戦闘訓練
ご近所をぐるりと走ってから家の裏庭…『迷宮』の前へとやってきた。
「ご苦労さん~」
「はっ」
ゲートの前には1人の男が立っていた。どうやら今日の門番さんらしい。まあ門番は何かが起きた時に上へと連絡をする人で、非戦闘員。上からの指示で私へと連絡を取る人でもある。なので初めて顔を合わせる人は最初にここに来た時に私と挨拶を交わしているので、もちろん全く知らない人ではない。
「誰か『迷宮』へ入ったか?」
「…いえ、今の所記録上は0ですね」
手に持っているタブレットを見てから古場さんへと返事を返す門番さん。どうやら出入りする人は記録されているらしい。
「だよな~ 気軽に入れんからなっと。よし、次はストレッチな」
門番さんに見られながら私達はストレッチを始める。お互いがお互いをサポートしながらやる形だ。というか古場さんは話からすると30前後だと思うけど、全然息切れをしない。やっぱり『冒険者』をしている人は一般人より体力があるんだろうか。
「桜思ったより体力あるな」
「はあ…まだ若いですし」
「そういえば今いくつだ?」
「16ですね」
「ぐはっ 俺の年の丁度半分かよ!」
32歳か。思ったよりも若く見えるものだ。息切れしないのもそうだけど、見た目だけなら20台前半でも通る。もしかしたら『迷宮』に通うとそういった効果もあるのかもしれない。まだ10年しかたっていないのでわからないことが多すぎるのだ。ただ、放置しているとモンスターがあふれると言うのは早いうちに発覚している。人知れず出来上がった『迷宮』からモンスターが出てきたことによって、初めて『迷宮』というものを確認したのだから。
「よし、ストレッチは終わりだ。次はこいつだな」
渡されたのは木刀。手に取りしげしげと眺める。名前は知っているけど手に取るのは初めてだ。
「とりあえず剣の動きからな」
「はあ…」
古場さんが木刀を手に持ちいくつかの構えと動きを見せてくれる。それを眺めながら私はこんなことを考えていた。なんで剣なんだろうか…と。武器と言っても色々あると思う。あれから私も『迷宮』に入らないといけないからと少しは勉強した。だからなぜ私は剣を使うことを前提に練習をさせられているのかに疑問を抱く。
「ほら、桜もやってみろ」
まあ大人しくやりますけども。私は木刀を構え振り下ろす。初めて振り下ろす木刀は思ったよりも重くて、まっすぐ振ったつもりでもどこかヘロヘロとした動きをしている。それでも気にせず右へ左へ…両手で持って色んな位置で構えなおし、時には片手で右と左ともち変えたりしながらも振ってみる。
「まあ最初はそんなもんだ。じゃあ次はちょっと打ち合ってみるか。軽いチャンバラレベルだ。俺がモンスターとしてお前に向かったと仮定してどう対応したらいいかやってみろ。1つだけ言えるのは何もしないでいると攻撃を受けると言うことだけはわかっておけ。いくぞっ」
古場さんが木刀を上段で構えゆっくりとこちらへと向かってくる。相手の動きに対してどう自分が動けばいいのかを考える訓練というところかな? ある程度近づいてくるとゆっくりと左から右へと木刀が降りてきた。ゆっくりなので私はそっと横へと避ける。
「モンスターはこんなにゆっくりやってくれないぞーっ 実際にお前は避けられるのか?」
そうか…実際のことを考えて動かないとだめなのか。再びこっちに向きなおした古場さんが同じように木刀を振り下ろす。私はその木刀をはじき返すことに。見た目よりしっかりと握っているのか私が木刀で弾き返そうとしても止められてしまった。
「そんな気の抜けた振りだと押しまけるぞ!」
ふむ…また振り下ろす古場さん。私はそれを待たず右へと動くと古場さんの胴体に向って木刀を思いっきり叩きつけた。
「ぐはっ おま…っ 防具つけてないのに生身に思いっきりやるか? 普通ありえないだろうがっ」
私が叩きつけた個所をさすりながら古場さんに怒られた。若干涙目になっている。
「はあ…まあそうだ。相手の攻撃を待っていないで隙があればガンガン叩きこめ。もちろん相手がスキルを使ってくるかもしれないのでそのあたりは警戒しないといけないが…」
なるほど…モンスターもスキルを持っているのがいるんだ。モンスターについても勉強しておいた方がいいのかもしれない。
「それがわかったならまずは30分ほど素振りだ。振り方は上段から振り下ろす感じでまずはやれ」
「わかりました」
大人しく素振りを始める私。その間も考えてしまう…本当に私はこの武器でいいのかと。どうせなら色んな武器を使って見て使いやすいものを選びたかった。
何度か木刀を振っていると気のせいか音が変わってきている気がする…それと同時に木刀の重さが気にならなくなる。それだけじゃない。色んな振り方がなぜか理解出来た。さらに振るだけじゃなく突き刺す動き…地面を削り取り砂埃をあげる。思ったままに色んな動きをやってみる。
「おいおい…どうなっている。ちょっとやめーー!」
「はあ…」
「息も切らさないか…ちょっとステータスを見てみろ」
私は素振りをやめステータスを呼び出した。
▶名前 桜
▶年齢 16
▶身体能力
HP 315(+15↑)
MP 100
腕力 120(+40↑)
俊敏 64(+14↑)
防御 50
器用 100
魔力 50
運 30
▶戦闘スキル
▶支援スキル
▶常駐スキル
【環境適応】
【猛毒無効】
【家事】
【持久力増加】 new
【剣術】 new
▶魔法
知らない間にスキルが増えていた。ついでにいくつか数値も増えているみたいだ。
「どうだ何か変化は?」
「スキルが増えていますね。見せますか?」
「そのほうが早そうだ」
「ステータスオープン」
古場さんにも見えるようにステータスを呼び出す。上から順に眺めているらしく、視線が上から下へと下がっていく。
「話には聞いていたが…やばいスキルだなこれは。こんなにあっさりと剣術が出やがった」
どうやら私が手に入れた最初のスキルがやばいようだ。