41話 モフモフとイーグラの戦い
突然の爆発によって俺は瓦礫から脱出することができた。辺りを見渡すと、瓦礫はなくなり大きなクレーターになっており、その中心には悠然と立つ巨大な男、恐らく魔人だろう、が立っていた。そしてクレーターの外にはロルルと見慣れぬ箒に乗ったおばあさんがいるのが見えた。
「きゅーちゃん。よかった! 無事だったのね!」
「あれがきゅーちゃん。なるほど確かにフェルエーラのようじゃ。もし本当にフェルエーラならばこの状況も」
ロルルとおばあさんが喜びの声を上げる。
そしてその声に魔人と思わしき巨人も声を上げた。
「はっ、お前がアレクが言っていた、珍獣か。自己紹介しておこうか、俺は狂暴凶悪の暴を司どる、イーグラムパレード。通称暴力のイーグラだ! てめぇを殺す奴の名前だぜ、憶えておきな!」
そういうとイーグラは足に黒魔法を纏わせた後、蹴りに乗せて衝撃波を撃って来た。ものすごい速さだ。避ける事ままならない。
俺は白銀色に体毛を変え、ガードする。ジンジンとする痛みが来るが魔王の籠手で殴られた時よりも随分と楽だ。これなら白銀色になるまでもないかも知れない。
「きゅーきゅー(魔人か、良く知らないがロルルに手を出すなら倒させてもらうぜ)」
「ちっ、ほぼ無傷か、こりゃ百発撃っても無駄そうだな」
おっ、形勢不利とみて撤退するのか?
「だが、百発以上撃てば多少は効きそうだな、おい! この暴力のイーグラが撤退するとでも思ったか」
そういうとイーグラは黒く巨大な蝙蝠の様な羽を使い空高くに舞う。
そしてあろうことかロルルとおばあさんに向かって蹴りの衝撃波を放った。
当然ガードしに行く。
だがこうしていると空中に居なければならないために真っ白い状態でなければならない。俺はジンジンとさらに痛くなった痛みに耐える。
「おらおらおら! 壊れろ壊れろ壊れろ!」
「きゅー! きゅー(卑怯だぞ! ちくしょう)」
「戦いに卑怯もくそもあるかよあるのは、ぶっ壊れるか生き残るかだけだ!」
そうか、お前がそういう考えならばこちらとて容赦はしない。
「きゅー(後悔するなよ)」
俺は次の瞬間、大量の抜き毛を辺りにばらまいた。通称スケールス。鱗粉の様に小さい抜き毛が辺りを舞う。そしてその破片に触れたイーグラの指先が、砂の様に分解されていく。
「くそっ、話が違うじゃねぇかアレク! スケールスを使ってきやがったぞ」
これで勝負は決まったはずだ。あとは徐々に砂の様に分解されていき、アレクと同じ目に合うはずだ。ん? おかしくないか、アレクは砂の様に分解されたんだから、話が効けるはずもないのに、何でイーグラはアレクからさも俺の話を聞いていたように言っているんだ。
俺の疑問が解ける前にイーグラが動いた。
「くそがぁあ! 舐めるなよ、珍獣!」
そういうと砂が逆流し指先が元に戻る。
「奴は四天王の中でも最弱! 四天王の面汚しだが、俺は違うぞ! そう簡単にやられはしねえ!」
イーグラが叫ぶと、何故かスケールスの中に向かって突っ込んでいく。そして地面に到達すると一つの宝石を取り上げた。
「魔王の邪眼は頂いていく。覚えてろよ、珍獣! 次は許さねぇからな!」
黒い翼を広げ、所々を砂にしながらも逃げようとイーグラが天に舞う。
「きゅきゅー?(撤退はしないんじゃなかったのか?)」
だが逃がさない。ロルルに手を出そうとしたからには倒させてもらう。
俺は辺り一帯の空気を掃除機の様に吸い込んだ。そしてパンパンになった風船の様に膨らむ。そして一気に吐き出した。
「きゅーーーー!!(くらえーーーーー!!)」
スケールスを含んだ大量の空気の圧力がイーグラを襲う。これが聖なるブレスだ。
喰らったイーグラは炎天下に放置されたアイスクリームの様に、みるみると体が砂になっていく。
「くそがぁああああ!! 覚えてろよ! いつか必ずぶっ壊し……」
そこまで言うと、イーグラは全て砂になってどこかに流されて行ってしまった。
魔王の邪眼と言われた宝石は地に落ち、衝撃で粉々に砕け散った。




