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シロモフ転生  作者: あめふらし
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4話 屋敷の中のモフモフ

 その人物はここの使用人らしかった。何せメイド服だったからだ。だが、残念なことに美少女メイドではなく中年のザ・おばちゃんであったが。

「お嬢様! また部屋を抜け出して、私は多少なら構いませんがクローズに見つかるとまた長い間説教を受けますよ。あら、その魔物は?」

「きゅーちゃんよ。庭園にいたの。お腹が空いていたようだったから連れてきたの」

「庭園って、もしかしたら雑菌が付いているかもしれませんわ、ちゃんと洗いましたか、お嬢様」

おい、俺を雑菌扱いするな。まぁ、かわいいキツネやアライグマなんかも地球じゃ素手であ触ったら必ず手を洗えみたいな扱いだったからな。仕方ないと言えば仕方ないが。

そこからは井戸で俺は洗われ、タオルで拭かれた後、屋敷の客室らしい一つに連れてこられた。ほどなくして屋敷から使用人や執事らしき人物が集められ、俺の今後についての会議が開かれた。

ずっとお嬢様の上で会議を聞いていたが、色々なことが分かった。まずお嬢様は病を患っていて、あまり部屋から出てはいけないのだが、お嬢様は良く部屋を抜け出しているということ。

それに対してクローズという教育係が厳しいということ。そして今後の俺の処遇だが、俺が病気持ちかどうかを調べ、もしそうでなければこの屋敷でぜひ飼いたいというのがお嬢様の意思だという事。

「とにかく、かかりつけの医者であるバーンズに検査してもらいましょう。話はそれからですわ」

 そういったのはお嬢様だ。

 その後、いつもお嬢様の容体を見ているという医者である、バーンズに俺は検査された。体毛を一本抜き取り、それを何やら眺めたり顕微鏡で調べたりした後、俺は病気もちっではないことが証明された。

 むしろ全く病気がないどころか、回復の力が俺にあるかもということだ。

「伝説の聖獣、フェルエーラはあらゆる病や封印を解くことが出来ると言いますが、まさか本当にきゅーちゃんは聖獣なのでは?」

 こういったのは医者のバーンズである。

「いや、ありえませんな。どこぞの得体のしれない珍獣でしょう」

 それに反対するのはクローズである。彼は中年の銀髪の執事の様な格好をしたお嬢様の教育係で、最初から最後まで俺をお嬢様が飼う事に反対だった。

 極度の心配症らしい。

「クローズ、これでもうきゅーちゃんを飼ってもいいわよね。病気持ちじゃないって分かったんだし」

 それからは俺の屋敷生活が始まった。

 俺はお嬢様に大層気に入られたらしく、勉強中以外ほとんど一緒だった。

 お嬢様は夜になると俺にナターリエの冒険日記という本を読み聞かせてくれた。

 ナターリエの冒険日記は伝説の女冒険者、ナターリエ・ツヴァンディッヒの冒険譚である。

「私ね、この本が大好きなの。今は亡きお母様が毎晩読み聞かせてくれたのよ」

 お嬢様の両親は、お嬢様と同じ病気で亡くなったらしい。ナターリエの冒険日記は言わば、亡き両親との大事な思い出という事だ。

「今は病気で元気に動けないけど、いつか病気が治ったら私もナターリエみたいな冒険者になりたいの!」

 お嬢様はおてんばな性格らしい。夜になるといつもこんな感じだ。

 だが、一つ。冒険で思い出したが、俺もいつかはこの屋敷を離れ旅に出なくてはいけないかもしれない。天空の島に住んでいるであろう俺の両親が、俺の事を心配がって今も探しているかもしれないからだ。

ここの生活は楽しい。それに俺はたぶん聖獣フェルエーラだ。天空の島から落ちてきたから間違いない。

この屋敷にあった書物によるとフェルエーラは空を自由に舞う伝説の聖獣である。天空の島に住み、よほどのことがないと地上には現れない。病を治したり封印を解いたりする力が有る。

重要なのは個々の病を治せるという部分だ。

俺に本当にそんな力が有るのならお嬢様の病気を治してやりたい。もし治すことができたらその時に、俺は天空の島に帰るために旅をしよう。

俺はそんなことを思いながら眠りについた。


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