40話 モフモフと破壊の魔人
俺はがれきに埋まり動けなくなっていた。
白銀色の体毛を白に戻せば多少動けるだろうが、そうすると瓦礫に押しつぶされてしまう。
(くそっ、だれか瓦礫をどうにかしてくれ、頼む)
青ざめた肌に、体中の入れ墨、黒い蝙蝠の様な羽、三メートルを超える巨体。アレクとは違う魔人の巨人。
そいつが盗賊団のアジトを破壊しつくして、瓦礫の中から現れる。
ロルルはその姿に恐怖を覚えた。一瞬で崖一つを崩したのもそうだが三メートルを超える人型の生物を見るのは初めてだったからだ。
「間違いない。あいつは魔人!」
「魔人? あれが……」
ハルルが冷汗をかきながら答えた。ロルルはお伽話でしか聞いたことない魔人の姿に、恐怖していた。
「あ、あれは!」
そこでロルルは魔人の手に角ウサギの煮込みが握られていることに気が付いた。まさかお届け物を魔人が狙っていたのか。事の重大さにロルルが気づき始めたとき、魔人も又ロルルたちの姿に気が付いた。
「……人間か。そんなに俺をじっと見てどうした?」
ぎろりと魔人がロルルとハルルを見つめる。
「うひっ!」
それだけでロルルは蛇に睨まれた蛙状態だった。
ハルルも腰を抜かし箒から落ちそうになっている。
「なんだ、びびっちまって話もできないか。まぁ、任務は達成したし帰るか」
そう言って魔人は手の角ウサギを見る。任務とはお届け物を持って帰ることなのだろう。
「……何てな。このまま帰る訳ねぇだろ。お前らこれが目当てなんだろ。俺から奪ってみろよ」
そうして挑発するように手を動かす魔人。
「な、なんでそんなこと言うのよ」
ロルルがビビりながら答えた。
「あ? それは俺が狂暴凶悪の魔人の一人、暴のイーグラムパレード、通称暴力のイーグラだからだ。形あるものは壊さないと気が済まない。そしてそれは人間も例外じゃねぇ! 形あるものを壊すのが俺の生きがいだからだ!」
そういうと任務であるはずの角ウサギをほっぽりだして、イーグラが雄たけびを上げる。その声に森の鳥や魔物たちが一斉にその場から離れ出す音がロルルには聞こえた。
と同時に瓦礫のしたから一人の男が這い出てきた。それは二メールを超す巨体を持ち、本来なら目立つはずのバロバロスだった。だが今はイーグラの陰に隠れて目立たなくなっている。
「おいおい、なんだこりゃ。そしてお前は誰だ? あ?」
「聞こえてなかったか。魔人の一人暴力のイーグラだ。お前が死ぬまでよろしく頼むよ」
「そりゃお前が死ぬまでか?」
バロバロスが瓦礫から斧を取り出し、イーグラに切りかかった。イーグラはそれを避けようともしない。そしてぶつかった瞬間。斧がイーグラの肌に弾かれひびが入った。
「くそっ、固ぇ! 何だ、この硬さは」
「次はこっちの番だぜ」
イーグラの声と共にバロバロスにイーグラの蹴りが炸裂する。
「ぐおっふぁっ」
その蹴りだけでバロバロスは何メートルも蹴り飛ばされ、大木を突き抜けて最後は地に伏せた。たった一撃でバロバロスは戦闘不能となり、動かなくなってしまった。
「さて一人目は終わりだな。だが暴れ足りないな! 次は小娘と老いぼれどっちが来るんだ」
ごきごきと首を鳴らしながらバロバロスが告げる。
「ロルル、あんたはお逃げ、ここは私が時間を稼ぐ」
「お? 老いぼれからか、俺は一向にかまわねぇぞ」
「でも師匠!」
「いいからお行き! あいつは待ってくれないよ」
「その通りだ! 分かってるじゃねぇか」
その瞬間、イーグラの蹴りがハルルを襲う。それをハルルは水のベールを作り受け流した。
「へぇ、少しはやるようだな。ただ年を食ったババアではないらしい」
高威力の蹴りを受け流したことをイーグラが称賛する。
「だが次はどうかな?」
その瞬間、黒い霧がイーグラの足にまとわりついた。
闇魔法を使い、脚力を底上げしたのだろう。これではいくら四属性に長けているハルルとて持たないという事を、ロルルはすぐに直感した。
このままでは師匠は確実に死ぬと。
「師匠! 逃げましょう! 次は防げません!」
「分かってるよ! でもそれではあんたも死ぬ。私はせいぜいあがいてから死なせてもらうさね」
そういったと同時、ハルルは目の前に爆炎を起こした瓦礫が吹き飛び、辺り一面が業火に包まれる。
「中々熱いぜ、老いぼれ。風呂で例えるならぬるま湯だがな」
「ちっ、ちっともきいとりゃせんか。こんちくしょう」
ハルルが悠然と立つイーグラに絶望しかけたときに、それは地面から出てきた。
「きゅーーーー!!(やっとぬけだせたーーーー!!)」
白いカワウソのようなモフモフとした生物。そう、きゅーちゃんである。




