51話 モフモフと延長戦
「きゅー……きゅっ!(お前まさか……魔人か!)」
黒いローブに向かって俺は声を上げた。
それに対し黒いローブは、バサッとローブを脱ぎその姿を現した。上半身にも服を着ており蝙蝠の様な羽は見えないが、間違いなく魔人の姿だった。それも初めて見る魔人だ。
「俺は狂暴凶悪の悪を司るウルルガバシェード、通称悪魔のウルルガだ」
そこでウルルガは俺に対して中指を立てると
「死ね! 珍獣。俺は他の二人とは違い直接手は出さねぇ。魔物たちに殺されろ。やれ、魔物どもよ。この魔王のペンダントに操られるままにな」
そういってウルルガはペンダントを掲げる。そこから血のような赤い光が瞬くと、さらに魔物たちが狂暴化した。その全匹が俺の方を向き、歯茎を見せよだれを垂らす。
どうすっかなこれ、俺はフランの方を向く。
フランは「ひぃいいいっ」と悲鳴を上げてその場にへたり込んでいる。
「いいか魔物ども、狙うは勿論珍獣だが、そこの小娘も利用しろ。人質の様に珍獣にも小娘にも攻撃が当たるように仕掛けるのだ」
くそっ、面倒くさい指示を……。
ただ俺はサタンコングに出会ったころの俺とは違うぜ。
俺は遠くから指示するだけの魔人を睨み付ける。
そして俺は尻尾の毛を伸ばしながらフランを守るようにドームを作る。
俺の毛で出来たカマクラ状の物にフランは囲まれ、俺は毛を切り離した。その際にドームの毛を白銀色に変える。
これでフランを前方から守る建物が完成した。フランの事を気にせず戦えるわけだ。
とりあえず、周りの魔物を戦闘不能にするか。
俺は体から大量の細かい毛を舞い上げた。それはもはや鱗粉と呼ぶのには多すぎる毛の数だ。まさに小麦粉を地面に叩き付けたような、粉塵が辺りに舞った。
げほげほっとせき込む魔物の声が聞こえる。視界も霞む白い景色。
そこに一本の紅蓮の毛を放り込んだ。
そこで起きるのはただの火災ではない。粉塵を利用した粉塵爆発だ。
巨大な爆音とともに爆炎が辺りを包み、リングを薙ぎ払った。
もろに喰らった魔物たちがリングから放り出され、地面に叩き付けられる。
リングの上でまともだったのは、俺と、俺の作ったドームと、サタンコング、ウルルガのみだ。他は地面に倒れ伏し立つことも出来ない。無事な魔物のサタンコングも毛が焦げ、膝をついている。
「な、何だ。これは聞いてないぞ! 魔人以外には無力ではなかったのか!」
「きゅーきゅー(そうだな、成長する前の俺ならな)」
「くそ、サタンコングやれ!」
ウルルガがやけくそに指示を出す。
それを聞いてサタンコングが俺に殴り掛かった。
そこで俺は毛を逆立てて白銀色に硬質化する。
ハリネズミの様になった俺の体にサタンコングの拳が直撃する。
「グォオオオアアアアア」
サタンコングが悲鳴を上げて怯む。そこで俺は空中で一回転し、膨大に増やした白銀のしっぽを魔人もろともサタンコングに叩き付けた。
十メートルを超える巨大な尻尾はサタンコングを叩き潰し、リングに亀裂を入れた。
サタンコングが口から血を吐き、倒れる。
魔人はギリギリで避けきれなかったみたいで右半身が砂に変わっていた。
「くそぉおおおお、ここまでの実力があったとは検討違いだったか! だが、忘れるなよ。最後に勝つのは我らが魔人側だという事を!!」
そこまでいうとウルルガの全身は砂に消えて風に消えた。
「きゅー!(勝ったぜ!)」
フランを囲っていた体毛を遠隔操作で白いモフモフに戻し、俺は雄たけびを上げる。
こうして大会の延長戦は終わった。




