プロローグ
黄昏の空を1人の男が歩いている。「いやー今日も仕事疲れたなぁ...」ふとそんなことを呟いてしまった、しかし彼のテンションはそこまで低くない、むしろ高いと言っても過言ではないほどに、今すぐにでもスキップしたい程にウキウキしている。
そう、今日は給料日なのだ。彼・・・五十嵐御影は生活の最低限の金額以外とあるもののために貯金をしていた、そして今日の給料日でそのある物が買えるためにこれでもかという程にウキウキしていた。そう、ウキウキしていたのだ。まさかこの後数秒後に不運に巻き込まれるとも知らずに。耳にイヤホンを付けてお気に入りの曲をかけながら帰っていた、ちょうど工事中のビルの手前に差し掛かった、「ーーーー!」向かいの歩道のオバチャンがこっちに何かを必死に訴えてきている。(何だあのオバチャン...もしかして俺が大金持ってるから犯罪者かなにかと勘違いされたのか?それはまずいな、自分のお金だってちゃんと言わないとな。)と思いイヤホンを外す。外さない方が幸せだったかもしれない、「あんた!早く逃げなさい!」とオバチャンは言っていた、そしてオバチャンの怒声が悲鳴に変わった。ふと、時間が遅くなったような気がした、上から何かが来ているような、そんな予感がする、(嫌な予感だそんなこと有り得ないのに...)そう思いながら上を見る、いや、見てしまったのだ。そして分かった、オバチャンがこっちに必死に伝えたかったこと、上から来ている物の正体も、
「ホントに俺ってツイてねぇ...」
ガシャァァァァン!
彼が最後に聞いたのはそんな音だったのだろう。
そして五十嵐の生は終わってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
意識が覚醒する。そんな表現が相応しいだろうか、彼はまるで朝起きるように意識が目覚めた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!ってあれ、何だ...?体が動かない...声は出るのにな...なになに!?俺どうなってんの?体ないぞ!」
返事はない、表現するならば真っ白な空間で揺蕩っていると言うような感じだろうか、体はない、ただ、心地よい、何となくそんか感じがする。
《...ほう、珍しい、自我のある魂がおるな 》
空間に響く、そう表すようか声が聞こえる
「誰かいるのか!おーい!俺はどうなったんだ!ここは何処だ!俺はどうなったんだ!」
《 ...古の制約により貴様のところに送るぞ、フィアリニアス 》
そう聞こえると同時にまるで何かに吸われるような感覚を覚えると、景色が変わる、目の前には祭壇の様なものがある空間になる、
「無視された上に違う場所に飛ばされるとか嫌われたかと思うじゃん...」
ちょっと悲しくなった。《はははっ!面白いこと考える人間だね!やっぱあいつの世界の知性体は粒ぞろいだ!さぞ僕を、僕の世界を楽しませてくれるんだろうね! 》
「っ!」
《まぁまぁ落ち着いてくれよ、僕は君の味方って理由でもないけど敵ではないよ! 》
「あっ、悪い悪い、あのジジィみたいな声のヤツと違って会話が出来そうだったから嬉しくて!」
《そっちかい! 》「あれ?違いましたか?あぁスミマセン自己紹介がまだでしたね!初めまして!五十嵐御影と申します!大手企業の人事部で働いていました!よろしくおねがいします!」
《全く...ほんとに面白いね君は、それと自己紹介がまだだったね、僕の名前はフィアニリアス、このタミルコアと区分される世界の管理職、神、やってます! 》
「えっ...えーーー!本当ですか!申し訳ありません!私のような愚民がお話していいような相手ではありませんでした!出過ぎた真似をお許しください!」
《そんなに改まらないでよーもう...僕だって久しぶりの 【転生者】だったから嬉しかったんだよ!ちょっと待ってね!今現界するから!》
そう聞こえた途端、世界が真っ白になる、そして目の前には中学生くらいの男とも女とも言い難い可愛らしい少年が立っていた、
「よっと...こんなもんかな!どうかな?久しぶりに現界したからちょっと加減を間違えて魂数個くらい消滅させそうになっちゃったけど何とかなったよ!」
可愛い顔してさらりと消滅とか怖いことをおっしゃいますね神様、テヘペロしても許されないぞ許すけど。
「すごい...なんと言うか男性でも女性でもどちらとも言えない、完璧な顔立ちですね」
素直に思ったことを口にすると神様はちょっと照れた、かわいい。
「さてと、気を取り直してっと、君は自分が死んだことは理解してるね?」
「それは、まぁ...ってことは夢ではないんですね」
「まぁそうなるかな、君はあのオジサンの神様が管理してた《アース 》の住人なんだよ、で、《アース 》では邪神の存在が消滅してたけどこちらの世界ではまだ邪神が存在するんだよ」
「えっ、邪神って存在するんですか?ク○ゥルフとかハ○ターみたいな?」
「そうなんだ!、神様への夏休みの課題みたいなものでね!世界を創造するとオマケみたいに邪神がついてくるんだけどね、邪神が人間の発展を邪魔するんだよね、」
「邪魔?具体的に言うと?」
「うん、彼らは自分のことを信仰する奴の中に加護を与えるんだ。この加護を与えられた奴らが発展を妨害するんだよ、邪神は神が嫌いだからどうしても潰したいらしくてね...賢者と呼ばれるほどの人間が沢山殺されちゃったんだ...」
「邪神は人の邪魔をするのか...」
「人と言うよりは一定の文明力で固定しようとするってことかな」
ふむ、つまり画期的な技術や知識が広がれば邪神が暗躍するって事か...
「話を戻すね、この邪神がいる限り文明力が発達せずに一定のラインで均等になってしまうんだ、同じって事はどんどん腐っていく事になるから魔王すらも勇者が現界するまで諦めてる連中が殆どなんだ、で、このジレンマに刺激を与えるために、強い自我を持つ異世界の人間をこちらの世界に転生させることにしたんだ。」
なるほど、要は自社がジレンマに陥ってる時に外部の企画者を呼ぶのと似たような感じかってん?今聞き逃せない単語があったような気がするんだが...
「転生?って事はもしかして俺生き返れるの!?」
「まぁそうなるね、実際君たちがどんな道を歩んでも必ず技術、思想、感情なんかに少なからず刺激を与える事が分かっているからね!感謝してね!普通なら輪廻を巡って畜生道だったんだよ!えっへん!」
神様がない胸をはってふんふん言ってる、かわいい
「じゃなくて!って事はフィアニリアスのお陰で俺はまた人生やり直せるのか?」
「そうだよー、記憶も持ったまま行けるし今なら即決して頂くとサービスがございます」
「乗った!」
考えるまでもない、また人間としてやり直せるなら即決でも何でもしてやるさ!
「おっ!いいねいいねー!思い切りのいい子は嫌いじゃないよ?君来世はオニオオハシかメンフクロウの二択だったからね!」
「何故に二択な上にどっちも鳥類!?」
「そんなのじいちゃんに聞いてよね、僕この世界でしか選別出来ないんだからね」
あのジジイ神今度会ったら1発殴ってやる...
「っとそうこうしてるあいだにタイムリミットが近ずいて来たね」
「えっ...」
「即決の報酬はこの表の中から4つ選んでね!」
そう言うと神様はない胸元から1枚の紙をとりだしてこっちに投げた
「ふむふむどれに『あと120秒ね』嘘でしょ!」
グラフを一通り見回してみて気になった5つをピックアップした。
とりあえず【ギフト】の〈思念魔法〉、〈血の聖槍〉、〈ステータス偽装〉、【技量】の、〈詠唱破棄〉、〈ウエポンマスター〉
「ステータス偽装って何だよゲームかよ...」
「そうそう、向こうでは身分証の代わりにステータスが開けるからね、すごい能力だと怪しまれたりもするよ!」
「なるほど...じゃあ取り敢えずステータス偽装は確定だな」
「分かってるねー!だいぶ前に偽装も取らずに転生した奴が邪神と言われて惨殺されたこともあったから必要だと思うよ!」
こっわ偽装は常にしとこ...てことで後2つどうするかな...
「これ思念魔法ってどんなスキルなんだ?」
「それに目をつけるとは流石だね、タミルコアの魔術は主に火、水、土、風、の四つに、光と闇を合わせた六属性が魔法の基礎で、適性があるものが、その魔法が使えるんだ、使用者は塗り絵の絵の具みたいで、透明の魔素と言う水を色つきの絵の具に入れてやるような感じなんだ、で、この思念魔法の使い手は、通常の色以外にも自由自在になれる魔力のマスターキーって所かな、自分の想像どうりに魔力が使える、それこそ属性に無くてもね、新しい魔術を編み出す事が容易な【ギフト】だね。」
何このチート魔術、これも確定かな、
「血の聖槍ってのは?」
「もう面倒臭いから全部教えちゃうね、血の聖槍はその名の通り血を消費して神話級の聖槍を作り出すことが出来るってものだよ、荷物として槍を持たなくてもいいけど使う時に少しでも血を出さないと行けないデメリットがあるんだ、ウエポンマスターはまんまだね、全ての武器の最適な使い方が分かるようになって、装備する武器に+10の能力補正を掛けるって物だね」
ふむ、どれもこれもチートすぎてデメリットがある血の聖槍が残念に思えるのがなんとも言えないなぁ...しかしウエポンマスターの+10の補正がイマイチわからないけど、
「うーんどうする『あと30秒!』うわー!えーっと!じゃあ血の聖槍以外の四つで!」
「いいよ!急かしちゃって悪かったね!」
そう言うとフィアニリアスは多分僕の体があるだろうところに手をかざす
《タミルコアが主神フィアニリアスが理に命ずる、かの者に祝福を、》
そう言うとかざされた手から白い光が体であろう所に吸収されて行った、こころなしか強くなった気分だ。
「さて、もうそろそろ時間だ、君を転生させるけどここから先はどうなるかわからない、あわよくば君が歴史に名を残す英雄になる事を祈ってるよ!、英雄になればまた会えるしね!」
だからちょっと頬をそめて俯いてモジモジするなよかわいいだろ神様...
「まぁ神様に貰った2度目の人生だし、死にたくないからね、全力で生きるだけだよ。」
「うん!それでいいよ!《アース》と違って生きにくい世界だからね、君がどのような形でも幸せになってくれることを祈っているよ」
そう言うと神はおでこがあろう辺りにキスをしてきた
「餞別だよ!」
だから一々かわいいなおい!惚れちゃいそうになるわ!
「じゃあ頑張ってね!」
フィアニリアスが指を鳴らすと体が白い光に吸い込まれていく、光は収束し一つの生命体として生まれ変わる
「...彼は英雄になるね、絶対だ、僕の感が告げてるよ。」
そんな言葉が聞こえた気がした、真っ白な視界が急に真っ赤に染まった、どうすればいいんだこれ?ん?あーここが新しいお母さんのお腹の中って奴か、
揺れた気がした、これは出産の予兆かな?
「ノイエ様!頑張って!」
「ノイエ様!力んではいけません!力を抜いて、ひっひっふー、ひっひっふー、ですよ!」
そんな声が聞こえる。そっか、もうすぐ転生するんだな、自分が生まれた時どんな感じだったのか知ってる人間なんてそうそういないからね、いい体験になるなこれ
「もう少しです!頭が見えてきましたよノイエ様!」
「...がんばり、ます、」
女性は大きな声を上げないで必死に痛みと戦っている。
「やりましたよ!産まれましたノイエ様!」
「!産声を上げない、まずい」
はっ、産まれたては産声を上げるんだったな!
「オギャア!オギャア!」
「元気そうです!良かった〜」
侍女の女性がそう言うと、母親であろう女性はあどけない笑顔をしていた
「貴方の名前は、ブローディア、私と私の最愛の人の子...」
そして僕、五十嵐御影は、新しい人生を歩み出した