ストリーマー1話高城麟太郎
ストリーマー1話高城麟太郎
ホログラフ実弾演習。
まったく同じ地形、同じ建造物の演習場が2つ。攻撃側と防御側が別々に布陣。
カメラが撮った画像を、ホログラフで投影。実弾の被弾箇所をPCが判定。
2つの演習場は背中合わせになっており、流れ弾による事故は起こらないはずだった。
高城麟太郎陸士長は、凸スナを敢行した。次々と防御側の左翼塹壕掩蔽壕を潰して行く。
右翼線に対する陽動に乗せられた防御側は、左翼線を崩壊されつつ有った。
「あり得ない!演習プログラムのバグだっ」
マッケイン主任教官はツバを飛ばして叫んだ。
モニター前のオペレーターが言う。
「ミスタータキに、不正は確認されません。信じられない高機動と陽動チームとの連携。あの高機動の中での正確な照準。的確な切り返し。さすがはザSGシューター」
マッケインは、自分が育てた防御側チームが、中央右翼同時に崩壊するのを呆然と見つめた。
ビービービー
…負傷者発生。負傷者発生。メディカルチームはアルファフィールドA10エリアへ
壁のスピーカーが緊急情報を流した。
「カメラをズーム。誰だ?」
「ミスタータキです……捻挫でしょうか?」
右足を押さえて止血帯を巻こうとしている。
メディカルチームが到着する。
「何のケガだ軍医」
…銃創です。弾はおそらく…破片で残ってます
「演習中止。演習場内の移動を禁止。三田3佐を至急お呼びしてくれ」
高城は、少し右足を引き摺りながら会社を出た。
民間軍事会社で、装備の調達業務を任されている。30を過ぎたが、人間不信になり結婚もせず、自衛隊時代の彼女は2年前に結婚した。
中古のパジェロミニに乗って実家に戻る。
かつての子供部屋は、ゲーミングPCと配信機材で埋まっている。
FF3。新シリーズのFPSフィールドを立ち上げ、マウスを握る。
あえて、VRモードにせず。モニターでゲームを開始する。
数ラウンドやって、晩飯を食べに出た。
子供の頃から有る定食屋八起き亭で、鯖味噌定食を食べていると、高校の先輩が入ってきた。
「麟太郎。帰って戦争ゲームか?」
「FPS」
「おっちゃん、鯛めし定食ね……戦争ごっこは休みにしてさ。俺のテスラスポーツでナンパに行こうぜ!なっ」
馬鹿力で肩を叩く。
「ミヤケ先輩。また嫁さんに怒られますよ?」
「いやいやいや。お前の婚活だから」
高城は鯖味噌定食を食べ終わった。
「今日9時から生配信が有るので…ミヤケ先輩まだそれ提げてるんですか?使い道無いのに」
ミヤケ先輩は、暗視ゴーグルクラッシャーを腰にカラビナで提げている。暗視ゴーグルをホワイトアウトさせる高輝度指向性マグライト型投光器で、懐中電灯としては照らす範囲が狭すぎる。
高城は立ち上がった。
「待て待て待てよ。生なら別の生にしようぜ…おい……待てよ。まったく」
定食屋のおっちゃんが、鯛めし定食を持ってきた。
「麟太郎。自衛隊でケガして変わっちまったな。何が有ったが知らねえが」
「おっちゃん。寂しいよ。力になってやりたいのに」
「まぁ、気に病むな。野郎は自分で乗り越えるしかねえのさ」
おっちゃんはミヤケ先輩の肩を叩いた。