表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

詩になりたかった何か。

暗闇の中で

作者: Noisy

 わたしが自身の過去について思い出せることは多くありません。

 記憶喪失というわけではなく、思い出すためのきっかけが、ほとんどないのです。

 楽しかったこと、哀しかったこと、悔しかったこと。

 そのどれもの経験が、わたしには乏しいのです。


 何不自由なく、というほどではありませんが、自由に生きてきました。壁に当たることもなく。当然乗り越えることもなく。


 笑うことは、あったはずです。泣くことも、あったはずです。痛いことも、全く無いというわけはないでしょう。


 人と付き合うことが苦手です。そのきっかけを作ることはとてつもなく難しく、関係を維持することは不可能に近い。そんなことですから、他者と衝突すらしないのです。そもそも同所に存在することが無いのですから。

 こちらから全く働き掛けないようなわたしには、当然働きかけも返ってはきません。

 独り言を拾う耳はなく、テレビと会話していた方が幾分かはマシでないでしょうか。

 返すことに慣れていない頭は、咄嗟に言葉を紡ぎません。口も動きません。


 空を見上げ、笑ってみたり。川に向かって音のない叫びをあげてみたり。

 最近、言葉を拾わなくなりました。

 わたしの耳は、声を音として認識するようになりました。

 わたしの目は、文字を図形として認識するようになりました。

 そんなことですから、わたしに言葉は判りません。

 最近は、まともな文字を書くこともできません。


 入力機器を介してでしか、わたしはこの言葉を紡ぐことができないのです。


 自身の体で賄うべき機能を外部に依存して、わたしは自分の存在意義がますます不明瞭になっていくのを感じます。この存在に、なにか役目はあるのでしょうか。社会の部品としてでさえ、用を為さなくなってきているこのわたしに、このまま生を続ける理由は、あるのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ