57話 モフモフと戦争の始まり
俺はザッハオルテ軍の一般兵のジャクソン。俺はこの名もない野原でモルグラン軍と国境を巡り、昼夜問わず戦っている。
まず俺がいる場所を説明しよう。俺達ザッハオルテ軍の中で国境を巡る争いに参加しているものは、野原の端にある砦に在中している。
見張りが敵軍が迫っているのを見つけたり、こちらから仕掛けたりするときに、俺らは砦から飛び出し戦うってわけだ。
作戦を練りながら、砦で武器を磨く日々。俺は飽き飽きしていた。皆に聞くと皆もその様子だった。
一体なぜ俺たちは名もない野原のために戦わなきゃならねぇ。死人だって出ている。それぐらいならいっそ、相手に渡してしまってこの無意味な戦争を終わらせるべきだ。
そう思い部隊の皆で直談判を隊長にしたところ、後一か月待てと言われた。それで戦争が終わると。
隊長は白の上層部の人間とかかわりがある人だ。きっと何かを知っているのだろう。
そして今日がその一か月目だ。
一体どう戦争が終わるというのか。
「おい、あれを見ろ。ジャクソン! きっとあれが戦争を終わらせるものに違いねぇ」
友人であり俺と同じ一般兵のベータに言われてその方向を見ると、五体のユニコーンが巨大な馬車を引き連れてやって来ていた。
ユニコーンはただの馬と違い相当馬力がある。ただの馬三頭分に換算する馬力だ。そのユニコーンを五体使って運んできただと?
あれには一体何が乗っているんだ?
「ようやくきたか、充電期間は終わったらしいな。あとは乗り込むだけだ」
乗り込む? 何にだ?
戦争を終わらせるものにか?
「隊長この中にあるのはいったい何なんです?」
俺は興味本位で質問してみた。
「まぁ、ここまで来たんだから隠す必要もあるまい。この馬車の中に積んであるのは、魔導ゴーレムだ」
「魔導ゴーレム?」
「そうだ、それもとんでもなく強い奴だ。一撃で砦を半壊させれるぐらいにはな。危険度で表せばSランクの魔物三体分といったところか」
「そ、そんなものが用意されていたのですか!?」
「そういう事だ。さっそくこの魔導ゴーレムを使う作戦の会議を始める。ジャクソン、お前は砦中の参謀を作戦会議室に集めろ」
「はっ、了解しました」
魔導ゴーレム……これが戦争を終わらせる切り札か。
俺が砦中の参謀を集めるために砦に戻ろうとした時、巨大馬車の布が外されゴーレムの姿が見えた。
黒いどこまでも黒い煉瓦の様なもので作られており、大きさは五メートルはするかもしれない巨体だった。ただ俺にはそれがとても不気味なものに見えた。
「おっといけない。見とれてる場合じゃねぇ」
俺は隊長の指示を思い出し、砦中の参謀を作戦会議室に集めた。
参謀たちは魔導ゴーレムのスペックを聞いた時、にわかには信じがたいがこれがあれば戦争に勝てるかもしれないと言った。
勝てるのか、この争いに終止符が打たれるのか。
俺達一般兵は緊張しながらも、その魔導ゴーレムを使った作戦が出来上がるのを待った。
「おいジャクソン、あの魔導ゴーレムをどう思う。俺は真っ黒で気味が悪いんだが」
「そうだなベータ、俺もそれを思っていた所だ。いったい王様は何処からあんなものを持って来たんだか」
そう言い合いながら待つことしばし、隊長が作戦会議室から出て来て言った。
「作戦が決まった。みんなよーく聞いてくれ」
作戦によるとまず、魔導ゴーレムは操作する人間が乗り込まないといけないため、隊長が魔導ゴーレムに乗り込む。そして魔導ゴーレムの後ろを全員で進軍する。
おそらく野原の中心辺りで合戦が始まるだろう。
そこで魔導ゴーレムが先頭に立ち攻撃を受け切り、またやり返す。俺たちは後ろに下がり援護射撃で相手兵を追い払う。そして相手の兵を降伏、逃亡、死亡、のどれかにさせた後は砦まで進軍、砦を破壊しモルグラン王国に敗北を認めさせ、そのまま野原の権利をもぎ取ろうというものだ。
果たしてうまくいくのだろうか。
そう思わないでいられないながらも、進軍は始まった。
戦争の始まりだ。




