわ。場所は、フロンタル山よ。表向きは児童養護施設とされているけれど、真っ赤な嘘ね。」


 「へー、よくそれでバレないよね。」


 「恐らく、王国内部にも内通者がいるのね。そのおかげで、今まで隠蔽してこれたのかもしれないわ。」


 さすがは、悪の組織。やることが姑息だねぇ。それにしても、カタボリックの目的ってなんだろう? やっぱりベタに世界征服とかだろうか? なんにせよ、君達の野望は僕の夢の実現の踏み台にさせてもらうよ。


 「……て言う感じでどうかしら、マスル?」


 「え?」


 「ちょっと、聞いてなかったとか言わないでしょうね……」


 まずい……。マイナがすごい形相でこちらを見てる、誤魔化さないと!


 「き、聞いてたよ! とりあえず、目の前の敵を倒せばいいんだよね!」


 すると、呆れたように、


 「はあ……。まあ、あなたはそれでいいわ。じゃあ早速向かいましょう。」


 若干呆れられつつ、カタボリックの研究施設に向かうことにした。フロンタル山に着き、敵陣に近づくにつれ、あたりが薄暗くなっていき、何が起きてもおかしくないという雰囲気が漂っていた。そして到着した僕たちは、堂々と正面玄関から施設へ侵入した。少し、マイナの手が震えている気がした。


 「たのもー!」


 すると、施設の研究者と思われる者たちが驚いたようにこちらをみる。


 「な、なんだお前たちは…。」


 驚く彼らを尻目に、マイナは剣を抜いて即座に切りつけた。次々と目の前にいる研究者達の首を刎ねていく。その心は、復讐心に燃えていた。こんなマイナを見たのは初めてだ。だが、無理もない。今まで彼女が受けてきた仕打ちを思えば、因果応報だ。敵を次々と切り倒して、奥へとどんどん進んでいると、マイナが急に立ち止まってある扉を指差した。


 「ここに囚われた子達がいるはずよ。」


 部屋に入ると、そこには大体十歳〜十五歳あたりの子供達が囚われていた。僕たちはすぐさま駆け寄って、手や足を縛っていた鎖を解放した。


 「遅くなってしまってごめんなさい。これで皆んなは自由よ! ここは危険だから、早く外へ避難して!」


 「マイナお姉ちゃんありがとう……。」


 囚われていた子達を外へ逃し、ふたりで安堵の表情を浮かべる。


 「でも、変ね。ここには、カタボリックの幹部であるネイザリスがいるはずよ。私達がここまで大胆に侵入したのに出てこないのは変ね。」


 たしかに、ここのボスなら、不審者を排除しに来るはずだけれど。若干おかしいなと思いつつ、僕たちは先に進んだ。


 「ここがネイザリスの部屋よ、警戒していてね。」


 「わかった。」


 ゆっくりと扉を開けた先には、猫背のハゲたオジサンが僕らを待ち構えていた。


 「ケッケッケ。よく来たな。No.0789、それに筋肉ダルマ。」


 「もう貴方に逃げ場はないわ、ネイザリス。大人しくなさい!」


 そうだ! あと筋肉ダルマって言うな!


 「ケッケッケ。逃げ場? 元から逃げるつもりなどないわ。ここでお前達を殺し、カタボリック様の贄としてくれる! こやつの力でな…! 出よ、キングスルト!」


 ネイザリスの呼びかけに応じるように、大胆に壁をぶち破りながら現れたのは、先日倒したのより数段サイズアップしたゴリラ君だった。


 「ウホォォォォ!!!!」


 「さあ、キングスルトよ! 奴らを握り潰せ!」


 「この前のスルトよりも、格段に強いわ!」


 確かに、前よりさらに筋肉もサイズアップしている。ぱっと見た感じ、三倍は強い。燃えるねー。ここは僕の腕の見せ所だ!


 「あいつは僕に任せて! マイナはネイザリスを頼める?」


 「え? でも……」


 少し不安そうにする彼女。


 「大丈夫! 今の君は、あいつに利用されてた頃とは違う。自分の筋肉を信じて! マイナならあいつなんか敵じゃないさ!」


 「そうね…。ネイザリスは任せて!」


 「ふん、小娘が! なぶり殺してくれるわ!」


 マイナがネイザリスに飛び掛かる。その圧倒的なスピードにネイザリスは反応できず、右腕を切り落とされる。


 「ぐぬわぁぁ!! バ、バカな! なんだこのスピードは!」


 「もうあの時の私ではないわ。貴方を殺すため、力をつけて戻ってきた。今までの分、これで返してあげる!」


 マイナが剣を構え、剣に魔力が集約されていく。


 「これで終わり。」


 次の瞬間、ネイザリスの首は宙高く舞っていた。


 「はえ??」


 状況を理解できないまま、首は地面へと落ち、


 「こ、こんなことが……だが、キングスルトには勝てん。貴様らもろとも道連れじゃ! ケッケッケ!!」


 そう喚くネイザリスの脳天をマイナが剣で貫き、ハゲオヤジは絶命した。


 「遂にやったわ…。皆んな、やったわよ…。」


 彼女が見事な勝利を収めた中、僕はキングスルトと対峙していた。


 「うまくやったみたいだね。なら、僕も動くとしますか! マッスルチェンジ!」


 いつもの掛け声と共に、マッスルフォルムへ変化を遂げる。この姿を見たキングスルトは、激しく胸を打ちつけ、威嚇する。僕もそれに応え、同じように胸を打ちつけて威嚇した。すると、凄まじいスピードで接近してきたゴリラ君が、渾身の右ストレートを僕の頬に繰り出してきた。施設の壁を何枚も貫き、吹き飛ばされる僕。


 「マスル!」


 施設の外まで吹き飛ばされた僕は、瓦礫を押し除け、立ち上がる。


 「すごいパワーだ。こんなに吹き飛ばされちゃったよ。やるね、キングゴリラ君。」


 すぐさま、次の攻撃を仕掛けて来るキングゴリラ君。もう一度、右ストレートを僕の顔面に向けて繰り出して来るが、もう同じ手は喰らわない。僕はその拳を片手で受け止めた。驚くキングスルトに、


 「さっきのお返しだよ。受け取っておくれ!」


 僕の渾身の右ストレートをキングゴリラ君の頬にお見舞いした。命中した拳は、顔面の骨をバキバキと粉砕していき、キングゴリラ君を後方へ吹き飛ばした。なんとか立ち上がるも、立っているのがやっとのキングスルト。


 「君の筋肉に敬意を表して、とっておきを見せてあげる。」


 全身の筋肉を肥大化させ、脈打つ筋肉を右腕へ収束させ、通常の三倍まで膨れ上がる。今にも爆発しそうなその腕で、キングゴリラ君の腹部目掛けてアッパーを繰り出した。必殺の一撃。


 「アナボリックパンチ!!」


 「ギャオオオオ!!」


 当たった瞬間、キングゴリラ君は遥か上空へと消し飛び、層雲に大きな穴が空いた。曇り空が一瞬にして快晴へと、姿を変えた。晴々しい勝利を飾った僕は、空に目掛けてガッツポーズをするのだった。こうして、カタボリックの研究室を滅ぼした僕たちは、囚われていた子供達を街の児童養護施設に預けるなどした。ひと段落した頃、町のカフェで打ち上げをしていた。

「マスル、本当にありがとう。貴方のおかげで、あの子達も救うことができたわ。」 


 「いいよ、そんな。僕はただ、君に着いて行っただけだよ。」


 「そんな事ないわ。貴方がいなければ、プロトフェンリルに殺されていた。あの子達を助けることもできずにいたでしょうね。全て貴方がいたからできたことなのよ。」


 「そんな大袈裟な。君が頑張ったからだよ。お疲れ様、マイナ。」


 「マスル……本当にありがとう……」


 涙を流す彼女を見た周りの視線が僕に集まる。


 「わわっ! ちょっとマイナ! 何も泣くことないじゃんか! みんな見てるから!」


 僕がそう言うと、マイナがクスッと笑った気がした。


 「私の目的は果たされたわ。でも、貴方の目的はまだ果たされてない。だから今度は、私が貴方の手伝いをさせてもらえないかしら。」


 「え、いいの? 助かるよ!」


 「もちろんよ、貴方は私の命の恩人なんだから。それに……。」


 なぜか頬を赤くする彼女。


 「ん?」


 「いえ、なんでもないわ。この言葉は来るべき時まで取っておきましょう。」


 「なになに? 気になるじゃんかー。」


 「ダメよ。教えてあげない。」


 「えー、マイナのケチ。」


 「それで結構よ。全く、貴方って人は……。ふふっ。」


 楽しそうに笑う彼女。心なしか初めて会った時より明るくなった気がした。マイナの復讐も果たし、こうして笑顔を取り戻せただけで、頑張った甲斐があったと思う僕であった。

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