59話 モフモフと戦争の終わり
俺ことジャクソンは揺れる視界でその白い物体を見ていた。天空に浮くその姿に、俺はエルフィン王子の予言を思い出していた。
聖獣フェルエーラの予言。そうか、これが予言を信じず戦いに走った俺らへの罰だというのか。そしてフェルエーラはいったい虎声何をしに来たのだ? まさか、天罰をさらに追い打ちのように仕掛けるのじゃないだろうな。
頭から流れる血を噴き、天を見上げる。
「おい、あれをみろ! 王子の予言にあったフェルエーラだ」
仲間の誰かが叫んだ。とそこで魔導ゴーレムも兵士の不可解な動きに気付き、天を見上げフェルエーラを直視した。それにつられて続々と兵士が天空を見上げる。
「きゅうーきゅー!」
可愛らしい姿できゅーきゅーなく姿は、男の俺から見ても癒される小動物だった。いや、比喩ではなく実際に癒されている。天から舞う羽の様な毛。それが体に触れるとその部分の傷がみるみるうちに治っていく。
俺の頭の怪我も舞った毛が触れると即座に治癒した。
「綺麗だ」
天から舞う羽の様な毛。それは天使の翼から零れ落ちる羽を連想させた。また、散る白い桜の花の様な幻想的な風景である。
この瞬間、戦争の動きは止まっていた。誰もが天から舞う羽の様な毛に見惚れ、立ち止まっていた。
だが、それを良しとしないものがこの中に二人いた。いや二体というべきか。それは黒い魔導ゴーレムたちだ。
両者は天空に浮くフェルエーラを潰さんとばかりに腕を伸ばす。だがフェルエーラはその腕をいとも容易くするりと掻い潜った。
『降りてこい! 珍獣! 戦争の邪魔をしおって、成敗してくれる!』
それは魔導ゴーレムから響いた隊長の声だ。
怒りかそれとも別の何かに囚われているのか、いつもとは様子が違う隊長の様子に俺ら兵士たちは困惑する。
ここは仲間が助かったのを喜ぶべき場面だろう何故そう躍起になるんだ、隊長。
やはりその魔導ゴーレムに何か仕掛けがあるのか?
次の瞬間、隊長の乗っている魔導ゴーレムが天へと手を伸ばすそしてその指先から黒い雷が発生し、フェルエーラを襲った。
それに対しフェルエーラは体毛が翡翠色に変わったかと思うと、目にもとまらぬ速さで動き雷をすべて躱す。その素早い動きで、暴風が発生するほどだった。
「きゅーきゅー!」
次はフェルエーラの番だった。
翡翠色の体毛のまま、魔導ゴーレムの真上に飛び立つ。
そして直後、フェルエーラの尻尾が巨大化した。それは魔導ゴーレムに並ぶかというほどの直径五メートルはありそうな巨大な柱のように見えた。
さらに巨大な尻尾は白銀色に変わったかと思うと、自由落下で落ちてきた。
その攻撃を魔導ゴーレムが頭上から受け切る。天空からの巨大な尻尾を受け止めるが、次の瞬間さらに尻尾は膨張し、巨大化した。ビキビキと金属が壊れる音が響く。魔導ゴーレムを構成していた魔導金属が壊れる音だ。余りの重さに魔導ゴーレムの方が耐え切れなくなったらしい。
凄まじい破壊音を伴い、魔導ゴーレムは重さの余りクラッシュした。辺りに破片が飛び散り、原型がなくなるほどの衝撃だった。
『なっ、魔導ゴーレムが一撃で粉砕されただとそんな馬鹿な!?』
敵側の魔導ゴーレムから驚きの声が漏れる。
しかしそれもつかの間、同じ手法でフェルエーラがもう一体の魔導ゴーレムに襲い掛かった。受け切れるのも少しの間だけで、すぐに隊長の機体と同じように大破した。
「終わったのか? あのS級二体分の魔導ゴーレムがこうもあっさりと……」
「きゅーー(あー疲れた)」
こうして戦争は一匹のフェルエーラにより幕を閉じた。
そして……。




