7話 モフモフと真犯人
「犯人はバーンズだ」
何……だと!?
俺が驚きの表情を見せるとクローズはニヤリと笑う。
「そうだ。バーンズだ。バーンズしかいない。まずバーンズはかかりつけの医者で親の代からお嬢様の家系を診察している。そしてバーンズが全ての薬を調合している。つまりバーンズが薬と言って渡しているのは毒だったのだ……というのが私の推理だ。調理人はここ数年で全員入れ替わっている。犯人はバーンズしかいないのだ」
「きゅーきゅー!!」
ならどうしてバーンズを告発しないんだ! 俺はそう言う意図をあげて鳴き声を上げた。
「お前の言いたいことは分かる。しかし証拠がなかった。だがお前が現れたことによって、事態は急変した。お前の回復の力で毒を上回りお嬢様は回復傾向にあった。何故バーンズがお嬢様を始末したいのか分からないが、焦ったバーンズは急性の毒を薬と偽って渡してしまった。今ならば簡単に奴を白状させられる。私に考えがある行くぞ」
そういうとクローズは部屋を抜け出していった。俺はその後をトテトテと付いて行く。
そして数分後、クローズとともにバーンズの部屋の前に辿り着いた。俺がカギを開けて、この部屋から出ていったために、バーンズの部屋の扉は空きっぱなしのままだった。
クローズは音を立てないように扉を開けると、新しく調合された薬の場所にまっさきに向かった。そして新しく調合された薬を手に取る。クローズはするとその中の薬を一気に飲み干した。
「げほっげほっ」
「キューキュー!(おい、何してんだ!)」
「これで私にお嬢様に同じ症状が出れば、これが毒だと証明できる。今まではじわじわと蝕むような毒ゆえにできなかったが、急性の毒となれ話は別だ。うっ」
早速効果が出てきたのか、クローズはどさっと壁にもたれかかった。
その衝動でバーンズが目を覚ます。バーンズは寝床から起き上がると、こちらの様子を見て全てを察したようだ。
邪悪な表情を浮かべ、バーンズが笑う。
「まさか、こんなことになるとは、しかし手段を誤ったなクローズ。ここで私がお前を殺せば、お前は私を訴えることは出来ない。まだリカバリーは効く。そしてクローズ、お前は毒の状態で私に勝てるかな?」
そういうとバーンズは何処からともなくナイフを取り出す。
勝ち誇った笑みを浮かべるバーンズに俺はよじ登った。
「何だ。君か、どうしたのかね?」
その瞬間、俺は体毛を白銀色に変えた。
俺の体毛が白銀色になると同時に俺の重さは急激に増加する。
「うおっ」
バーンズが重力に支えられないように肩を落とし、地面に伏せる。俺が乗っている肩の部分が床にめり込み、バーンズはあまりの重さに動けなくなった。
「うおぉおおおお、重い、痛い! そこをのけ、害獣が!!」
あまりのいいようだな。俺はゆっくりと転びながら背中の方に移動し、完全にバーンズを床に固定した。
「うぅおおおおおおおお、うぉおおおおおおお!!」
あまりの痛みに叫ぶことにしかできなかったバーンズに、俺は……。
(俺を軽々と投げるあのゴリラって相当強かったんだな)
とのんきな事を考えていた。
すぐにしてバーンズの叫び声で使用人たちが集まり、クローズの状態と言葉でバーンズは捉えられた。
こうしてお嬢様を蝕む毒は滅びた。




