それではごゆっくり
「あ、はいはい。
そういうのいいから」
「意味があるのか、だって?
うーん、むしろ何で意味がないっておもうのかな?」
「何も生み出さない?
うーん、つまりどういうこと?」
「復讐にはなんの価値もない?
それはどうして?」
「……どうしたの、早く答えてみてよ。
全部そちらが言ったことなんだから」
「なんで意味がないとか価値がないとか言うのかな?
そこがまず分からない」
「だいたいそれって、相手のやらかしたことを放置するって事だよね」
「悪さを放置してどうするの?」
「やらかした奴にやり返さないって事は、それって相手の悪事を認めるって事だよね」
「君は共犯者になれっていいうのかな?」
「まあ、君は既に共犯者だけどね。
悪さをした奴を見逃せって言ってるんだから」
「つまり、悪さをした奴を排除するっていう意味が復讐にはあるわけだ。
でも、それを否定する君は、悪事への加担者である援護者であり、擁護者であるわけだね」
…………
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…………
…………
「うん、罪を憎んで人を憎まずね」
「ところで、罪を犯すのは人なんだけど、どうして人と罪が切り離されるのかな?」
「そもそも罪っての何もないところに発生するわけじゃないし」
「やらかす奴がいて発生するのが罪だよね」
「犯罪者や加害者がいなければ、罪なんて発生しようがないわけだ」
「なのにやらかした奴を放置して、結果として発生する罪だけを憎むってどういうこと?」
「加害者を放置すれば、似たような問題がその後も発生する可能性が出てくるわけでもあるのだけど」
「それでも結果である罪だけ問題視するってのはどういう考えによるものなんだろうか?
明快な回答をどうぞ」
…………
…………
…………
…………
「うん、関係のない者まで巻き込むなと」
「なんで罪だけを憎むのかの答えもないし、復讐が何も生まないということの説明もないけど。
話をそらしたいのかな?」
「本当に自分の都合の良いことしか口にしないね。
話にならないよ」
「でもさ、関係者っていうかやらかした奴の縁者とかだけど。
それって関係がない人たちなのかな?」
「もし本当に関係がないっていうなら、関係のない人間がどうなろうと知ったことじゃないよね」
「だって、関係のない人間なんでしょ。
そんな人がどうなろうとあなたには関係がないでしょ。
なんでそんな人達のことを気にするのかな?」
「関係がない人間なんだから、どうなろうと気にしなくていいよ」
「こっちはこっちでそいつらの処分はしておくから」
「ああ、もちろん関係ない人にはどうでもいいことだけどね」
…………
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…………
…………
「昔のことだろ……か」
「そうだね、昔のことだね」
「それで、それが止める理由になるのかな?」
「だって、やらかした事に変わりはないでしょうよ。
それの清算がまだ済んでないんだよ?
何も終わってないし、片付いてないから」
「時間がどれだけ経とうと変わらない。
やらかした事の清算がされるまではずーっと続いていくんだよ」
…………
…………
…………
…………
「許しねえ」
「それって最低最悪だよね」
「だって、悪さをしたのを認めろってことでしょ。
どんな犯罪天国なの、それって」
「許しなんて悪事の際たるものだろ。
そんなのをどうしてやれっていうのか。
さっぱり分からないわな」
「それで誰がどれだけ得するの?」
「加害者を放置して、同じような事件や問題を量産するだけだぞ」
「それとも、悪意を野放しにしろってのか?
許すってのはそういうことだろ」
…………
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…………
…………
「復讐ってのは、悪さをした奴を取り除くってことだ」
「それの何が悪いのかさっぱりわからない」
「これが駄目っていうなら、警察とか裁判所とかいらないってことになるぞ」
「やらかしたからやり返すってののあらわれが、こういうものだろ。
それを否定してどうするんだ?」
「それなら、悪さをした奴が一番得をするだろ」
「どうしてそんな事をしろっていうのか、さっぱり分からないよ」
…………
…………
…………
…………
「まあ、お話はこれくらいでいいかな。
こっちもそれほど暇じゃないし」
「それじゃ、がんばってくれ」
「なに、死なないようこっちも努めるから」
「だから、出来るだけ長生きしてくれ」
「でないと、仕返しが途中で終わるからね」
「そうならないように、可能な限り長生きしてくれ」
「その間、出来るだけの仕返しはしていくから」
まあ、たまにはこんなものも。
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