01.私たちのいつも通りの日常
帰り道、二人の学生服を着た少年少女はお互いに今日のあった授業の内容や、今日あった出来事について話していた。ある程度お互いに興味があったことを話し終わったそんな時、褐色肌の少年はからかった口調で薄茶色の髪と瞳をした少女に話しかける。
「天使ちゃん、今日の放課後どうする? カフェ行く? 図書館に行く? それとも俺ん家?」
本を読みながら歩いている少女の気を惹かせたいのか、顔を覗きながら言う。
天使ちゃん、そう呼ばれた少女はつ驚く様子もなく無表情で答えた。
「なんですか、キヨくん。その嫁が夫にご飯かお風呂か自分かを迫るみたいなノリは、今日は本屋で」
「アハハー! 釣れないんだから、天使ちゃーん。そういうところ、俺は問題ないけどね」
「そうですか」
私たちは、恋人。けれどどこにでもいるような普通の恋人じゃない。
どこにでもあるような、普通の関係じゃない。
「今日は伝言文庫の新刊買いたいんだっけ?」
「ASOの新刊があるんです」
「じゃあ、行きますか! 行った後、俺ん家ね? ほい。手、離さないでね」
「ありがとう、キヨくん。キヨくんも、私の手を離さないで」
「もちろん、安心してくれ。俺が生きてる限りはずっと傍にいるよ」
「そういうキザなセリフ、本当に出てくるの娯楽物の中だと思ってました。もし、私じゃない誰かを本当に好きになった時、その言葉を言ってあげたほうがいいですよ」
「今の彼女に対して言うべきじゃなくて?」
「それはどうでしょうね」
「あ、逃げたなー!?」
幸子は清の手を握り、離さないようにしっかりと掴む。
どこにでもいる恋人のようなフリをした二人。
これは天上幸子という少女と、安里清という少年との友情と呼ぶには軽すぎる、愛と呼ぶには重すぎる……そんな青春の物語。