ボディービルダー、転生する。
僕は世界一のボディービルダーの称号を獲得した。数多のライバル達を破り、遂に世界で最強のボディービルダーへと上り詰めたのだ。だがしかし、僕が目指すものとは程遠い。
僕は幼少期の頃、突然頭の中に声が聞こえた事がある。その謎の声はこう告げた。
「筋トレをしなさい。そして神の領域へと至るのです。」
その声に導かれるように、今日まで筋肉のためだけに生きてきた。世界一のボディービルダーになって、少しは努力が報われたかにも思えたが、僕はまだ満足できずにいた。
「こんなんじゃダメだ……。もっと……もっと筋肉を鍛えないと……!」
こうして更なる高みを目指すため、厳しいトレーニングに明け暮れていた。その結果…。
「大丈夫ですか!? 誰か! 誰か救急車!」
僕は死んだ。過度な減量により栄養失調で死んだのだ。やらかしたー。完全にやらかした。
最近流行ってる絶食トレーニングなるものを試してみたら、やり過ぎてしまったのだ。流石に1ヶ月間、プロテイン以外の栄養を摂らずにトレーニングしたのが良くなかったのだろう…。
こうして僕の神の筋肉への道は終わりを告げた。
…と思った矢先、僕は目を覚ました。見覚えのない天井、見知らぬオジサン達がこちらを覗いてる。
「(ここはどこだ? 病室とは違うみたいだけど…。奇跡的に息を吹き返したとか? )」
すると、とても美しい顔立ちの女性が僕の顔を覗き込む。妙に息の荒い感じでこう呟く。
「ああ…可愛い我が子…。生まれてきてくれてありがとう…。」
ん? 我が子? 生まれてきてくれてありがとう? その言葉に驚きを隠せず僕の身体は別の誰かに持ち上げられ、今度は屈強な男に抱きかかえられた。
「おお…! 元気な男の子だな! たくましい男に育ってくれよ! 」
僕の周りを囲む使用人らしき人達が立ち上がり、一斉に拍手をし出した。
「(これは…あれだ。僕、転生しちゃったみたい。)」
この日を境に僕はこの世界で第二の人生を歩むことになったのだった。